(上段左から)緑黄色社会、RIIZE(下段左から)Mrs. GREEN APPLE、Creepy Nuts(C)モデルプレス、テイラー・スウィフト/Photo by Getty Images 【モデルプレス=2025/01/20】テレビ朝日系音楽番組「EIGHT-JAM」(毎週日曜よる11時15分〜)では12日・19日と2週に渡って、2024年のミュージックシーンを独自目線で振り返る「プロが選ぶ年間マイベスト10曲」の最新版を放送。12日の放送で10位から5位、19日の放送で4位から1位までが発表された。
【写真】「2023年の年間マイベスト10曲」トップ10一覧 ◆EIGHT-JAM、プロが選ぶ「2024年の年間マイベスト10曲」発表
毎年恒例のこの企画では、昨年に引き続き音楽プロデューサー・蔦谷好位置、作詞家/歌詞プロデューサー・いしわたり淳治、ミュージシャンの川谷絵音が選者として登場。それぞれが独自の目線で2024年の音楽シーンを回顧した。
いしわたりは、5位にAwichの「かくれんぼ」を選出し「このリリックはJ-POP史における事件」と絶賛。また「第75回NHK紅白歌合戦」に出場したOmoinotakeの「幾億光年」を3位に選出し「間違いなく2024年を代表する名曲の1つ」と評した。
川谷はアイドルグループ・きゅるりんってしてみて「しゅーぱーめるてぃらびゅふれーばー◆」(※◆はハートマーク)を9位にランクインさせるなど幅広い音楽ジャンルから選出。第3位に選出したCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は「世界で戦える日本の音楽」と称賛を送った。
蔦谷は「これは本当に絶対紹介したかった」と5位にODDの「Foot Works」を選出。3位にはAooo「サラダボウル」を選出し、その日本らしさのある音作りを「誇り」と表現した。
1位には、川谷と蔦谷の2人が、藤井 風の「満ちてゆく」を選出。それぞれ歌詞やコード進行を絶賛し「何回聞いても泣けてくる」「こんなに美しい曲はない」と感激とともに手放しの賛辞の言葉を送った。また、蔦屋が10位に選んだjo0ji「眼差し」をいしわたりは1位に選出。日本の歌謡曲の影響を受けつつも現代的なアレンジを合わせ持つjo0jiの楽曲を「とにかく格好いい」と絶賛した。
◆いしわたり淳治のトップ10
10位:AKASAKI「波まかせ」
現役高校3年生のシンガーソングライター。そこはかとなく漂うキラキラ感と大人っぽい歌声が印象的で、メロディーと言葉のセンスに非凡なものを感じます。楽曲「Bunny Girl」も含め昭和な感じが18歳っぽくなく、何に影響を受けたのかなどすごい気になるアーティストって感じです。
9位:テイラー・スウィフト「My Boy Only Breaks His Favorite Toys」
彼との恋をバービー人形の”ごっこ遊び”に例えて「私の彼はお気に入りのおもちゃだけを壊す」と歌う。この短いフレーズだけで、自分たちの恋愛がどんな感じだったかを聴き手に鮮明に想像させる。その引き算の美しさはさすが。
8位:グソクムズ「ガーリーボーイ」
古き良き日本のポップソングのスタイルを継承しながら様々な音楽のエッセンスを交えている。それを今の時代に似合う形に仕上げて爽快に奏でているのが印象的です。歌詞も丁寧に吟味された美しい日本語にこだわりや美学のようなものを感じられて、非常に好感が持てる“シティーフォークバンド”。
7位:ベンソン・ブーン「Beautiful Things」
有名オーディション番組「アメリカン・アイドル」出身で、MV総再生回数4億回の世界的ヒットとなった楽曲。メロディーと歌詞とアレンジが三位一体となって美しい歌の世界を作り上げている。最高の恋人に巡り会えたことで毎日が幸せだと穏やかに歌うバース(A・Bメロ)部分と、それを失いたくないと激しく叫ぶサビの、静と動の対比がドラマチック。
6位:Tele「カルト」
アーティストの米津玄師とも交流があるシンガーソングライター。誰とも似ていない言葉を畳み掛けるように紡いでいく天性の詩人。デッサンするように短い言葉を重ねて、気がつけば壮大な絵を描き出しており、言葉の洪水に圧倒される心地よさがある。あどけない少年のような佇まいの奥にある、ダークヒーロー感が爆発した曲。米津は「音楽も良いし話しててもおもしろくて、すごくなんかいいなと思ってます」とコメントしている
5位:Awich「かくれんぼ」
大切な誰かを励ましたりする曲はこれまでJ-POPの中でもたくさんあったが、「いつからか君は 薬がないと笑えなくなってった」という一文をJ-POPの文脈の中で歌えたのはスゴい事件。歌われた瞬間に曲全体を緊張感が包み込んで、リアリティが漂い始める。日本ではタブーとされていたようなワードを彼女のルーツであるHIPHOPから来る感性と語彙力でポップリングに落とし込んでおり、新しい一歩を感じる。
4位:Nulbarich「Floatin’」
シンガーソングライターのJQがトータルプロデュース。武道館ライブは即ソールドアウト、アジア各国でライブを行うほどのバンドだが、2024年度で活動を休止。 いしわたりは同曲が「個人的に1番聴いたのはこの曲」と語り「すごく懐かしい感じ」「頭を使って聞くのでなく一番リラックスしたときにかけていた曲」と評した。
3位:Omoinotake「幾億光年」
ギターのいない3人組ピアノバンドで、同曲は二階堂ふみ主演ドラマ「Eye Love You」(TBS/2024)主題歌としてヒットし、「第75回NHK紅白歌合戦」にも出場。Aメロ、Bメロ、サビ、どこを切り取ってもキャッチーでかつ、曲としての骨格がしっかりしていて、曲が展開するとともに着実に盛り上がっていく。「こういう曲に出会えたら、作詞家として楽しいだろうな」と、嫉妬のような羨ましさのような不思議な感情を覚えた1曲。間違いなく2024年を代表する名曲の1つだと思います。
2位:緑黄色社会「恥ずかしいか青春は」
こんなにも瑞々しく輝きを放って響くことに、驚きと清々しさのような新しい感覚を覚えました。かつては「まっすぐな青春ソング」に対し「斜めな青春ソング」の役割をロックやパンクが果たしていたのが、「全うに頑張る青春」のほうが少数派になったように感じる今では「恥ずかしいか青春は 馬鹿らしいか真剣は」という歌詞が逆にロックにすら聞こえてきます。この歌は2024年にアップデートされた最新の青春ソングの形だと思いました。
1位:joOji「眼差し」
漁港で働きながら音楽活動を行っている異色のアーティスト。彼の音楽を一言で言うならば「格好いい」に尽きます。男っぽい言葉遣いと、色気のあるボーカル、洒落たアレンジ。全ての要素が綺麗に噛み合って彼の独特な雰囲気を生んでいます。アレンジは現代的で、メロディーと歌詞は古き良き日本の歌謡曲の影響を多分に受けているということ。日本の音楽界の中でも異端というか、音楽を作る時の出発点が人と違うような感じがして、曲を聴くたびに才能の煌めきを感じていました。音楽体験として貴重な体験をしてきた人が作った曲という感じで、いい曲しか出していません。
◆川谷絵音のトップ10
10位:がらり「午後二時の通り雨」
想像を遥かに超えたBメロのメロディーを聴いた時にこれは売れると確信しました。引き込まれる歌声を持ち、Vaundyを初めて聴いた時のワクワク感に似た感覚で、彼にしか出せないポップセンスがすでに開花している。3文字が視認性の限界である現代にあって、コラボなどでは「がらりと…」と使われることでさらに強い印象を残せるというクレバーさも感じる。2025年スゴいことになるのでは。
9位:きゅるりんってしてみて「しゅーぱーめるてぃらびゅふれーばー◇」(※◇はハートマーク)
でんぱ組.incのプロデューサーであったもふくちゃんがプロデューサーをつとめる、女性に人気のアイドルグループ。下半期1番聴いたかもしれない。サビの「Tu-lu-tu-lu」のメロディーの中毒性がすごく、最初に聴いた時に「何コレ!?」と思ったが頭から離れなくなった。メルヘンな歌い出しからは想像できない、少しダークさもあるサビの展開も癖になる。普通に歌もうまい。
8位:エルスウェア紀行「素直」
2020年から活動するヒナタミユ、トヨシの2人組バンド。キリンジのコード感などを今の時代に合わせて昇華していて、久々にドストライクな「キリンジチルドレン」を見たと感じている。ボーカル・ヒナタさんの歌声は美しい倍音で、ウィスパー成分が多いのにくっきりと粒立っている天性のもの。マルチプレイヤーのトヨシさんは色々なジャンルを網羅している。
7位:minako「発狂」
Xのフォロワー数が1000人未満の謎のシンガーソングライター。ギターの音が大きく、更にそれより突き抜けてくるボーカルの気持ちの乗り方が最高。しゃがれ声じゃなくて、綺麗な声でありそうでなかった歌声。ライブに行って、音源と違って「やっぱりライブが良いな」となることも多いが、これは音源から物凄くロック。
6位:Mrs. GREEN APPLE「ライラック」
流行がリズムにシフトする中で、奇をてらわずこの明るさの曲で真っ当にヒットを出せるアーティストはMrs. GREEN APPLEだけ。サブスク時代の「イントロは無しで曲は短く」という空気感がある中で、イントロも曲の尺も長い。長尺のギターソロも印象的で、大森(元貴)君が作って渡しているのだと思うが、あんなものをもらったら俺だったらマジで夜逃げすると思う。このレベルの曲をずっと作り、ライブをやり続ける精神力とカリスマ性は、今の時代を象徴するスター。
5位:RIIZE「Love 119(Japanese Ver.)」
K-POP大手のSMエンターテイメントから2024年に日本デビューした新ボーイズグループ。エモーショナルなピアノが鳴り響くオケにメロディーを当てず、音程が無いフックを乗せるセンスに驚きました。昔の歌謡曲をサンプリングしてリバイバルするというのが流行っており、この曲も2005年のizi「救急室」のサンプリングとなっている。ヒップホップ的なアプローチをするには優し過ぎるトラックなはずなのに、歌メロを入れないことがハマっています。作った人は天才だと思う。
4位:柴田聡子「白い椅子」
2016年詩集「さばーく」で第5回エルスール財団 新人賞<現代詩部門>を受賞するなど、詩人・文筆家としても注目を集めるシンガー・ソングライター。フワフワしているようで地に足がついた歌が癖になる。どうやったらこんなメロディと歌詞の組み合わせを思いつくのだろう…まさに鬼才。アルバム「Your Favorite Things」はSNSがこのアルバム一色になるほど音楽好きが絶賛。
上白石萌歌も「私は柴田聡子さんが大好きなんです。月1でやってる定期演奏会に行ったりとか」とファンを公言した。
3位:Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」
TVアニメ「マッシュル-MASHLE-」OPテーマ曲、米ビルボード・Global 200でトップ10入り。ジャージークラブのリズムが特徴的で、邦楽においてこのリズムの大ヒット曲は初めてだったのではないかと思います。とにかくサビの歌のリズムが気持ち良く誰でも覚えられて誰でも口ずさめる、幅広く全てを虜にできるメロディー。「世界で戦える日本の音楽はまさにこれだな」と。これを聞いた時は「やられた〜」と思い、流行りの0.1割くらい俺かもと思うほど色々な人に言って回ったほどの曲。
2位:大橋トリオ「エトセトラ」
小泉今日子、上白石萌音などへの楽曲提供を行う一方でドラマやCM・映画音楽の作家としても活動。イントロから歌メロから何から何まで完璧なポップソング。この間奏が天才的すぎて何回も唸りました。とりわけ8小節のドラムから始まり、鍵盤、鍵盤+弦楽器と次々と展開していく印象的な間奏は「くーっ!!って声が本当に出るほどで、何度も繰り返し聞いてしまったほど。間奏の後、曲名である「エトセトラ」という歌詞と同時に曲が終わる展開も完璧すぎる。まさにポップマエストロ。
蔦谷も川谷とともに大橋を「天才」と評した。
1位:藤井 風「満ちてゆく」
「僕は何回彼に救われればいいのだろう」と思うほど歌詞に大きく心をゆさぶられた。「どんな物事にも終わりが来る。いつか終わりが来るんだから、一喜一憂せずにあるがままを受け入れて軽くなって、結果あなたの心は満ちてゆくよ」と語りかけてくれた、色んなものを持ち過ぎている自分に、手放す勇気をくれた大事な歌詞です。イントロのコードもシンプルで優しく、あえて通常の440Hzから432Hzに下げているチューニングも合わせ、考えすぎず力を抜いていいというメッセージが伝わってくるようで、何回聞いても泣けてくる。2020年の「罪の香り」、2023年の「花」に続き、川谷が藤井を1位に選出するのはこれが3回目。
◆蔦谷好位置のトップ10
10位:jo0ji「眼差し」
漁港で働きながら音楽活動を行っている異色のアーティスト。70年代フォークを経過したポップスの香りを持ちながら、その歌声と歌唱、そしてWONK・井上幹によるサウンドにより懐かしさを斬新さを兼ね備えた独自の作品を作り続けています。「流行りのうたでは救いがない」と歌う彼が、新たな流行りを作っていくようなそんな予感をさせる曲です。
9位:ヨルシカ「晴る」
ヨルシカの曲と歌詞が良いのは言うまでもないですが、あまり語られていないのがレコーディング芸術としての音色の素晴らしさです。よくぞこの音を作って録音しミックスしてくれた、と言う全てが美しいサウンド。 歌詞、メロディー、サウンドメイキング、MV、何もかもが素晴らしく、オープニングテーマを飾ったTVアニメ「葬送のフリーレン」とともに強く、心に残る。川谷も音作りを絶賛。
8位:luvis「Higher」
Z世代のシンガーソングライター。海外の精鋭的なオルタナティブシーンと呼応した研ぎ澄まされたサウンド。細野晴臣・はっぴぃえんどを感じさせるような懐かしさもあり、それが世界のどこにもないらしいluvisらしい楽曲になっており、とてもセンスが良い。音色作り、アレンジメント、作曲、すべてにおいてハイクオリティーであり、アーティストとしての立ち位置も他に似た存在がいないので、これから何をしてくれるかがますます楽しみ。
7位:ブランデー戦記「Coming-of-age Story」
2022年結成の大阪発のスリーピースバンド。2025年4月にメジャーデビュー予定。誰もが感じたであろう若者の焦燥や苛立ち瞬間の輝きを描いた名曲。スマッシング・パンプキンズやニルヴァーナなど90年代オルタナティブ・ロックやグランジを彷彿とさせるサウンドが、大人になり切れない若者の空気を覆っていて、MVも含めて素晴らしい作品。
6位:Myuk「愛の唄」
TVアニメ「約束のネバーランド」のテーマ曲。歌もギターも確かな技術があり、自身で作詞作曲できながら他者との創作によって可能性の幅を広げる選択を出来る視座も含めて美しい挑戦だと感じます。Myukの歌声や、可能性を引き出すボーカロイドクリエイター・Guianoの仕事が素晴らしい。
5位:ODD Foot Works「この曲」
絶対に紹介したかったグループ。デビュー以来、信念を持って着実に活動してきた彼らが、誰にも似ていないサウンドで己の信じる「最高」を叩き出した大傑作。「足を取るか後世に今を引き伸ばす」という歌詞にアーティストとしての覚悟を感じる。4つ打ちに重なる16ビートのベースが、高ぶる鼓動や緊張感のある焦りを醸し出しており、ラッパー・pecoriのラップもかっこいい。
4位:Chevon「冥冥」
2021年に結成、札幌発のスリーピースバンド。2000年代からの邦楽ロックの文脈をぶち込んだようなサウンドで、さらに特筆すべきはボーカル・谷絹茉優の存在感。技術面だけでなく、類い稀なスケールを感じさせる凄みがあります。「何か始まってるな」というスケール感を感じており、数万人の前でChevonがライブをやるのもそう遠い未来ではないと思います。
川谷も「久しぶりにこんなバンドが出てきたな」と評価。
3位:Aooo「サラダボウル」
2023年結成の男女4人組ロックバンドで、1千万再生越えのボカロ曲を複数発表しているすりぃ(Gt)や、多くのヒット曲を手掛けるツミキ(Dr)という稀代のソングライターである2人を擁する20年代シーンのオールスターメンバーと言えるスーパーバンド。彼らが多感な時期に影響を受けた10年代の音楽を「サラダボウル」に詰め込んだようなサウンドが非常に“今”を感じさせます。ボカロPやネット文脈のミュージシャンながら、ボーカル・石野理子が所属していたバンド・赤い公園の影響も感じさせ、日本のロックらしいコード進行も素晴らしく、日本らしさを誇れるサウンドを持つバンドです。
2位:井上園子「きれいなおじさん」
神奈川県沿岸部を中心にライブ活動を行うシンガーソングライター。ギターを始めて3年足らずながら完全に自分の音、時間と空間を作れるアーティストだと思います。「綺麗な服着たおやじどもが今日も私に呟いた(囁いた)」という歌詞を転調しながら繰り返す、7分を超える大作ですが、何度もリピートして聴きました。好きなものを好きなように表現するという創作の根本を考えさせられた、2024年最も衝撃を受けた曲です。
1位:藤井 風「満ちてゆく」
これまでのキャリアを通して歌い続けてきたテーマと持てる技術と経験全てで包み込んでくれるような大きな愛の歌だと感じました。特にイントロはここ数年で最も美しいと感じましたが、当然イントロ以外も全てが美しく全てに意味があり、愛がありました。一切力まず、ずっと自然体でいる藤井 風の真髄に触れられるような曲です。美しいイントロのメロディをエモーショナルに流されず、ただ淡々と奏でる演奏は、伴奏といえば彼より上手い人はいないのではないかと思うほど。美しくも淡々と歌いながら、最後には肉体と魂が離れたかのような「フェイク」の技法を入れて曲を終えていく。こんなに美しい曲はありません。
(modelpress編集部)
情報:テレビ朝日
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