『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(25)
岡山シーガルズ 中本柚朱
(連載24:岡山シーガルズ城戸うらんのバレー人生は紆余曲折 日向翔陽のひたむきさを見て「自分も諦めんとこう」>>)
岡山シーガルズの中本柚朱(22歳)は、2024年の黒鷲旗大会でベスト6に輝くなど、現在、売り出し中の若手アウトサイドヒッターだ。SVリーグでさらなる活躍が見込まれる。
「バレーを始めたのは6歳です。楽しそう、と思った記憶はなく、"やるもの"だと思っていました」
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中本はそう原点を振り返る。バレーボールはほぼ生来的に人生のなかに溶け込んでいた。
「2歳上のお姉ちゃんの後をついていく性格だったので、クラブでバレーをやっていたお姉ちゃんについていき、『いつか一緒にやるものだ』と思っていました。ほかの選択肢はなくて、小学校の入学式の日に入部届を出しました。いろんなお姉ちゃんが優しくしてくれるし、当時から身長は高かったですね」
しかし年数を重ねると、姉とは「バチバチしていた」という。
「私は小学4年生までずっとレシーバーで、当時6年の姉はライトでエース。姉とは、『ボールを上げろよ』『決めんさいや』と言い合うような感じでした(笑)。5年生になってからは私も打つようになって、自分でサーブをカットし、アンダーで上げてくれたトスを打って、ブロックもしていました」
図らずも、現在の"オールラウンドなアウトサイドヒッター"の原型ができた。
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中学2年時には、大阪国際大和田中学校(現・大阪国際中学校)に転校。姉が通っていた学校に越境留学する形で、高校も大阪国際滝井高校(現・大阪国際高校)で姉の後を追っている。
「姉がいなかったら、ここにいないです。ずっと背中を追ってきた存在だったので。それで、春高バレーは3年で準優勝できました」
姉妹のせめぎ合いが成長を促した。姉は現在、9人制のチームでプレーしているという。
「でも春高の決勝は、就実に勝ちきれなかった悔しさも残っています。就実戦、最後にトスを上げてもらって、みんなに託されていたのに、それを決めきれなかった。自分が止められて、みんなどう思っているのか......レフトの選手なら、みんなその怖さを感じたことがあると思いますが」
中本はそう言うが、それだけ重い責任を背負うことが、彼女を鍛え上げたのだろう。今はトップリーグでトスを託される立場だ。
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「私は代表に入りたいというよりも、シーガルズのバレーが好きでプレーを続けているので、『シーガルズで勝っていきたい』という思いが強いですね。河本(昭義)監督に教えてもらったバレーが世界に通用するのを証明したい。結束力やつなぎ、粘りが一番大事。それがあるからこそ、海外の選手もミスをするはずですから、どこのチームにもない粘りで勝てるようになりたいです」
中本には、勝つイメージがある。
【中本が語る『ハイキュー‼︎』の魅力】
――『ハイキュー‼︎』、作品の魅力とは?
「漫画は全巻、読んでいます! アニメは小学校までは見ていたんですが、その後は寮に入って、テレビの時間が決まっていたので......でも、映画は観ました!バレーを面白く描いてくださっていると思います。現実にはなかなかできないけど、できそうなプレーが多く、面白くて参考になります」
――共感、学んだことは?
「高校の時点で私は身長が177cmあって、小さいほうではなかったんです。だから鴎台の星海(光来)くんが『小さい事はバレーボールに不利な要因であっても、不能の要因では無い』という有名なセリフも、『ふーん』という感じで。でも、SVリーグでは外国人選手も、日本人選手も私より大きい人が多く、小さい側に回りました。だからこの星海くんの言葉は、あらためて読み直した時に胸に刺さるものがあったんですよ」
――印象に残る名言は?
「その星海くんのセリフですが、もうひとつ挙げるなら、烏野の山口(忠)くんがツッキー(月島蛍)に『プライド以外に何が要るんだ!!!』というセリフが、最初に読んだ時に一番印象に残りました。私はバレーしかやってきませんでしたが、もっとバレーに情熱を傾けている人はいて、『自分も足りていないな』って」
――好きなキャラクター、ベスト3は?
「1位は星海くんで、2位は烏野の(東峰)旭さん。レフトの選手として気持ちがすごくわかります。常に止められるのは怖いですし、逃げたくもなりますからね。
3位はいろいろ考えましたけど、やっぱり日向かな。自分の武器を大事にしていて、それを最大限に引き出してくれるセッターがいる。私も中高から今も濱田(真友)のトスを打っているんですが、セッターがいないとスパイカーは生きないんです。日向と影山ほどではないですが、私たちも要求し合ってますね(笑)。『ハイキュー!!』で理想のセッターは......稲荷崎の宮侑は合わせてくれそうですね。影山は"俺に任せろ"って感じだけど、能力を引き出してくれるかもしれませんね(笑)」
――ベストゲームは?
「音駒vs早流川工業です。早流川の監督が音駒の監督の教え子で、自分がやっていたバレーを大事にしている。それに勝る本家の強さもあって......拾う、つなぐという部分はシーガルズにもつながるし、すべてひっくるめて音駒のバレーが好きです!」
【プロフィール】
中本柚朱(なかもと・ゆず)
所属:岡山シーガルズ
2002年11月13日生まれ、広島県出身。178cm・アウトサイドヒッター。6歳でバレーを始め、中学2年には大阪府の大阪国際大和田中学校(現・大阪国際中学校)に転校。大阪北選抜代表として全国都道府県対抗中学バレーボール大会を優勝した。大阪国際滝井高校(現・大阪国際高校)では春高バレーで準優勝を経験した。2021年に岡山シーガルズに入団した。