ヴェネチアで“未来の映画賞”受賞 16ミリフィルムで紡ぐ『メイデン』公開決定

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2025年01月18日 13:01  cinemacafe.net

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『メイデン』(C) 2022 FF Films and Medium Density Fibreboard Films.
喪失感と孤独に苛まれる少年少女3人のひと夏の出来事を16ミリフィルムの質感を生かした映像美で紡ぎ上げ、第79回ヴェネチア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門で“未来の映画賞”を受賞した『メイデン』(原題:The Maiden)が、4月19日(土)より全国順次公開。特報映像が解禁された。

カイルとコルトンは、カナダ・カルガリーの郊外に住む高校生。親友同士のふたりは住宅地をスケートボードで駆け抜けたり、渓谷で水遊びに興じたりと、気の向くままに日々を過ごしている。夏休みが終わりに近づいたある夜、立入禁止区域の鉄道の線路に侵入したカイルに惨たらしい出来事が降りかかる。

新学期が始まってもその事実を受けとめきれないコルトンは、深い喪失感に打ちひしがれながら、かつてカイルと一緒に戯れた渓谷に足を向けるようになる。

その頃、同じ高校に通う少女ホイットニーが行方不明になり、奇しくもコルトンが渓谷の岩場で拾ったホイットニーの日記帳には、学校での人間関係に悩む彼女の切実な心情が綴られていた。

はたしてホイットニーの身に何が起こり、彼女はどこへ消えたのか。孤立したコルトンは、どうすれば心の空洞を埋めることができるのか。そして、孤独な彼らの魂の行く末とは…。

監督は1987年生まれのグラハム・フォイ。自身が育ったカナダ西部のアルバータ州カルガリーで撮影を行った初監督の本作で、第79回ヴェネチア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門で“未来の映画賞”を受賞。第75回カンヌ国際映画祭批評家週間「Next Step」のプログラムにも招待されている期待の新鋭監督だ。

映画は2つのパートで構成され、前半では気が置けない親友同士であるカイルとコルトンのひと夏の日常が、詩的な美しさに満ちたショットで点描される。すると中盤のある重大な悲劇がターニングポイントとなり、後半はもう1人の主人公ホイットニーの視点に切り替わり、静寂に包まれた森や草原を舞台にした幻想的なストーリーが繰り広げられる。

多感な時期を生きる十代の若者たちを主人公にした本作は、友情と孤独、喪失の悲しみといった普遍的なテーマを扱いつつも、それらを探求する作風・手法は、ハリウッドの思春期ものの定型とは明らかに異なる。

マジック・リアリズムとも形容したくなる、その唯一無二の魅惑的な神秘性がヴェネチアでも評価。撮影監督は、グラハム・フォイ監督と共に様々なミュージックビデオや短編にも携わってきたケリー・ジェフリーが務める。

さらに主役のジャクソン・スルイター、マルセル・T・ヒメネス、ヘイリー・ネスの3人はいずれもオーディションで見出され、これが映画デビュー作となるフレッシュな俳優。

なかでも「Vans」と「Nine Times Skate Shop」がスポンサーにつくスケートボーダーであるジャクソン・スルイターは、在りし日のリヴァー・フェニックスを想起させる鮮烈なカリスマ性に国際映画祭でも多くの注目を集めた。

ヘンリー・マンシーニ作曲、ロジャー・ミラーが歌うラブソング「ディア・ハート」が流れるレトロなカセットテープレコーダー、渓谷に置き捨てられた1冊の日記帳、川に葬られた黒猫などのミステリアスなアイテムやエピソードの数々も想像力を刺激してやまない。


監督・脚本:グラハム・フォイよりコメント到着
私は、アルバータ州カルガリーの『メイデン』が撮影された地域で育ち、十代の頃は映画の中心的なロケ地である渓谷で過ごしました。『メイデン』は完全に自伝的というわけではありませんが、映画で起こる出来事、登場人物、場所には個人的なつながりが多くあります。悲しみ、孤独、喪失、友情、十代の生活の精神的および感情的な混乱。これらはすべて青春映画の古典的な要素ですが、私にとって『メイデン』は、2つの柱に分けた詩的なビジョンであり、宇宙的なつながりを共有する物語です。

「死後の待合室」と思われる場所でカイルとホイットニーの道を織り交ぜ、コルトンの深い絶望と憂鬱、声にならない叫び、淡々と流れていたそれぞれの平凡な日常があっけなく終わってしまい、それぞれの道を歩み始めるのです。3人の人生に欠けていたパズルのピースが、観客にも伝わり、私たちの心に残る作品になっていたのなら嬉しいです。

『メイデン』は4月19日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。




(シネマカフェ編集部)

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