F1はここ数年、グランプリのプロモーターとの契約に関する戦略を変えてきた。数年前までは、3年程度の短期契約を選んでいたが、最近では長期にわたる契約を結ぶ傾向にある。これにより、プロモーターとサーキットが施設の大規模なアップグレードに投資できるだけでなく、サーキットを訪れる新しいファン層を獲得しやすくなった。
2025年のF1世界選手権に含まれる24のグランプリの多くが、すでに長期契約を締結済みだ。実際、16のグランプリプロモーターが2030年代まで続く契約を保持している。最も長い契約を締結しているのはバーレーンで、2036年末までとなっている。
メキシコとラスベガスは2025年末に契約が切れるが、どちらも比較的容易に延長できる見込みだ。ラスベガスのナイトレースは、F1の商業権を所有するリバティ・メディアが主催している。契約初年度は、実質的にグランドスタンドに誰もいない状態で初日のフリー走行が実施されたこともあり、2024年には観客数が大幅に減少した。しかし、最も高額なパッケージが完売したことにより、資金が引き続き流入しており、リバティにとってこのレースにさらに数年間投資する十分な理由となっている。
メキシコに関しては、セルジオ・ペレスがグリッドにいないことで国内でのF1への関心が多少低下することは明らかだが、地元のファン層は非常に熱心であり、2025年もプロモーターは、問題なくチケットを完売させられる見込みだ。今年の収益見通しが明確になれば、迅速にF1と契約延長の条件に合意するだろう。
2026年には4つのグランプリの現契約が終了する。ザントフォールトはすでに新しい契約を結ばないことを発表しているが、バルセロナはヨーロッパの一部のレースに導入されるローテーションシステムに加わる見通しだ。このシステムには、すでにスパ・フランコルシャンが正式に参加している。一方、アメリカGPの開催地オースティンは、大物スターのコンサートとF1レースを組み合わせることで、経済的にもスポーツ的にも大きな成功を収めてきたため、契約が延長されることはほぼ確実であり、今年のイベント中にその発表が行われる可能性が高い。
アゼルバイジャン、シンガポール、日本は2020年代終わりまでに現契約が終了するが、他の開催地はそれ以降までの契約を結び、長期的な安定が達成されている。新たな開催地でのプランもあり、サウジアラビアの新コース、キディヤでの同国ふたつ目のレース、タイ・バンコクでのストリートレース、南アフリカのキャラミまたはケープタウン、韓国の仁川でのレース、ルワンダでの初グランプリなどが予定あるいは検討されている。
■各グランプリの契約期間
2025年: メキシコ、ラスベガス、イモラ
2026年: スペイン(バルセロナ)、オランダ(延長なし)、アメリカ(オースティン)、アゼルバイジャン
2028年: シンガポール
2029年: 日本
2030年: 中国、オーストリア、サンパウロ、アブダビ、サウジアラビア
2031年: マイアミ、モナコ、カナダ、ベルギー(2028年と2030年はレースなし)、イタリア(モンツァ)
2032年: ハンガリー、カタール
2034年: イギリス
2035年: オーストラリア、スペイン(マドリード)
2036年: バーレーン