メルセデスF1のチーム代表トト・ウォルフは、いつも言葉の使い方が巧みだ。そして、ルイス・ハミルトンがフェラーリの赤を身につけて初めて公の場に姿を現した時の彼の反応も例外ではなかった。
大きな注目を集めた7度のF1世界チャンピオンのスクーデリアへの移籍は、ほぼ1年前の2024年シーズンが始まる前に発表された。それにより、F1で圧倒的優位の時代を定義したハミルトンとメルセデスの12年間のパートナーシップに終止符が打たれることになった。
しかし先週、ハミルトンが新しい環境に落ち着き、フェラーリのクルーと会い、フィオラノのコースに行って2023年型マシンに乗り込むと、ウォルフは移籍が現実であることを理解した。
■たとえるならば
マラネロで正装したハミルトンの画像がソーシャルメディアにあふれるなか、メルセデスのウォルフは奇妙なほど個人的なたとえ話をしていた。
「そうだね、穏便に離婚してすべてがうまくいき、その後元の妻が新しい友だちと一緒にいるのを初めて見るような感じだ」とウォルフは『Sky Sports』に語った。
当初のショックにもかかわらず、その後もハミルトンと連絡を取り合っていたウォルフは、その瞬間の純粋な影響をすぐに認めた。
「私は本当に彼のことをうれしく思っている。彼はそれらの写真を象徴的なものにしていたし、とても素晴らしいものが公開されており、さすがルイスだと彼に伝えた」
一方ハミルトンは、今回の移籍について、子どもの頃からの“夢”がようやく実現したものだと表現し、メルセデスで達成した多くの功績とともに大切にしていくと語った。
■“F1の大ヒット”
そして、この歴史的な組み合わせを喜んだのは彼だけではなかった。レッドブルF1のチーム代表クリスチャン・ホーナーも、ハミルトンのフェラーリでの冒険はスポーツ界にとって大きなヒットになると発言した。
「写真をいくつか見たが、彼に似合っていると思う!」とホーナーは語った。
「これはF1にとっては素晴らしいことだと思う。フェラーリに乗ったルイス・ハミルトン……まさに大ヒットだ。つまり今年は新たな動きがあり、とてもエキサイティングになる可能性があると思う」
ウォルフはほんの一瞬の間、感傷的になったかもしれないが、すぐに前を向いた。メルセデスはハミルトンのシートを埋めるにあたって、2025年にジョージ・ラッセルのパートナーとなる、評価の高い新人ドライバーのアンドレア・キミ・アントネッリに信頼を寄せている。
「我々は新たな状況に非常に興奮していると思う」とウォルフは述べた。
「ルイスと過ごした12年間は素晴らしいものだった。ジョージはここ数年、最高のパフォーマンスを見せてきた」
「今ではキミが登場している。彼は才能にあふれた若き獅子であり、これから学ぶ必要がある」
ハミルトンが新たな冒険に乗り出す一方で、メルセデスは新たな時代に向けて準備を進めている。離婚は友好的なものだったかもしれないが、他の有名人の離婚と同様に、次の章では誰が成功するのか、世界は注目するようになるだろう。ひとつ確かなことは、トト・ウォルフは気持ちを切り替える準備ができているということだ。