「頭も体も切り替えないと」。新ラリー1とハンコックに勝田が感じた、これまでにない“クセ”/WRC

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2025年02月01日 02:00  AUTOSPORT web

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勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2025年WRC第1戦ラリー・モンテカルロ
 1月23〜26日にモナコおよびフランスで行われた2025年WRC世界ラリー選手権第1戦『ラリー・モンテカルロ』では、ハイブリッドシステム非搭載となった新規則対応のラリー1マシンと、今季よりコントロールタイヤに採用されたハンコックタイヤが初の実戦を迎えた。

 第1戦ではこれらの新要素の実際の様子について多くの注目が集まっていたが、ラリー終了後に日本のメディア向けに開かれたオンライン取材会にてトヨタの勝田貴元は、新たなマシンとタイヤについて実際に感じた特徴やスピードを引き出すために行った工夫、これからさらに調整が必要になってくるであろうクセについて明かした。

■ノンハイブリッド仕様は「怖い挙動がまったく出なくなった」

 2025年へ向けて変更を受けたラリー1マシンは、これまで搭載されていたハイブリッドシステムが排除されただけでなく、これまでと同等のパワーウエイトレシオを維持するために車両最低重量が1260kgから1180kgに引き下げられ、さらに吸気エアリストリクターのサイズが36mmから35mmに縮小されている。

 こうして軽量化とパワーダウンによる総合的なバランス調整が施された新ラリー1マシンについて勝田は、「簡単に言うとすごく乗りやすくなった」とし、まずはポジティブな印象を言葉にした。

「今年のマシンはハイブリッドユニットが降りたことによって、ドライバビリティというかフィーリングが非常に大きく変わっていて、簡単に言うとすごく乗りやすくなりました。というのも、今まで見られたピーキーな挙動だったりとか、運転しながら気にかけないといけなかった部分がガラッと抜けています」

「まずは、ハイブリッドのブーストがなくなったことによる挙動の安定があります。さらに、リヤに載っていた80キロほどのハイブリッドユニットがスポンと抜けたので、車重バランスも変わっています」

「その結果、例えばリヤが一度流れ始めたときに、今までだと1回出始めると止まらないような本当に怖い挙動が多く出ていたのですが、それがまったく出なくなったので、その分プッシュできるようになりました」

 ノンハイブリッドマシンへと生まれ変わったラリー1は、総重量の軽減や重量バランスの変化がハンドリングに大きく現れているようで、その点については前向きに捉えている様子の勝田。ただ、その変化量が少し大きすぎたのか、まだ馴染み切れない領域も残っているのだという。

「これが自分のドライビングスタイルに合っているのかどうかは、いろいろな路面を走ってみないとわからないです。ただ今回はトップタイムも出していますし、今のところは合ってないことはないんじゃないかなとも思っています」

「そんななかでも、これまでのピーキーな挙動というか気をつけないといけなかった部分については、今までかなり強く意識しながら走っていたので、まだ感覚的に残ってしまっている部分がどうしてもありました」

「これまでは、リヤの荷重がスコーンと抜けるギリギリのところで走っていたのが、(これからは)『抜けても何とかできるからそこまでいっちゃってもいい』っていう感覚になって、そこに頭も体も感覚も切り替えないといけない。なので、まだアジャストが必要な感覚はあります」

■ピレリとは違う「ふわふわ」なハンコックタイヤ

 そして勝田はラリー1マシンの特徴に加え、今季から新たにWRCへ独占供給されるようになったハンコックタイヤについて、「悪いタイヤではない」と前置きしつつ、感じた特徴と気になったポイントを語った。

「ハンコックタイヤは、これまでのピレリと特性がかなり違っていて、今までと同じようなドライビングをしていても、タイヤの美味しいところが使えないように感じました」

「具体的には、僕たちが『コンバイン』と呼んでいる、左足ブレーキとアクセルを一緒に使う走り方があるのですが、このタイヤはそれで走ってしまうと荷重が大きくかかりすぎて破綻してしまったりとか、そういったフィーリングが多く見受けられましたね」

 勝田によれば、これまでWRCで多用されてきたドライビングスタイルが一部活きてこない部分があるというハンコックタイヤ。この特徴を感じていたのは勝田だけではないようで、とくにコンバインを多用する印象のあるカッレ・ロバンペラも、ステージ後のインタビューで「このタイヤからペースを引き出すのにかなり苦戦している」と語っており、僚友のセバスチャン・オジエやエルフィン・エバンスらに遅れを取る場面が多かった。

 ほかにも勝田はハンコックタイヤについて、若干の矛盾も混じるようなクセも感じている様子で、さらに続ける。

「あと、ハンコックタイヤは以前のピレリに比べると硬めに作られているようです。なので、どうしても発熱に少し時間がかかってしまう部分もあったように感じました」

「とはいっても、硬目に作られているようなフィーリングの割には、コンバインで左足ブレーキを使ったときに結構ふわふわするような感覚があったりもするので、この時はグリップが抜けてしまっているのか完全に破綻しているのか、その違いを早く見極めないといけないかなと思っています」

 コンバインはコーナリング中のマシンをコントロールする繊細な操作であるだけに、そこでグリップが不安定だとペースの向上は一筋縄ではいかないだろう。ただ、この週末には「デフの効きをさらに強くする」ことでタイヤの接地感やトラクションのかかり方を向上させることができた場面もあったとのことで、ラリー本番を通して少しずつハンコックタイヤへの理解も進んでいる様子だ。

 今大会を制したのが百戦錬磨のオジエであるところからも、新要素への対応が今季の戦力差に直結するであろうことは想像に難くないが、第1戦を終えても、順応を要するポイントはまだまだ隠れていそうな雰囲気。さらに次戦はフルスノーのスウェーデン、その次はグラベルのケニアといったスケジュールとなっており、今回のモンテカルロとは大きく異なるコンディションのラリーとなる。2025年シーズンの前半は、新要素への分析を要するラリーがまだまだ続くことになりそうだ。

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