1月25日から26日にかけて、アメリカ・フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで『ロレックス24・アット・デイトナ(デイトナ24時間レース)』が開催された。ホンダの北米ブランドであるアキュラは、同レースに2台のLMDhカー『アキュラARX-06』を投入し、このうちアキュラ・メイヤー・シャンク・レーシング・ウィズ・カーブ・アガジャニアン(MSR)の60号車が総合2位入賞。アキュラはIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の開幕戦で、5年連続となる表彰台を獲得している。
25日土曜の13時40分に戦いの火蓋が落とされた、伝統の24時間レースを6番手からスタートした60号車アキュラは、レギュラードライバーのトム・ブロンクビストとコリン・ブラウン、助っ人として招聘されたスコット・ディクソン、フェリックス・ローゼンクビストの4名によってドライブされた。
今年、ウェザーテック選手権のトップクラスに復帰したMSRの一台はレース前半、優勝したポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)を相手に好勝負を繰り広げ、長丁場のレースで39周をリード。中盤から終盤にかけては、未明のコースオフとこれにともなうノーズ交換によるタイムロスが響きトップ集団から後れを取ったものの、最終盤にはふたたび優勝争いに加わった。
セーフティカーランからの最後のリスタートを4番手で迎えた60号車は、ライバルがアクシデントで後退したことで3番手に順位を上げると、最終スティントを任されたブロンクビストがハイペースで上位のマシンを追い上げていく。やがてポルシェの一台に追いつくと、これをコース上で攻略して2番手に。逆転優勝の可能性もあったなか、最後は時間切れとなり1.335秒およばずの2位フィニッシュとなっている。
一方、もう一台の93号車アキュラはMSRからのエントリーとなるものの、ホンダ・レーシング・コーポレーションUSA(HRC US)のセミ・ワークスカーとしてシリーズに参戦。今回のデイトナでは、ニック・イェロリーとレンガー・バン・デル・ザンデのペアに、アレックス・パロウと日本人ドライバーの太田格之進が加わった。
フロントロウの2番手からスタートを切った93号車は、序盤に合計19周をリードする速さを見せた。しかし、レース開始から4時間が過ぎたころサスペンショントラブルに見舞われてしまう。その後ガレージで修復作業を受けたマシンはふたたびコースへと戻り、残りのレースで力強い走りを披露した。最終的には総合15位/GTPクラス8位となり、トップと40周遅れながら貴重なポイントを獲得している。
「HRCとMSRが新たに組んだ最高峰のレーシングチームとしての初陣だった。我々の素晴らしいメンバーたちは全員が一丸となり、本格的に活動を始めてからたった9週間で、設備や機材を整えた」と語るのは、HRC USのデイビッド・ソルターズ社長。
「この壮大な努力の末、世界でもっとも過酷で名誉あるレースのひとつであるデイトナ24時間レースに挑み、(93号車が)予選で2番手、そして決勝でも(60号車が)2位という結果を収めることができた」
「デイトナでの2週間で得られた学びは非常に大きなものだ。世界トップレベルのライバルたちと戦い、初陣でここまで勝利に迫ることができたのは、我々のメンバーたちの素晴らしい努力が報われた証だと考えている。チームの皆は素晴らしい仕事をしたと思う。セブリングでは、さらに上を目指して頑張りたい」
そのセブリングはIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の第2戦に設定されているラウンドで、シーズン最長のデイトナに次ぐ12時間で争われる耐久レースだ。開催地はフロリダ州に位置するセブリング・インターナショナル・レースウェイ。今年で73回目となる同イベントは3月13〜15日に開催される。
以下、アキュラ・メイヤー・シャンク・レーシング・ウィズ・カーブ・アガジャニアンのドライバーコメント全文。
●トム・ブロンクビスト
60号車アキュラARX-06(2位)
「2位とはいえ、素晴らしい成果だったと思う。正直、『これはとても長い24時間になるな』と思った瞬間もあった。序盤はペースが上がらなくて厳しい展開だったし、ポルシェ勢がすごく速かった。でも、チームが本当に素晴らしい仕事をしてくれて、最後には良いポジションで戦うチャンスを作ってくれた」
「僕も最後は全力で攻めて、ポルシェの1台をなんとか抜けたのだけど、もう1台は少し手が届かなかった。あと何周かあれば……と思ったが、少し時間が足りなかった。とはいえ、これでシーズンの良いスタートが切れたし、ポイントも稼げたのは大きい」
「MSR、アキュラ、HRCの皆には本当に感謝している。今年はこのプロジェクトにたくさんの人が関わって、ものすごい努力とリソースを注ぎ込んでいるんだ。そういう意味でも、今回の結果はいいスタートになったと思う。次のセブリングに向けて、この調子で突き進んでいくよ」
●コリン・ブラウン
60号車アキュラARX-06(2位)
「素晴らしい結果だ。シーズンのスタートとして最高だと言えるし、HRCとアキュラMSRとの新しいプロジェクトの始まりとしても上々の滑り出しだ。2位は素晴らしい結果だし、ここデイトナはとても重要な場所だからね」
「ただ、勝利こそがすべてなので、『ああ、悔しい』という気持ちも正直ある。それでもチーム全員が本当に素晴らしい仕事をしてくれたと思うよ。フェリックスとスコットも素晴らしい走りを見せてくれましたし、トムは最後に圧巻のパフォーマンスを披露してくれた」
「今回の結果は、この新しいプログラムの始まりとしては非常に良いものだと思う。今後、さらに洗練させ、発展させる基盤ができて、これからのシーズンが楽しみになる良いスタートになった。この調子で進んでいきたいね」
●スコット・ディクソン
60号車アキュラARX-06(2位)
「楽しいレースだった。ただ、確かに難しい場面もあったし、ミスも完全には避けられなかった。それはやはり理想的ではない。とはいえ、アキュラ、ホンダ、そしてMSRが戦略面でできる限りのことをしてくれた」
「ただ、タイヤのデグラデーション(劣化)が少し厳しかった。とくに序盤にタイヤを2スティントで使用しなければならなかったときは、本当に大変だった。それでも、トムが最後に素晴らしい仕事をしてくれたので、今回の結果は僕たちが出せたベストだったと思う。あと少し時間があれば、もっとチャンスがあったかもしれないけどね」
●フェリックス・ローゼンクビスト
60号車アキュラARX-06(2位)
「60号車にとってはなかなか良い終わり方だった。この手の大きなイベントでは、2位は少しほろ苦い感じがするが正直なところ、途中の状況を考えれば、この結果には満足できる」
「これからシーズンを戦い続けるチームにとっても、良いポイントを稼げたのは大きいと思う。最後のトムの走りは本当にすごかった。まさに鬼気迫るスティントで、見ていて心臓がバクバクしたよ! チームメイトやメカニック、クルー、エンジニア、みんなの努力を本当に誇りに思う」
●ニック・イェロリー
93号車アキュラARX-06(15位)
「僕たちのクルマは、残念ながら序盤でリヤサスペンションのトラブルが発生してしまった。それでもペース自体はすごく良くて、予選では2番手につけて、最初の数スティントではそのポジションをしっかりキープできていた」
「チームが頑張ってマシンを修復してくれたので、40周遅れだったが、コースに戻ることができた。そこからは、60号車をサポートしつつ、できるだけ前のポジションに上がることを目指して走ったよ」
「アキュラMSRとHRCの素晴らしい仕事ぶりには本当に感謝している。まだまだシーズンはこれからだし、もっと良い結果を目指して頑張っていけると思う」
●レンガー・バン・デル・ザンデ
93号車アキュラARX-06(15位)
「60号車が最後まで走り切り、2位という素晴らしい結果を残せたことは本当に嬉しく思う。これはチーム全体の努力の成果だと感じている。ただ、僕たちのレースが早い段階で終了してしまったことは、やはり悔しい」
「しかし、同じくトラブルを抱えたチームの中で、僕たちは最速でマシンを修復し、コースに戻すことができた。そのおかげで、他チームより多くのポイントを稼ぐことができたのは良かったと思う」
「なぜサスペンションが壊れたのかを調査する必要があるが、それ以外にも今回のレースで多くのことを学んだ。このマシンの扱い方や、MSRやHRCとどのようにチームを運営していくべきかなども含めて学びがあった。結果には満足していないが、今日得られた経験や教訓には誇りを持てると思う」
●アレックス・パロウ
93号車アキュラARX-06(15位)
「序盤でメカニカルトラブルが発生してしまい、93号車にとっては非常に残念な一日となってしまった。とくに、それが僕たちのミスではなかったという点が悔しい。時にはチームやドライバーのミスで、どうすれば良かったかを振り返ることができるが、今回はただのトラブルだったため、僕たちにできることは何もなかった」
「本当に残念な結果ではあるが、またコースに戻ることができて良かったと思っている。僕自身にとってもチームにとっても、多くの周回を走れたことは次戦セブリングに向けてプラスになるはずだ」
「また、最後に(60号車の)トムの戦いぶりを見られて嬉しかった。あと少しで勝てそうなところまで行ったので、それが次のレースに向けてさらにモチベーションを高めてくれる。これからのレースがとても楽しみだ!」
●太田格之進
93号車アキュラARX-06(15位)
「アキュラ・メイヤー・シャンク・レーシングの一員としてデイトナ24時間に出場できたことは、本当に光栄でした。たくさん周回をこなして、スティントはおそらく6回くらい走ったので、今はとても疲れています。でも、自分ではとてもクリーンなレースができたと思っていますし、その点は満足しています」
「初めてのレースでリードすることができたのも、とても特別な体験でした。クルマの速さは分かっていましたし、もちろん勝ちたかったです。でも、このレースは厳しいものですし、残念ながら僕たちのクルマは壊れてしまいました」
「それでも、次回はワトキンス・グレンでこのチームに合流することを今から楽しみにしています。こうした機会を与えてくれたアキュラMSRとHRCに心から感謝しています」