いよいよ大統領に就任するトランプ氏。アメリカファーストの主張をさらに強める中、アメリカを代表する実業家たちがすり寄る姿勢を見せています。トランプ氏で世界はどうなるのでしょうか。
議会襲撃事件から4年…フェイスブックはファクトチェックを廃止2021年、大統領選で敗れたトランプ氏の呼びかけに応じ、暴徒化した支持者が議会を襲撃した事件。
これを受けて、ツイッターやフェイスブックのトランプ氏のアカウントはすぐさま凍結された。
当時フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏は…
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マーク・ザッカーバーグ 氏
「(暴動を)非難するのではなく、むしろ容認するためにSNSを使ったトランプの行動は、アメリカや世界の人々を混乱させた」
「我々のプラットフォームは、民主的に選ばれた政府に対する暴動を煽るために利用された」
さらに、アマゾンやグーグルがトランプ支持者が利用するSNSアプリを凍結するなど、一斉にトランプ氏を締め出した。
それから4年、ツイッターはトランプ政権で要職に就くイーロン・マスク氏に買収され、フェイスブックはファクトチェックを廃止すると発表した。
マーク・ザッカーバーグ 氏
「特にアメリカでは、ファクトチェックは政治的に偏りすぎていました」
メディアの状況が一変するなか、アメリカで物議を醸す風刺画がある。
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描かれているのは、ザッカーバーグ氏やアマゾンの創業者でワシントン・ポストのオーナー、ジェフ・ベゾス氏。大金を手に、トランプ次期大統領に跪く様子が描かれている。
2人は、トランプ次期大統領の就任基金に100万ドル=約1億5000万円を寄付した。
描いたのはワシントン・ポストの風刺画家、アン・テルナエス氏。しかし、掲載は拒否された。
テルナエス氏はSNSで風刺画について…
アン・テルナエス氏
「トランプに取り入ろうと、躍起になっているITやメディア企業の億万長者たちに対する批判だった」
掲載拒否は「報道の自由を危険にさらす」と抗議し、辞職した。
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さらに、論説部門が民主党・ハリス候補の支持を表明しようとすると、オーナーのベゾス氏が阻止したと報じられた。
伝統だった大統領候補の支持表明が見送られると、社内外から批判が相次いだ。
質問者
「元編集主幹が『民主主義を犠牲にした臆病な行動だ』と批判しました」
ジェフ・ベゾス氏
「でも実際、これは正しい決断でした。私はこの決断に誇りを持っています。臆病だなんてとんでもないです」
有力紙・ロサンゼルス・タイムズでも、選挙直前に候補者の支持表明が取りやめられた。
当時、論説委員を務めていたカリン・クライン氏は、ここでもオーナーによる介入があったと話す。
ロサンゼルス・タイムズ カリン・クライン 元論説委員
「ロサンゼルス・タイムズで35年間働きました」
「委員会として私たちは、ハリス候補の支持を表明しようとしていましたが、オーナーはそうさせませんでした。非常に不適切だったと思います」
論説の差し止めを迫ったのは、風刺画にも描かれたオーナーのスン・シオン氏。「世界一の金持ちドクター」とも言われ、2018年にロサンゼルス・タイムズを買収した。
ロサンゼルス・タイムズ カリン・クライン 元論説委員
「彼は『中立』であることを求めてきました。しかし、私たち論説委員の仕事は中立であることではありません。中立であってはいけないのです。私たちは8年間トランプを批判してきました。中立だと言って、誰が信頼してくれるでしょうか」
この決定を受けて、クライン氏は35年間務めたロサンゼルス・タイムズを離れた。
村瀬健介キャスター
「35年間働いた会社を離れることは、とても辛い決断だったのではないでしょうか」
ロサンゼルス・タイムズ カリン・クライン 元論説委員
「とてもとても難しかったです。無期限の雇用契約を結んでいましたし、会社には多くの友人がいます。彼らには感謝しているし、思い出も沢山ありました」
相次ぐ風刺画や論説の掲載中止。メディアがトランプ氏の再選によって萎縮していると警鐘を鳴らす。
ロサンゼルス・タイムズ カリン・クライン 元論説委員
「多くのメディアで同じことが起こっているんです。トランプはとても攻撃的で、敵だと見なした相手にはどんな手を使ってでも傷つけ、圧力をかけることをためらいません。トランプに対して、立ち向かうのが難しくなっていることは確かです。だからこそ、私たちジャーナリストが、勇気を持って立ち向かわなければなりません」
マスメディアに対する市民の信頼も大きく揺らいでいる。
最新の世論調査によると、TVや新聞などのメディアを「信頼している」と答えた人は31%と、過去最低を記録した。
大統領選挙を目前に控えた、2024年10月。私たちが現地で取材している際も、メディアへの不信感を口にする人たちがいた。
グレンダ・ベイリーさん(65)。トランプ氏の支持者だ。
トランプ氏支持者 グレンダ・ベイリーさん
「大手メディアだけを見ていても、全ての情報を得ることは出来ません」
情報収集は主にX(旧ツイッター)で行っているという。
私たちが日本のテレビ局の記者だと伝えると、こんな質問を投げかけてきた。
グレンダ・ベイリーさん
「暗殺された総理がいませんでしたか?」
村瀬キャスター
「(安倍)元総理ですね」
グレンダ・ベイリーさん
「コロナワクチンに反対でしたね?」
村瀬キャスター
「いえ、むしろ推進していました」
グレンダ・ベイリーさん
「刺されたのよね?」
村瀬キャスター
「いえ、撃たれたんです。手製の銃で」
グレンダ・ベイリーさん
「撃ったのは、左翼?」
村瀬キャスター
「違います」
ベイリーさんが暮らすのは中西部・オハイオ州のスプリングフィールド。人口の4分の1をハイチからの移民が占め、「移民が住民のペットを食べている」というトランプ氏の発言で注目を集めた街だ。
発言について、市の当局は「事実無根だ」と否定したが、ベイリーさんは持論を展開した。
グレンダ・ベイリーさん
「ようやく真実を語ってくれる人が現れて、嬉しいです」
(Q.真実ですか)
「真実ですよ。ハイチは、カリブ諸国の中で最もIQが低い国の一つなのよ。この街で2万人ものハイチ人を受け入れる意味なんてないのです」
スクールバスの運転手として働くマーク・サンダースさん(63)も、ハイチ移民への反感を募らせる一人だ。
きっかけになったのが、2023年8月に起きたバス事故だという。50人以上を乗せたスクールバスに車が突っ込み、11歳の男の子が亡くなった事故。車を運転していたのはハイチからの移民で、州で認められた免許を持っていなかったという。
マーク・サンダースさん
「亡くなった男の子は娘の同級生でした。私もスクールバスの運転手です。子どもの命を預かるという保護者たちの信頼を背負っています。法律を無視する人たちの考え方は変えようがないのです」
サンダースさんは、ペットをめぐるトランプ氏の発言についても“100%事実”だとして、市の公聴会でも「ハイチ人による動物虐待がある」と訴えてきた。
村瀬キャスター
「市の当局は発言を否定していますが」
マーク・サンダースさん
「市は事実を確認したものの、街の評判が悪くなることを恐れて公表していないのでしょう。調査すらしていないのかもしれません」