南米大陸のTCRサウスアメリカ・シリーズを軸に独自開発モデルを展開するTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ(TGRA)は、現時点で『トヨタ・カローラGRS TCR』を「南米以外で販売する予定はない」と述べ、同じ南半球を中心にTCRオーストラリアなどで声を挙げていた各国の潜在的カスタマーに対し、今季2025年は販路拡大の計画がないことを明言した。
地元アルゼンチンで展開するモータースポーツ専門サイト『sportmotores.com』に対し「現時点でTCRプロジェクトを他の市場に拡大する予定はない」と明かしたTGRAだが、今季2025年に向けては『FIA TCRワールドツアー』を含め、南米以外のさまざまな選手権に勢力を拡大するという噂が複数存在していた。
当初より母体となる実質的ファクトリー運営チームとして、コルドバに本拠を構えるトヨタ・チーム・アルゼンティーナ(TTA)は、開発年度のパイロットシーズンとして2022年7月にもホモロゲーション認証作業を終え、翌2023年より「都合10台のカローラGRS TCRの製造」を開始。以降は、サウスアメリカ・シリーズを主戦場とする強豪パラディーニ・レーシングやコブラ・レーシングなどがカスタマーユーザーとして参戦してきた。
そんなトヨタ製モデルの活躍をさらに拡大しようと、TCR規定を統括するWSC会長のマルチェロ・ロッティも、昨年末にはツーリングカー専門サイトの『TouringCarTimes.com』に「南米のトヨタを含むさまざまなメーカーと話し合い、チームを歓迎できるかどうかを検討している」と語っていた。
しかし、引き続き2025年もTCRサウスアメリカと併催イベントであるTCRブラジルのみの参戦に留まる見通しとなった最大の要因に関し、TGRAの広報担当者は「現在の世界的な物流上の課題が最大の要因である」と応じた。
「私たちTGRAはラテンアメリカでの運営を担当しており、今季もTCRサウスアメリカとブラジルのシリーズに参加する計画だ。車両を他の地域……この場合はヨーロッパやオセアニアなどに拡大するには、これらの市場でのTGR運営母体がカスタマーへの購入サポートやアフターサービスを提供する必要があるが、彼らのモータースポーツ活動は現在GTや、その他のシリーズに集中しているため、これは非常に困難なことだ」
同車がシェイクダウン以降の開発テストを進めていた2022年夏の段階で、TCRオーストラリアを運営するオーストラリアン・レーシング・グループ(ARG)の代表マット・ブレイドCEOは、地元専門メディアの『speedcafe.com』に対し、このトヨタ・カローラGRS TCRが「近い将来、我々のTCRオーストラリア・シリーズに参加する可能性があることに自信を深めている」と語っていた。
また、地元法人との提携で豪州ラリー選手権に『トヨタGRヤリスAP4』を投入するハリー・ベイツも、この車両がTCRオーストラリアに参戦する場合、トヨタとチームを組むことに関心を示していた。
「明らかにトヨタ(のTCR規定モデル)が登場するのは本当にエキサイティングだし、いつの日かオーストラリアで見られることを願っている」と語っていたベイツ。
「と言いながら、すでに僕らは確かにここオーストラリアにその1台を入れることについて話し合っている。少し様子を見てみたいと思うし、楽しみに待っていて欲しい。僕はこのカテゴリーが大好きで、いつかはTCRに参戦したいと思っていたんだからね!」
その現地法人トヨタ・オーストラリアを母体に同国のモータースポーツ活動を担うTOYOTA GAZOO Racingオーストラリアは、豪州大陸最高峰のRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップに向け2026年からの本格参戦を表明。A90型をベースとする『トヨタGRスープラ・スーパーカー』の投入を予定し、その開発作業にリソースを傾けている。