森永卓郎さんが残した最後の言葉、フジテレビ問題に言及「それが建設的な方向に動いているのか」

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2025年01月30日 17:00  日刊スポーツ

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日刊スポーツ

経済評論家の森永卓郎さん(20年6月撮影)

がん闘病中だった経済アナリスト森永卓郎(もりなが・たくろう)さんが28日午後1時33分、原発不明がんのため、埼玉・所沢市内の自宅で、67歳で亡くなった。


森永さんは病魔と闘いながら最後の最後まで仕事を続けた。天国へ旅立つ前に、最後のメディア出演となった27日放送の文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(月〜金曜午後1時)には埼玉県内の自宅からリモートで生出演。タレントの大竹まこと(75)、阿佐ヶ谷姉妹との掛け合いでは、フジテレビの問題を引き合いに、人と人がいがみ合い、ののしり合い、ギスギスした世の中になっていることを懸念してリスナーへ向けて大切な言葉を残していた。


森永さんは同番組の対談コーナー「大竹のもっと言いたい放題」で、「きょうは楽しい社会とは何なのかというお話をしたい。石破総理が(24日の)施政方針演説の中で『楽しい社会をつくるんだ』と言ったときに、多くの国民が『何ワケのわかんないこと言っているの?』って思ったでしょう。かくいう私もそうでした」と切り出した。


「ただ、ここに来てあらためて思うのは、案外それ(石破さんの主張)が正しいのではと思い始めている。なぜかというと、今、世の中で起こっていることは、社会を分断して、みんなで弱っているほうを袋だたきにするというのを楽しみにしている人が実は多いのではないか」と問題提起した。


森永さんの最後のメディア出演は27日午後1時40分ごろから6分間のコーナーだった。当日は午後4時から東京・お台場でフジテレビの会見が予定されていた。森永さんが亡くなったのは翌28日の午後1時33分。日をまたいで深夜2時すぎまで続いたフジテレビの10時間超の会見内容を把握していたかは分からない。


森永さんは続けた。「フジテレビの問題もそうなんです。確かに悪いことをしたのは、ものすごい悪いんですけど、ただ、だからといって、そこで一部の人たちをボッコボコにすることによってストレスを発散するような社会を本当に良い方向なのかと思う。世界で見ても同じなんです。社会を分断してトランプが『移民が悪いんだ』『あいつらのせいで世の中がボロボロになっている』という。それが建設的な方向に動いているのかというと、そうではないと思う。こういうことをやって報復の連鎖になると本当に社会はダメになっちゃう」と憂慮した。


森永さんは石破首相の発言を引き「偶然かもしれないが、かつてフジテレビは『楽しくなければテレビじゃない』というキャッチフレーズを打ち出した。当時は本当にテレビは楽しかったんです。いまのようにギスギスした文化じゃなかった。もう一度、どうしたらみんなが楽しい社会、楽しい文化を追求できるのかというのを今やっぱり問い直さないといけないと思う。そういう意味でもエンターテインメントの果たす役割ってすごく大きいと思う。私も隅っこで発言しているが、エンタメは別に何の役にもたたない。ご飯を食べるという意味では。そういう時代だからこそ、楽しめる社会をつくるために(エンタメは)大きな貢献ができるのではないかという気がして仕方がないんですよね。我々は何のためにこの世に生まれてきたのか、私は人を袋だたきにするために生まれてきたんじゃないんだと思う。そこをちっとも議論しない社会というのはあまり良くないと強く思っています」と言い残した。


約6分間の最後の尺で語った森永さんの言葉は重い。CMに入る間際、大竹が「お元気で〜。来週もよろしくね」と呼びかけ、阿佐ヶ谷姉妹の2人は「森永先生お大事になさってくださ〜い」とパソコンの画面に手を振った。森永さんは「は〜い。ありがとうございます」と、かすれた声で返答を絞り出した。

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