『Triple Tree Racing』の2025年スーパーフォーミュラ参戦カラーリング。多くのスポンサーが支える。カーナンバーはJujuにちなんだ『10』。 2025年の全日本スーパーフォーミュラ選手権に新規参戦することを発表したTriple Tree Racing。2024年にスーパーフォーミュラ史上最年少&日本人女性ドライバーとして初めてシリーズ参戦を果たしたJuju(野田樹潤)が父、野田英樹監督のもと、同カテゴリーで2シーズン目を迎えることとなる。気になる新規チーム、Triple Tree Racingの中身について野田監督に聞いた。
2024年のJujuはTGM Grand Prixから参戦し、当初は3年計画を予定していたが、TGMが2025年は参戦体制を大幅に変更して、従来のかたちで参戦しないこととなり、Jujuの今後の動向に注目が集まっていた。
そんな中、新しく立ち上がるTriple Tree Racingのドライバーとして、父の野田英樹氏が監督に就任し、昨年は彼女のマネジメント面を務めていた村司宏樹氏がチーム代表に就任した。ちょうど3人とも『樹』が名前に入っていることからチーム名がTriple Tree Racingになったという。
自身のシートが確定しないまま年末年始を過ごしていたJujuにとっては、参戦チャンスを掴むことができたが、気になるのは新規チームの中身だ。
エンジニアやメカニックなどの人材面はもちろん、マシンや機材の確保など、開幕戦のグリッドに並ぶために越えなければいけないハードルはたくさんある。その現状について、記者会見で野田監督が説明した。
現在のスーパーフォーミュラは1台につき複数のエンジニアが担当し、メカニックは多いチームでは10人近くが1台のマシンに携わる。さらにチームの広報担当やドライバーサポートスタッフ。スポンサー対応のホスピタリティスタッフを含めると1台参戦するだけでもかなりの人数が関わることになる。
スタッフ/人材面に関して野田監督は「おそらく今年も、Jujuはスーパーフォーミュラのドライバーのなかで最年少だと思いますが、もしかするとチームスタッフは全体の平均年齢で最年長かもしれません」と苦笑い。
新規チーム立ち上げが本格的に動き出したのは2024年の最終戦が終わった直後で、自身が現役時代にお世話になった人などに声をかけていったという。
「自分がレースをやってきた時の仲間に話をして『俺も、もう1回頑張ってみようかな』という方もいますし、他のチームから移籍してくる方もいます。加えて、別のカテゴリーをやっていたメカニックも集まってくれています」
人材確保はまさに“現在進行中”で具体的な名前は出せないというが「スーパーフォーミュラで経験のあるエンジニアが3人揃っている状況。メカニックに関しても数名はスーパーフォーミュラから、数名はスーパーGTやスーパー耐久で経験のある人が来てくれます。今のところ10名くらいは目処がついていて、数名がまだ決まっていないですけど候補に入っているという状況です」と語った。
昨今の各カテゴリーでの状況を見ると、経験豊富なレーシングガレージにメンテナンスや現場での作業を委託するというケースも増えているが、「メンテナンスを全て任せて、どこかにお願いするということは考えていません。私の感覚では、それは実質的にメンテナンス会社がやっているチーム力となってしまいますからね」と野田監督。
「チームをやるからには全てを自社でやりたいというのは理想ですけど……(新チーム結成から)この90日でそこまでやるのは現実的ではありませんでした」と、完全な体制が整うまでは、チームの拠点となるファクトリーも当面“間借り”するようだ。
「我々の工場がまだ見つかっていないですし、機材も揃えている最中です。そういったことがしっかりするまでは、4MINUTESさんのスペースを間借りします。そこでマネージメントもメカニックも我々が集めたメンバーで、我々独自のやり方でやっていきます」
とはいえ、発表があった1月15日時点で開幕まで2か月を切っているほか、2月中旬には鈴鹿サーキットで公式テストが予定されている。気になるマシンは国内にあった未使用のモノコックを確保し、それをイチから組み上げてシーズンに臨むことになるが、肝心の車両は現段階で「まだバラバラの状況」だという。
開幕までにチーム体制を整えることと同時に、どこまでしっかりとマシン組み上げてテスト初日にシェイクダウンを迎えられるかが、まずはTriple Tree Racingの今後の注目ポイントとなりそうだ。
そして当然、新規チームということでスーパーフォーミュラでの過去のデータがないというところも今シーズンに向けては懸念材料となる。この点については質疑応答の時間でも記者から質問が飛んだが、野田監督は「経験のあるエンジニアが来てくれるので、大丈夫です!」と笑顔を見せた。
会見の最後には、もともとJujuだけでなく、女性ドライバーのレース参戦をサポートするためにスーパーフォーミュラ・ライツや他のジュニアカテゴリーなどでチームを立ち上げる計画があったことを明かした野田監督。その計画を、いきなり国内トップフォーミュラで実現させることになった。
スーパーフォーミュラではこの年末年始にかけて、既存チームのエンジニアの移籍や主要スタッフ交代など、細かな動きが出ていることが漏れ伝わってきている。Triple Tree Racingのチームスタッフ、そして2025年のJuju担当エンジニアが誰になるのかも、今後注視していきたい項目だ。