2024年の大晦日に放送された『第75回NHK紅白歌合戦』の視聴率が発表された。平均世帯視聴率は第1部は前年と同じ29.0%、第2部は前年から0.8ポイントアップの32.7%で、1部は2年連続の30%割れ、2部は過去2番目に低い結果となった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
テレビの評価方法も変化
視聴率についてはさまざまな意見があり、ワースト記録更新とはならなかったものの回復する兆しは見られなかったという声が多い。しかし、テレビ誌ライターによれば、
「若い人がテレビを視なくなり、大晦日に『紅白』を視ている人はほぼ年配の人たちです。そんな時代にこれだけの視聴率が取れれば立派じゃないでしょうか。最近は番組をオンタイムで見るのではなく、配信で見る人も増えているので、テレビ番組の人気度をこれまで通り視聴率で単純に測ることはできなくなっています」
『紅白』が決して、飽きられてしまったわけではないという。
さて今回は、これまで毎回必ず出場していた“旧ジャニーズ”こと『STARTO ENTERTAINMENT』所属タレントが誰一人出場せず。かろうじて旧ジャニーズ系と言えるグループは『King & Prince』の元メンバー、平野紫耀・神宮寺勇太・岸優太で結成された『Number_i』1組だけだった。
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その枠にとって代わったのが、『TWICE』や『LE SSERAFIM』『ILLIT』『TOMORROW X TOGETHER』のK-POP勢だった。
また、初出場組が紅組は『ILLIT』『tuki.』『ME:I』、白組は『Omoinotake』『Creepy Nuts』『こっちのけんと』『Da-iCE』『Number_i』『TOMORROW X TOGETHER』『新浜レオン』で10組。2023年は過去最高の13組が初出場だったが、ここ何年も初出場が10組となっており、世代交代を推し進める方針なのが窺える。
一方、THE ALFEEをはじめ、GLAY、イルカなど復活組も出場。さらに、朝ドラ『おむすび』の主題歌を歌うB'zが初出場し、ほかにも玉置浩二、米津玄師、松崎しげる、武田鉄矢も出場。彼らは企画枠、つまり特別出演だった。
かつては“紅白不要論”も
かつて『紅白』に対抗する裏番組を作るため頭を悩ませていた元民放プロデューサーは、こう語る。
「60代、70代の重鎮たちからK-POP、演歌からポップス、懐かしい曲まで盛りだくさんの内容は、今回のテーマ『あなたへの歌』どおり、幅広い世代で楽しむことができたと思います。確かに『紅白』を1年の締めくくりとして楽しみにしている田舎のおじいちゃん、おばあちゃんには、日本語に聞こえないような曲もあると思いますが、それでもK-POPやラップのあのノリのいい映像を見ていれば意外と楽しめるものです。実際に“面白かった”と言っている視聴者は多いですから」
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あれもこれも、何から何までぶちこんだ“ごった煮”のようだったという批判的な声も出ているが、視聴者層を1つに絞ることなく、お年寄から若者まで楽しんでもらうことを考えた場合、“ごった煮”になるのは仕方ないことだという。ただ、“味付け”はしっかりしているので、表現としては“寄せ鍋”の方がピッタリではないかとも。そして、
「放送開始から何十年経っても毎回ニュースになって、視聴率云々が騒ぎ立てられる番組なんてそうそうないですよ。紅白というのは、やはりものすごい存在だと思います。しかも毎年、打ち切り説が出ていたのに、結局なくなる気配はゼロ。もはや単なる歌番組ではなく、1年を締めくくる一大イベントで恒例行事の“歌謡バラエティー番組”です。視聴者もそう認識しているんじゃないでしょうか」(同・元プロデューサー)
確かに、毎年のように出ていた“紅白不要論”、つまり打ち切り説は聞かれなくなった。熾烈な視聴率争いを繰り広げていたころは、各民放は紅白に対抗し、なんとか打ち負かそうと特番を組んでいたこともあった。しかし、視聴率の意味合いが薄れてきた現在、紅白に対抗して番組を作ろうという動きはなくなったという。
使う材料を変えて家族で味わえる“寄せ鍋”。同様に、盛りだくさんとなった『紅白』も年末の風物詩として、幅広い年齢層で楽しむことができるようになったのではないだろうか。
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