日没前後に導入されていたフルコースイエロー時の様子 現地時間1月25日、アメリカ・フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第1戦『ロレックス24・アット・デイトナ』(デイトナ24時間レース)の決勝が始まった。
スタートから12時間が経過した時点では、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの7号車ポルシェ963(フェリペ・ナッセ/ニック・タンディ/ローレンス・ファントール)が実質的にレースをリードしている。
■太田格之進がトップ快走も……
第63回を迎えたデイトナ24時間。今大会では、WEC世界耐久選手権でトヨタGAZOO Racingのドライバーとチーム代表を務める小林可夢偉が40号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・ウェイン・テイラー・レーシング)で2019・2020年の連覇以来の総合優勝を目指してスポット参戦。
さらに、これまで国内のトップカテゴリーを戦ってきた太田格之進が、93号車アキュラARX-06(アキュラ・メイヤー・シャンク・レーシング)でIMSAに初挑戦しており、最高峰GTPクラスでふたりの日本人が総合優勝を争うこととなった。
また、GTDクラスでは21号車フェラーリ296 GT3(AFコルセ)から、ケイ・コッツォリーノもエントリーしている。
晴天の下、名誉スターターに任命されたHRC渡辺康治社長のグリーンフラッグを合図に、レースは13時40分(日本時間翌3時40分)にスタート。序盤はポールポジションの24号車BMW Mハイブリッド V8(BMW Mチーム RLL)が順調にリードを拡大していった。
ミルコ・ボルトロッティがドライブする63号車ランボルギーニSC63(アウトモビリ・ランボルギーニ・スクアドラ・コルセ)は1時間目の終わりに予定外のピットストップを強いられると、後に水圧の問題から早期リタイアを喫することに。
スタートから1時間半が経過しようとする頃、予選順と同じ2番手を維持していた93号車アキュラは、ニック・イェロリーから太田へとドライバーチェンジ。太田はアウトラップではターン5でコースを外れてしまうも、ほとんどロスなくコースへと復帰し、その後は安定してラップを重ねた。首位を走る24号車BMWがピット作業でタイムロスし、さらに作業違反のペナルティが課せられると、太田の93号車が総合トップへと浮上する。
太田はその後、フルコースイエロー中の全車一斉ピットストップが終わると順位を下げ、代わって31号車キャデラック(キャデラック・ウェーレン)が首位に立つ。太田の93号車はこのイエロー中にもう1度ピットへと向かい、さらに順位を下げた。
リスタートの混戦では、31号車キャデラックを7号車ポルシェのタンディがオーバーテイクし、総合首位に躍り出る。
日没が迫る4時間経過直後、太田から93号車アキュラを受け継いだアレックス・パロウが、インフィールドからオーバルへと出るところで失速しストップ、フルコースイエローが導入される。93号車はマーシャル車両により牽引され、ガレージへと戻されることとなった(※車両回収後の修復、復帰はルール上可能)。リヤサスペンションにトラブルが生じた模様で、修復作業に入ると、メカニックたちは約1時間ほどで93号車をトラックへと戻している。
■可夢偉の激走と、デレトラズのクラッシュ
この夜を迎えるタイミングで、今回はアレックス・リンの病欠により3名体制を採る40号車キャデラックには、可夢偉が乗り込んだ。
グリーンになると可夢偉は周囲のマシンとは段違いのスピードを見せ、前を走るBMW、アキュラ、ポルシェ、31号車キャデラックらを次々とオーバーテイクし、瞬く間に2番手へとポジションを上げる。イエロー後にトップに立った6号車ポルシェに迫っていくと、トラフィックが絡むなかでこれを攻略し、可夢偉の40号車が首位に躍り出た。FOR THE LEAD!!!
GTD車両のオイル処理のためのイエローを挟み、可夢偉は続く一連のピット作業でいったんは順位を下げるも、6時間経過前後では上位陣のオーバーテイクを繰り返し、再びトップを奪い返す。可夢偉は7時間経過を前に、ルイ・デレトラズへと40号車を託した。
7時間経過直後、24号車BMWのラファエレ・マルチェッロはターン1への進入でデレトラズを攻略し、トップの座を奪う。直後にGTDプロクラスの007号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3から左リヤタイヤが脱落し、イエロー導入。このイエロー中の一斉ピットで24号車BMWはリヤブレーキ交換作業を行い、ポジションを下げた。
31号車キャデラックを先頭にリスタートを迎えたが、ターン1を立ち上がったところでマルチクラッシュが発生する。リヤをスライドさせ、バリアに接触した40号車キャデラックのデレトラズがコースをふさぐ形でストップした影響で、後続のLMP2クラス以下の複数車両に混乱が生じた形だ。
プラット・ミラー・モータースポーツ73号車、ユナイテッド・オートスポーツUSA2号車、タワー・モータースポーツの8号車、パフ・モータースポーツの9号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 エボ2、ポール・ミラー・レーシング48号車BMW M4 GT3エボらが、このクラッシュに巻き込まれ、マシンを大きく損傷している。
■31号車キャデラックがオーバルでクラッシュ
現地時刻22時には恒例の花火が上がり、その後は31号車キャデラック、7号車ポルシェらが中心となって首位を争うが、度重なるイエローもあって10時間経過(残り14時間)時点でもGTPはリードラップに8台の車両が生き残っており、この8台全車に勝利の可能性がある状況で深夜帯を迎えた。
この10時間経過直前のリスタートでは24号車BMWのフィリップ・エングが31号車キャデラックをパスしてトップに立ち、10号車キャデラックのフィリペ・アルバカーキが続いていたが、ほどなくして31号車キャデラックのフレデリック・ベスティがオーバル走行中に突如姿勢を乱し、セーファーバリアへとハードヒット、マシンはフロントを中心に激しく損傷した。ベスティはなんとか自走でマシンをピットへ運ぼうとするも叶わず、オフィシャルの手によってガレージに戻されることとなった。
12時間目に入って先頭に立ち、徐々にギャップを広げていったのは7号車ポルシェのフェリペ・ナッセ。これを数秒の差で6号車ポルシェ、60号車アキュラらが追う展開となり、レースはハーフウェイを迎えた。
トラブルのあった太田の93号車は、約40ラップ遅れで走行を続けている。12時間経過時点では太田がステアリングを握っており、この時点での93号車のベストラップも記録している。
イエローによりギャップが度々リセットされていることもあり、LMP2以下のクラスでもデイトナらしい僅差の戦いが続いている。
全車がオレカ07・ギブソンというパッケージで争うLMP2クラスでは、前述の40号車キャデラックを発端とした事故で上位勢の数台が脱落するなか、12時間経過時点ではユナイテッドASの22号車陣営が首位、インターユーロポル・コンペティションの43号車、AOレーシングの99号車と続いている。
GTDプロでは夜に入って4号車シボレー・コルベットZ06 GT3.R(コルベット・レーシング・バイ・プラット・ミラー・モータースポーツ・レーシング)、64号車フォード・マスタングGT3(フォード・マルチマチック・モータースポーツ)ら、アメリカ勢が上位を盛り上げるなか、ポール・ミラー・レーシングの1号車BMWがトップに立ち、AOレーシングの77号車ポルシェ911 GT3 R、65号車フォードが続いている。
GTDクラスは前半戦終盤、70号車フェラーリ(インセプション・レーシング)と120号車ポルシェ(ライト・モータースポーツ)がテール・トゥ・ノーズの激しいトップ争いが展開されている状況だ。
ケイ・コッツォリーノ、リル・ワドゥが加わる21号車フェラーリは、クラス7番手と好位置につけている。
レースはこのあと朝を迎え、現地時刻13時40分(日本時間27日3時40分)にチェッカーを迎える予定だ。
《追記》レース後半レポートはこちら(https://www.as-web.jp/sports-car/1174437)