1月24日(金)、2025年WRC世界ラリー選手権の第1戦『ラリー・モンテカルロ』のデイ2ではスペシャルステージ4から9の走行が行われ、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)のセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合首位に立った。TGR-WRTのレギュラーである日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、総合7番手で大会2日日を終えている。
前日のデイ1に行われた3本のナイトステージで戦いの幕が開けた2025年のラリー・モンテカルロ。本格的なフルデイ初日となる2日目は9時31分より、気温5度のなかで最初のステージSS4『サン・モーリス/オーベサーニュ 1』(18.68km)からアタック合戦が始まった。
タイヤ選択では、最高峰クラスの半数のドライバーはスタッドタイヤを4本にスーパーソフトを2本を選択。しかし、オット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)はスタッド5本のみ、セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)はスタッド5本/スーパーソフト1本、ティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)はスタッド4本/スノー2本、グレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマ・ラリー1)はスタッド2本/スーパーソフト2本/スノー2本という選択をしている。
■現王者ヌービル、優勝戦線から一歩後退
この日最初のSS4は、集落の間を抜けて行くターマック(舗装路)。ここ数年は乾いた路面がメインの“ドライ・モンテカルロ”が続いていたが、今年のコースには朝日を反射して光るブラックアイスやインカットによって泥が撒かれたエリアが散見され、デイ2は目の覚めるような難ステージから幕が開けた。
そんななかでも、各クルーはマシンを左右に振り回しながら果敢にペースを見出していき、まずはTGR-WRTのカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)がベストタイムをマーク。この日最初のステージウイナーとなる。
前日は総合6番手に沈み、「新しいタイヤと自分のドライビングスタイルが合っていないように思う」と、フィーリングが芳しくない表情を見せていたロバンペラだが、早くもアジャストしてタイムに繋げてきた様子だ。さらにステージ2番手にはMスポーツ・フォードWRTの新エースであるミュンスターが続き、最高峰2年目の成長を感じさせる走りを見せた。
そして、2.0秒差となっていた総合首位争いにも動きがあり、TGR-WRTのエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)がヌービルをパスしてラリーリーダーの座を奪っている。
続くSS5『サン・リジェ・レ・メレーズ/ラ・ベティ・ヌーヴ 1』(16.68km)については、スタート前にしたタイミングで救護を要する観客が確認されたため、サポートのためにメディカルカーが出動したとの公式アナウンスがあり、走行がキャンセルとなる。
そのため、一行はそのままSS6『ラ・ブレオール/セロネ 1』(18.31km)へと向かい、現地時間11時59分より気温8度/路面温度4度のコンディションで走行が始まった。ここのSS6も、峠の日陰域ではブラックアイスの残る一方でハイスピードな集落道路も見られるなど、各車は柔軟かつ繊細なペースコントロールが求められる。そんななか、現王者ヌービルに悲劇が起こった。
ダウンヒルセクションの急な右ヘアピンコーナーへ差し掛かったヌービル車は、一段落ちたイン側にタイヤを落としたことで姿勢を乱し、減速不足でアウト側の石垣にヒット。
その結果左リヤサスペンションを破損したヌービル車は、明後日の方向を向いたホイールを引きずりながらもなんとか残りステージを走破し、1分45秒ほどの遅れとなってしまった。
さらに、続くタナクも中速コーナーでアンダーステアを原因にオーバーランしてリヤ周辺を派手に破損。幸いにも駆動系は無事だった様子で、タイムチェック後は足早にミッドデイサービスへと向かう。
またオジエも似た動きでアウト側の土を豪快に巻き上げるシーンが見られたが、こちらは間一髪で痛手は避けたようだ。
そんな難関極まるSS6をもっとも勇敢に攻め切ったのは、ヒョンデのアドリアン・フルモー(ヒョンデi20 Nラリー1)。暫定ベストのオジエを7.9秒突き放し、今大会初&ヒョンデ移籍後初のステージウインを手にしてみせた。その後、フォードのミュンスターが4.2秒差で滑り込み、この日2度目のステージ2番手タイムを刻んでいる。
■この日初走行のSS8でさらなる関門
フランス南部のギャップにてサービスを受けた各クルーは、15時23分よりループステージのSS7『サン・モーリス/オーベサーニュ 2』(18.68km)をスタートした。
陽の昇った午後でも、気温9度/路面温度5度と未だ冷えたままのモンテカルロ。タイヤチョイスは、ミュンスターを除く9台がスーパーソフト4本/スタッド/2本を選択し、ミュンスターはスタッドの代わりにスノー2本を選んだ。
まずは、昼のサービスでクルマの修復を終えたヌービルからアタックを開始する。タナクも無事にラリーを継続しており、ヒョンデのエース2台は遅れを早々に取り戻したいところだろう。
そんなSS7で最速となったのは、暫定総合首位に立つエバンス。さらにロバンペラが2番手に続き、ふたたびトップを追いかけるヌービルが3番手につける。その後ろにはオジエ、勝田と続くタイム順となり、サービスを経た午後はトヨタ勢が調子を上げてきた雰囲気だ。
続いて行われたSS8『サン・リジェ・レ・メレーズ/ラ・ベティ・ヌーヴ 2』(16.68km)は、午前中にキャンセルとなった区間のためこのタイミングが1走目となる。この日はこれまで、アイスと泥の影響でグリップの低いステージが続いてきたが、このSS8は特定の区間にもっとも滑るアイスバーンが張っていた。
各クルーは当該区間にさしかかると、マシンをコースにとどめることを最優先にシフト。それぞれ一気に速度を下げてマシンをコントロールし、なんとかタイムロスを抑えて通過するように試みていたなか、エバンスは首位の重圧からかハーフスピンを喫してしまい約15秒をロス。惜しくも総合首位の座をオジエに明け渡してしまった。
この日最後のSS9『ラ・ブレオール/セロネ 2』(18.31km)は、午前中にもっとも荒れたステージの再走だ。現地17時34分の黄昏時に、高い緊張感のままヌービルからアタックが始まった。
ただ、現王者は午前のミスを完全に払拭することはできず、全く同じ区間でオーバーランを繰り返してしまった。しかしその原因は、手前で発生した左フロントタイヤのパンクにあったようで、ヌービルは残り区間を時速100km弱で走破している。
一方、SS8で首位に立ったオジエはここでスパートをかけ、この日2度目のステージウインを堂々飾ってみせた。これで総合2番手エバンスに対するリードは12.6秒となり、2台のトヨタに迫る総合3番手のフルモーはエバンスと1.6秒差にまで迫っている。
WRC2クラスは、シュコダ・ファビアRSラリー2を駆るニコライ・グリアジンがつねにダントツの速さを見せているが、今回はポイント対象外なのでクラス順位に含まれず。さらに、この日の最終ステージではヨアン・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)が総合順位でグリアジンを上回り、名実ともにWRC2クラスの暫定トップに立った。続くクラス2番手はエリック・カミリ(ヒョンデi20 Nラリー2)、クラス3番手はレオ・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)となっている。
明日のデイ3はSS10からSS15までの全6本を予定。スペシャルステージの総走行距離は131.40km、リエゾン(公道区間)も含めた総距離は483.65kmだ。