1月17日に開かれたフジテレビ・港浩一社長の”緊急記者会見”に注目が集まっている。
昨年末から、タレントの中居正広(52)に報じられている”女性トラブル”のきっかけとなった食事会について、フジテレビ社員が関与していたと報じられたことなどをめぐり、問題が指摘されてから初めて社長自らが説明した。
週刊誌の報道が出た直後の昨年12月27日時点で、中居と被害女性が参加した会食に当該社員は《一切関与しておりません》と、完全否定する姿勢を示していたフジテレビ。
会見冒頭、港社長は「このたび一連の報道により、視聴者のみなさまをはじめ、関係者のみなさまに多大なご迷惑、ご心配をおかけしておりますこと、および現在まで説明ができなかったことについてお詫び申し上げます」と陳謝。その上で、新たに第三者の弁護士を中心とした調査委員会を立ち上げ、事実関係や会社の対応が適切だったのか検証すると明らかにした。
同社は昨年から外部の弁護士を入れて調査を進めていたといい、聞き取りや通信履歴などから、トラブルに発展した会食に同社社員が”関与していない”との見解は維持したまま、この点についても「調査委員会の調査に委ねたい」と説明。調査の結果がまとまった段階で速やかに公表するとしている。
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一方で、具体的対応や事実関係などに関する質問には”プライバシー保護”と”調査中”を理由に、回答を控える場面が目立った。
「会見はあくまでも毎月行われる定例会見の”前倒し”という体裁で、参加が許されたのは、記者クラブ加盟社である一般紙、スポーツ紙、通信社のみ。記者クラブに加盟していないNHKと民放キー局は、各社1名の記者が“オブザーバー”としての発言権を持たない形で参加が認められただけでした。
フリーランス、週刊誌、インターネットメディアは参加自体ができなかったうえ、撮影は冒頭のスチールのみ。テレビカメラも入れないため、不祥事を起こした企業の会見で、しかも報道機関にもかかわらず”会見映像は一切なし”という異例の会見となりました」(民放キー局記者)
また、1月16日発売の「週刊文春」では、中居の女性トラブルに関与したと報じられた同局幹部社員が主催した中居との別の会食での”接待被害”を、同局の現役女性アナウンサーが告白。中居の女性トラブルの背景に、こうしたフジ社員による”接待営業”の常態化があったのではないかと指摘している。
■危機管理の専門家は「もっと早く認めた方が傷が浅かった」と指摘
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一タレントによるトラブルの粋を超え、フジテレビという組織のガバナンスが問われる事態となっている今回の騒動。会見でひと段落とはいかず、20日時点でトヨタ自動車や日本マクドナルドホールディングスなど20社超がCM放送の見送りを表明した。
窮地に陥っているフジテレビ。疑惑が報じられた後の対応について、「謝罪のプロ」こと危機管理コミュニケーション専門家の増沢隆太氏に分析してもらった。
「まず、 危機対応の観点で申し上げれば、すでに散々言われているように会見を開くのが遅すぎました。さらに、『プライバシー』と『調査を待って』ばかりで”ゼロ回答”に近く中身に乏しい、非常に悪手というか、内容的には好ましいものではなかったと思います。
社長が何かを隠しているとかではなくて、多分、現実問題として対応が難しく”手がない”のだろうと思います。とはいえ、結局これだけ大問題になってるので、本来はこうなる前に手を打たなきゃいけない。社長が認めたこと以外に新たな事実がほぼないなら、昨年内に会見を開くなど、もっと早く認めた方が傷が浅かったわけで、そこはやっぱり失敗したかなと思います」
閉鎖的な会見でフルオープンにしなかったことも批判を強める結果となったという。
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「結局、隠せば隠すほど批判を呼ぶわけで、重要なのは”何のためにこの会見をしたか”だと思うんですね。フジにとって、会見するメリットがないならする意味がないので。にも関わらず傷を浅くしたいのか、わざとクローズにしてマスコミをシャットダウンしたことはマイナスでしかありません。
別にあれだけ”ゼロ回答”を徹底するなら、開放してもよかったと思います。もちろん”面倒くさい人”も入る可能性はありますが、結局この鎮静化にはその”面倒くさい人”も含めてまとめられなければ対応できないわけで、それをいつやるかです。本来は早めにやった方が火はより小さいんですけど、それもできないということで、タイミングもやり方もダブルで悪かったと思います」
■棒に振ってしまった「最後のチャンス」
また、調査を行うのは、独立性の高い日本弁護士連合会のガイドラインにもとづく第三者委員会ではなく、外部の第三者を入れた調査委員会であることも、不信感を招きかねないと指摘する。
「実はここが今回の唯一にして最大の”逃げ道”かなと思ったんですよ。何もソリューションが提示されてない中で唯一の具体策として、自分たちだけで”なかったことにはしません”と、”第三者委員会やりますよ”と言っているのだから、もっとその重要性や意義を強調すればいいのに、なぜか歯切れが悪い。
やはり、フジ主催ではなく、例えば弁護士会に頼んで公正に調査してもらうなどと説得力のある方法でやればいいのに、あえてそれをしないから本当に公平な独立性のある調査ができるのかっていう見方をされてしまうわけですよね。そういう説得力のあるソリューションを提示できなかったから、せっかく作るのに調査委員会が評価もされないし、調査結果もインチキ臭く見えちゃいますよね。最後のチャンスがここだったのに、それを棒に振っちゃったなという気がします」
今後、フジテレビができることは何があるのだろうか。
「港社長というより、経営陣そのものの感覚がまだ古かったのだと思います。経営責任がここまで広がることを想像できず対策を取ってなかったことが問題なので、社長含めて”経営陣総取っかえ”に近いことが起きない限り、収まりがつかないと思います。
テレビ局は何よりもスポンサーを気にするわけで、スポンサーが実際に手を引いちゃったわけです。 ここまでいったらもう他に打つ手がないので、こうなる前にやっときゃいいのにというところはありますね。少なくとも問題発覚から1年半放置してきた”感覚の鈍さ”が問題ですよね」
一方で、港社長に同情できる部分もあるという。
「ここまでは全面的にフジテレビを批判しましたが、ちょっとだけ港社長の肩を持ちたいというか、立場を代弁してあげたいなと思ったのが、あの方は元々制作畑出身で、番組ディレクターやプロデューサーをやってましたよね。だから演者の方との距離が近いと思うし、良くも悪くも”身内的な感覚”があったと思います。
つまり、もっとプロの経営者だったら、初期の段階で中居さんをバサッと切れたと思うんです。別に他の人でも視聴率は取れるし金も稼げる。代わりの効く中居さんを切っても従業員を守るみたいなことがもっと早くから割り切れるのかなとも思うんですよ。ちょっとその辺はかわいそうかなと思います」
とはいえ、実際問題としてどのようにスポンサーを納得させていけばよいのだろうか。
「納得させるには、経営責任を取らないといけませんので、 まず現執行部、社長、取締役の総退陣と、私は多分”相談役”まで行くと思います。そこまでしないと、業界の人たちはともかくとして、海外のアクティビストや株主は納得しないのではないでしょうか。
関与が指摘された幹部社員と社長だけしっぽ切りするようなお手盛りの調査報告じゃなく、フジテレビが”今1番やりたくないこと”ができたら、もしかするとそれが次の最後のチャンスになるかもしれません。”謝罪は負け戦”って言ってますけど、早くからちゃんと割り切れる人が結局ダメージを減らせるわけで、やっぱり”背に腹は変えられない”んですよね」
フジに残された道は険しいものになりそうだーー。
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