2025年型GRヤリス・ラリー1はブラックイメージ継続。機動性向上の仕様変更で開幕戦モナコへ/WRC

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2025年01月17日 18:50  AUTOSPORT web

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プレイベントテストを行ったTGR-WRT
 1月23日から26日にかけて、モナコ公国のターマック(舗装路)を舞台に開催される2025年WRC世界ラリー選手権の開幕戦ラリー・モンテカルロへ、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)は4台のトヨタGRヤリス・ラリー1を出走させ、さらに同陣営のTGR-WRT2からも5台目のGRヤリス・ラリー1を走らせる。

 TGR-WRTとしてマニュファクチャラー登録が行われたのは、セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(17号車)、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)の3台だ。勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)はTGR-WRTの4台目出走、TGR-WRT2の5号車にはサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組が乗り込むことになった。

 2024年のマニュファクチャラー選手権を制覇したTGR-WRTは、迎える2025年へ向けてロバンペラ/ハルットゥネン組をフル参戦クルーとして再招集し、マニュファクチャラー選手権の連覇はもちろん、ドライバー/コドライバーズ選手権のタイトル奪還もターゲットに新シーズンへ臨む。

■レギュレーションが多数変更の2025年

 2025年のWRCは、スペイン(カナリア島)、パラグアイ、サウジアラビアという3つの新イベントがカレンダーに加わり、ラウンド数は昨年までの全13戦から14戦に拡大。例年どおり、モナコとフランスを舞台とするラリー・モンテカルロで長いシーズンの開幕を迎える。

 さらに最高峰クラスのラリー1車両にも大きな変更があり、これまで3シーズンに渡り組み込まれてきたきたプラグイン・ハイブリッド・ユニットが外されることに。それに伴って、車両の規定最低重量は従来の1260kgから1180kgへと大幅に引き下げられることで、プラグインハイブリッドによるブーストがなくなることと吸気リストリクター径が36mmから35mmに絞られたことによるパワー低下を補完し、昨年までと同様のパワーウェイトレシオを維持している。

 また、単一サプライヤーとして、ハンコックが初めてWRCトップカテゴリー車両にタイヤを供給することも大きな変更点に挙げられる。

 そしてマシン面の更新のみならず、スポーティング・レギュレーションについても重要な変更が行われた。日曜日の最終総合順位に対して与えられるポイントが復活し、昨年までの土曜日終了時点での順位に対し付与されていたポイントは廃止。ただし、日曜日のみの合計タイムによって競われる“スーパーサンデー”と、最終ステージのみの順位に対してポイントが与えられる“パワーステージ”は継続となり、これまでと変わらず日曜日もエキサイティングな戦いが続くことになるはずだ。

 なお、日曜日の最終順位に対して与えられるポイントは、1位から10位までに25-17-15-12-10-8-6-4-2-1。スーパーサンデーとパワーステージは、いずれもトップ5に対し5-4-3-2-1ポイントが与えらる。

 また、ハイブリッドシステムが外されたトヨタGRヤリス・ラリー1には、100%持続可能な非化石燃料が採用されている。さらに、プラグイン・ハイブリッドユニットによるブーストが得られなくなったことでエンジンに求められる特性が変わったため、2025年車両ではエキゾーストシステムとカムシャフトを変更。さらに、ギヤレシオを見直すなどしてパッケージの最適化を図り、クルマの改良が施されている。

 こうして迎える2025年WRCの開幕戦『ラリー・モンテカルロ』は、厳寒期のフレンチアルプスの山道が舞台となり、基本的にはターマック(舗装路)イベントだが、舗装路面が氷や雪に覆われたステージも多く、天候も変わりやすいためにWRCのなかでもっとも過酷なイベントのひとつと言われている。

 路面の状態が変わりやすいためタイヤ選択も非常に難しく、ドライ用、ウエット用、雪道用のスタッドレスタイヤ、金属製のスタッド(スパイク)が埋め込まれたスタッドタイヤなど、さまざまなタイプのタイヤを駆使しながらラリーを戦う。

■2025年の『ラリー・モンテカルロ』は初日からハードな日程に

 2024年大会と同様、ラリーの中心はフランス南部ギャップのサービスパークとなり、ラリーの開幕を華やかに祝うセレモニアルスタートはモナコ中心部のカジノ広場で行われる。木曜日の午後にモナコを出発した選手たちは、遠く離れたギャップのサービスパークを目指しながらデイ1として3本のナイトステージを走行。競技初日から、路面凍結の可能性もある合計54.16kmの夜間ステージと対峙することになる。

 金曜日のデイ2は、ギャップの東側と北側のエリアで、ミッドデイサービスを挟んで3本のステージを各2回走行。土曜日のデイ3も同様のフォーマットで行われ、ギャップの西側エリアで3本のステージを各2回走行する予定となっている。なお、そのうちSS11/14の『オスロン/ルクーボー=ジャンサック』は完全な新ステージとなる。

 最終日となる日曜日のデイ4は、早朝ギャップのサービスパークを出発した後、木曜日の夜にSS1とSS3として走行した2本のステージを再走。その後、有名なチュリニ峠のコーナーを含む最終のパワーステージ、SS18『ラ・ボレーヌ=ベジュビー/ペイラ・カヴァ』を経て、モナコでフィニッシュを迎える。

 4日間で18本のステージを走行し、その合計距離は343.80km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1629.37kmとなる予定だ。


■新たな2025年型GRヤリスは「俊敏」と代表

 新シーズンを迎えるTGR-WRTのヤリ-マティ・ラトバラチーム代表は、新たな技術規則が反映されたトヨタGRヤリス・ラリー1は「むしろ俊敏になった」とし、開幕戦への期待を語っている。

「2024年シーズンが終わったばかりのような気がするが、我々は多くの新たな側面を持つ2025年シーズンに向けて準備を進めている。ハイブリッドユニットが搭載されなくなり、重量が低減されたことにより、我々はクルマの最適化とセットアップの適切なバランスを見つけるために努力してきた」

「自分自身もこの新しいパッケージのクルマを運転する機会があったが、パワーが減少しているにもかかわらずパフォーマンスは以前とほぼ同等で、クルマはむしろ俊敏になったように感じた。また、新たなタイヤサプライヤーであるハンコックの参入も歓迎したい。このようなさまざまな変化にドライバーたちがいち早く適応し、限界までプッシュできるようになることを期待したいね」

「ラリー・モンテカルロはコンディションが変わりやすいことから、タイヤ戦略の面でも、もっとも難しいイベントのひとつだ。テストでは降雪などさまざまな天候を経験したが、ラリーではつねに驚くような出来事に遭遇するものだ」

「(そんななかでも)強化された今年のラインナップにより、我々のドライバー達がこのイベントと、チャンピオンシップでトップ争いに加わることができると確信している。ラリー1でフル参戦する初めての年となるサミ(・パヤリ)には、以前の(勝田)貴元と同じように、セカンドチームからエントリーしてもらう」

「これにより、マニュファクチャラー選手権争いでも新たな展開がもたらされるはずだ。今大会での彼のメインターゲットは完走と経験を積み重ねることになるが、一年を通して成長し、進化してくれることを期待したい」

 2025年の開幕戦であり、WRC伝統の一戦でもある『ラリー・モンテカルロ』は、1月23日から26日にかけて開催。最初の走行は23日(木)のシェイクダウンとなる予定だ。

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