“40周遅れ”でも得られた収穫。太田格之進、初挑戦のデイトナ24時間は「トラフィック処理がかなり過酷」

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2025年01月27日 16:50  AUTOSPORT web

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93号車アキュラARX-06の(左から)ニック・イェロリー、太田格之進、アレックス・パロウ、レンガー・バン・デル・ザンデ 2025年IMSAデイトナ24時間
 1月25〜26日にアメリカ・フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイにて行われたデイトナ24時間レースで、日本の太田格之進がIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権にデビューを果たした。

 これまで日本のトップカテゴリーで戦ってきた太田は昨年末、世界への挑戦を発表。IMSAの最高峰GTPクラスの3レースにLMDh規定のプロトタイプ『アキュラARX-06』を駆っての出場が決定し、このシーズン最大の一戦が初陣となった。

 チームはデイトナ優勝経験もあるメイヤー・シャンク・レーシング。ドライバーはニック・イェロリー、レンガー・バン・デル・ザンデというスポーツカーでの経験豊富なレギュラー陣に加え、インディカー・シリーズを3度制したアレックス・パロウが加わる豪華ラインアップでのデイトナ参戦となった。

■序盤にトップ走行も、サスペンショントラブルが襲う

 太田は正式発表前の11月のテストで、デイトナを初走行。その後も、開幕戦前週の公式テスト『ロア・ビフォア・ザ・ロレックス』や、数々のシミュレーター・セッションで本番のレースウイークに備えてきた。

 予選ではイェロリーのドライブにより、93号車アキュラARX-06は2番グリッドを獲得。ロア・テストからレースウイークのプラクティスにかけても順調にセットアップが進められており、決勝を前に太田は「充分に優勝が狙えるだけの力が、我々にはあると思っています」と、確かな手応えを口にしていた。

 迎えた決勝ではイェロリーがスタートを担当し、太田は2番目にステアリングを握ることとなった。ここでは先頭車両のペナルティもあり、太田は初めてのデイトナで堂々トップを走行。2スティントをこなしてパロウにつないだ。

 このまま優勝争いを続けるかと思われたが、93号車はこのパロウのドライブ時に、突如リヤサスペンションのトラブルに見舞われる。コース上にストップしたマシンはオフィシャルの手によってガレージに戻され、チームは1時間ほどの修復を経て93号車をコースインさせた。

 大幅な周回遅れとなりながらも、この先のシーズンに向けたデータ取りの意味も含め、93号車は1周3.56マイルのコースを周回し続け、太田は深夜に再び2スティント、そして朝にも2スティント相当のドライブを担当した。

 93号車の最終リザルトは、トップから40周遅れのGTPクラス8位。僚友60号車はコースオフなどがありながらも、優勝したポルシェから1.3秒差の2位となっており、93号車もトラブルと長時間の修復作業がなければチェッカーまで優勝争いを続けられていた可能性は高かった。

 レースを終えた太田は、「(タイヤのウォームアップが難しい)アウトラップ以外には、やはりトラフィック処理がかなり過酷でした」と、4クラス・61台が出場するデイトナのトラフィックのなかで走る厳しさについて語った。

■ウインカーは出してもらえない

「ストレートではGT3よりも50km/hくらい速いのですごい速度で追いつきますが、ブレーキングはGT3やLMP2の方が奥ですし、低速コーナーは抜くのが非常に難しいので、いかにタイムをロスせずに走るかが難しかったです」

「スーパーGTでの経験がかなり活きたなと思いましたが、コース幅が狭く、日本みたいにインジケーター(方向指示器/ウインカー)を出してくれるドライバーはほぼいないので、精神的にかなりタフでした」

「バンクでは前のGT3がサイド・バイ・サイドで走っていると右側の壁ギリギリから抜いていかないといけないので、ちゃんと気づいてくれているか心配しつつ、全開のまま抜いていくのはスリリングでした」

 そんなタフな状況のなかでも、大きなミスをすることもなく、耐久レースでもっとも重要な“チェッカーを受ける”という任務に対して、しっかりと力を発揮した太田。今回のデイトナ参戦で得られたことを問うと、「かなり多くて、何から言えばいいのか悩むのですが」と前置きした上で、次のように答えた。

「まずはやはりF1やインディカー、そしてWECやIMSAの舞台で結果を残してきた選手と真剣勝負するということで、将来に向けてさまざまな部分で刺激を受けています」

「ただ速く走ることだけでなく、さまざまな側面から行うマシンのセットアップや、100人規模で関わるエンジニアやメカニックとチークワークを高めることを学ぶことは、今後に間違いなく活きる経験だと思います」

「GTPはドライビングもかなり繊細で難しいので、この経験が日本のレースでより強いレースができることにつながることを期待しています」

「自分というドライバーをイチからチームやアメリカのレースシーンにアピールすることはある意味『挑戦』ですが、それがすごく楽しくて、これからのレースにワクワクしています」

 多くの収穫とともにIMSAデビュー戦を終えた太田はこのあと、6月のワトキンス・グレン6時間、そして9月のインディアナポリス6時間に、アキュラ・メイヤー・シャンク・レーシングのドライバーとして出場することが発表済み。

 また、今季並行参戦するスーパーフォーミュラとはバッティングしないビッグイベントとして、3月の第2戦セブリング12時間などでは、LMP2クラスからのIMSA出場も有力視されている。今後、太田がアメリカの耐久レースでさらなる活躍を見せることを期待したい。

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