【写真】2025年冬ドラマ「2話以降も見続けたい作品」TOP10
■ 現代の価値観と摩擦起こさずどこまで性風俗産業を描けるか『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
「期待の冬ドラマ」ランキング第3位は 横浜流星が主演する大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合/毎週日曜20時ほか)だった。
放送100年となる今年の大河ドラマは、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、ときに“お上”に目をつけられても“面白さ”を追求し続けた“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く物語。脚本を大河ドラマ『おんな城主 直虎』やNHKドラマ10『大奥』などを手掛けた森下佳子が務め、語りを綾瀬はるかが担当する。
第1話は、江戸中を襲った大火(大火事)のディザスター・シーンから壮大に始まり、「今年の大河は戦国時代じゃないんだ」とガッカリしている視聴者の目を覚まさせる幕開けだ。初回ということもあり、語りの綾瀬はるかも出演し、当時の吉原の仕組み、風俗をナビゲーションする構成となっており、「岡場所」「八忘」など時代劇に疎い筆者には勉強になった。話は逸れるが、大河ドラマで「スマートフォン」が映るのは超レアシーンなのではないだろうか?
売れっ子の花魁、小芝風花演じる花の井が象徴するような華やかな夜の世界があれば、客を取れずに死んだ女郎が身ぐるみを剥がされた状態で投げ込み寺で見つかる、という悲惨な世界もある。吉原の光と影が交差する。
後半では、女郎たちを低賃金でこき使い、自分たちは暴利を貪る女郎屋の経営者層との対立構造が描かれる。吉原の経営をひっ迫させる無許可の岡場所の取り締まりをお上に上申しても、取り合ってもらえない。そこで、横浜演じる蔦屋がその後の人生をかけることになる“メディア”に目をつけたところで第1話は幕を閉じる。
本作について、第1話では遊女たちの全裸遺体のシーンが一部で物議を醸していたが、そんなことより何よりも、大河ドラマというNHKの看板コンテンツにおいて性風俗産業を真正面から取り上げるというのが、とても挑戦的だ。現代の価値観と摩擦を起こすことなく、かと言って、都合が悪いことをぼかして作品としての勢いを失うことなく、この1年を完走できるのか。蔦屋重三郎の人生とともに注目したいところだ。
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「期待の冬ドラマ」ランキング第2位は、香取慎吾が主演を務め、志尊淳が共演する『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系/毎週木曜22時)。
本作は、区議会議員選挙で当選するためにイメージアップを狙い、シングルファーザーの義弟・小原正助(志尊)とその子どもたちと暮らすことになった主人公・大森一平(香取)が、次第に家族の問題と真剣に向き合うようになり、やがて本気で社会を変えようと立ち上がる姿を、笑いあり、涙ありの完全オリジナルストーリー。香取と志尊が初共演で義兄弟を演じるほか、冨永愛がフジ連ドラ初出演、さらに増田梨沙、千葉惣二朗、向里祐香、安田顕が顔をそろえる。
香取にとって本作は、『SMOKING GUN〜決定的証拠〜』以来となるフジテレビ連続ドラマ約11年ぶりの主演作だ。演じる一平は元テレビマンで、華やかな世界の住人だったが、何らかの不祥事の責任をとってテレビ局を去ったよう。第1話ではそんな一平が、亡くなった自身の妹・陽菜(向里祐香)の夫・正助(志尊)とその子ども、ひまり、朝陽を家に迎え入れるまでを描く。心優しい叔父を演じようとする一平だが、テレビマン特有(?)の大雑把な性格が災いし、家事や育児では失敗が続き、賢い姪っ子・ひまりにはその本心が半ば見抜かれ、心を開いてもらえない。
「家族とは何か?」がテーマの一つとなる本作。一平がひまりに「(今まで)3回しか会ってないのに?」と嫌味を言われ「3回しか会ってなくても家族は家族だ」と言い返すシーンがある。しかしその直後、ひまりがその場を去った後に一平が「いろいろ大変だよね、父親って」「ひまりちゃんは陽菜の連れ子でもあるし」と労おうとするが、正助は「そんな風に思ったことないです。ひまりは僕の子です」ときっぱり言い切る。「家族は家族」などと表層的なきれいごとを並べ続ける一平のうすっぺらな家族観が、あっさり暴かれてしまうシーンだ。本作はここから一平が紆余曲折を経て、ニセモノではない本当の家族になっていくストーリーなのだろうか。
すでに多くの人が知る通り、本作に出演するはずだった女優・中山美穂さんが昨年末に急逝した。第1話では中山さんの出演部分も放送され、エンディング後には追悼コメントが掲載された。来週放送の第5話には、妹の女優・中山忍が、中山さん演じる園田美奈子役の設定を引き継ぎ、鮫島ふみ役で出演する。メインキャストではないが、家族から家族へと引き継がれたこちらのバトンにも注目したい。
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そしてランキング第1位に輝いたのは、King & Princeの永瀬廉が主演する『御曹司に恋はムズすぎる』(カンテレ・フジテレビ系/毎週火曜23時)だった。
本作は、大手アパレルメーカーの会長の孫として思いっきり甘やかされて生きてきた御曹司が、真逆の環境で生まれ育ってきたド庶民女子と同僚になり、共に子ども服作りに取り組みながら、初めての挫折と本気の恋を知るロマンティックコメディ。ドラマ『東京タワー』(テレビ朝日系)を手がけた大北はるか脚本によるオリジナルストーリーで、同作で主演した永瀬と再びタッグを組む。
永瀬が演じる天堂昴は、巨大アパレルメーカー「服天」の御曹司でその上イケメン。天が二物も三物もサービスしている彼に対して出会う女性はみんなメロメロだ。「そりゃ自惚れるわ」というスペックで、性格はナルシスト。普通に演じたら嫌な奴にしかならない昴だが、ちょっぴり思い込みが強く天然なキャラクターもあり、ラブコメ初挑戦の永瀬が憎めない存在に昇華させている。
第1話では、そんな昴が急きょ「服天」に一般社員として入社させられ、これまでの女性と異なり自分に全くなびかない教育係・花倉まどか(山下美月)と出会うまでが描かれる。ナルシストな王子様と真っ直ぐな「おもしれー女」の出会いと言えば、『花より男子』(TBS系)などこれまで何作もの名作が生み出され、“伝統芸能”とさえ言える展開だが、王道であるからこそ安心して見られる作りになっている。
後半では、執事までいた昴が急に社員寮での庶民的な1人暮らしを強いられ、手動の水道の蛇口に悪戦苦闘(さすがにそれは分かるでしょ!?)したり、蛇口が開いてないのに気づかず洗濯機が故障したと勘違いしたり(それは庶民もよくやるやつ)など、ちょっとしたカルチャー・ギャップ・コメディとしても楽しめる。ちょっとまどかのことが気になり始めている昴と、昴のことをまったく気にもとめていない様子のまどか。2人の今後が気になる展開となっている。
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ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合にて毎週日曜20時放送。『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』はフジテレビ系にて毎週木曜22時放送。『御曹司に恋はムズすぎる』はカンテレ・フジテレビ系にて毎週火曜23時放送。