年収600万円で「静かな退職」実践中の30代男性「いまは、なんで組織のために頑張る必要があるんだと思いますね」と語るワケ

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2025年01月14日 06:20  キャリコネニュース

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管理職としてまったく頼りにならない上司のもとでは、部下はやる気を失い最低限しか仕事をしない“静かな退職”状態になりかねない。いわゆる専門的な知識を要する仕事をする30代の男性もその一人だ。2023年頃に「やりたい業務ができる職場に熱意を持って転職」したという。

「当初は、いわゆるがむしゃらな社員でしたね。仕事は頑張ってなんぼとばかり思っていました」

入社後は部署の中で新しい業務を行うチームを立ち上げ、メンバーのマネジメントも担うようになった。そんな熱意の塊のような男性が、なぜ「静かな退職」に至ってしまったのか。編集部では男性に取材し、事情を聞いた。(文:篠原みつき)

上司が「何を言っているのか分からない」

男性が入った部署には、周囲とのコミュニケーションに難があり、マネジメントができない困った上司がいた。配属された社員が2年以内に次々と辞めてしまうのだという。

「上司は声が小さくて何を言っているか、こちらが聞き取れないレベルでした。部下とは筆談でコミュニケーションを取っている、と社内で噂されることも。職場で勤務年数が一番長く、キーボードに手を置いたまま居眠りする風景はよく見ます」

この上司は新しい業務について無知で、「お任せします」と男性に仕事を丸投げしてきた。しかし本心は拗ねていたようで、たびたび「僕は今回の立ち上げには入れてもらえてないからわからないです」と言っていたそう。男性は、こうした上司を最初はフォローしていた。

「こちらとしても立てる意味も込めて逐一報告をしていました。調整を重ねてゴール直前の状況に持っていき、そこで上司が最終決定を下すという形にして、いつもリリースしていました。けど、それをしてもらっていることに上司本人は気づいていなかったようです」

今思えば、わざわざ上司のスペースを作ってあげたことが「崩壊の始まりでした」と振り返る。

退職者が相次ぎ…何も説明のないまま業務を奪われた

男性がリーダーとなって進めた新しい業務が回るようになって新規の人材採用が可能となり、数人だった部署は二桁に増えた。ところが、数か月で半数以上が退職してしまう。

「退職者が相次ぎ、社内で噂になるレベルでした。みんな、『上司が何を言っているのかわからない』などと上司に対する不満をもらし退職していきました」

さらに男性も上司から業務を奪われてしまう。

「上司は『業務調整を君がするから退職者が出るんだよ。明日から全部調整ごとは僕がするから』と言い出し、調整業務を行うようになりました」

「この上司のマネジメントが酷すぎました。何もできない。何も言えない。何を言ってるのかわからない。進捗管理はできない。これによりまた大量に退職者が出ました」

業を煮やした男性は、たびたび上司に意見、提案をするものの、相手にはまったく響かなかった。

上司に意見したらパワハラの被告人状態に

自分が温めてきた仕事を奪われた苛立ちもあり、男性はやや強い口調でこう意見してしまう。

「もう少しちゃんと指示を出して、どうしたいかを言わないと業務になりません」
「退職が続いているが、人がやめることを平気に思っていませんか? 採ればいいと思っていませんか?」

自分の努力が上司の不手際で水の泡になった落胆が大きかったのだ。しかし、これは完全に裏目にでてしまう。

「まさかの社内のコンプライアンス委員会からの呼び出しがありました。上司がパワハラの被害者として、社内制度に通報をしたためです。私はパワハラの被告人状態になりました」

しかも上司は、「アホだからこうなったと言われた」「人が辞めたのは僕のせいだと言われた」「恫喝された」などと言い出し、「いろんなところで僕の悪口を言っている」と裏で言い始めたという。

「コンプラ委員会に現状を全て弁明することで誤解は解けましたが、このタイミングで全てのやる気が喪失しました。実は退職者全員が上司のことを通報しようとしていましたが、私が説得して止め続けていました。まさかの先にやられた……という感じです」

社内に噂が広まったものの、上司がおかしいことも有名だったため自身へのマイナスな影響はなかったのが不幸中の幸いだろう。しかし男性はこれ以降、働き方を「静かな退職」に変えた。

「基本給のみいただく働き方に切り替え、教員資格を活かして副業しています。副業だけで月15万円ほどの収入で、高校で非常勤講師をしたり、夜間の専門学校で教えたりしています。家庭教師もしていますね。もともとやってみたかった仕事で、外でやりがいを見つけている状態です。残業しないので早朝ジムに通い、98キロから66キロへのダイエットにも成功しました」

会社では申請すれば副業が認められるそうで、月曜から金曜の週に5回、主に夜間の3時間ほど社外で働いている。驚くべき体力だ。現在「本業は、可もなく不可もなくの働きかたです」と語る。

「業務が終われば会議室などで仕事のふりをして読書や副業の資料作りをしています。出世なんかどうでもよくなり、無駄なストレスもなくなりました。いわゆるがむしゃら社員でしたが、今は、なんで組織のために頑張る必要があるんだ、と思いますね。やる気は普通。それ以上もそれ以下もない働き方が一番かと思います」

静かな退職に移行したといっても、基本的には働くことが好きなのだろう。副業にやりがいを見出している男性は、現在の働き方に満足しているようだ。

「副業解禁。これは本当に私にとっての救世主でした」

※キャリコネニュースでは「必要最低限しか仕事しない『静かな退職』実践中の人」をテーマに投稿を募集中です。回答はこちらから https://questant.jp/q/UWFMPSAI

このニュースに関するつぶやき

  • でも、その副業が上手くイカなくなったらどうする?。再就職のアテは有るのかな?
    • イイネ!10
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