藍染カレン、ZOCへの思いと目指す未来「私はずっと“変身”をテーマに活動している」

0

2025年02月01日 13:10  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

フォトエッセイを発売した藍染カレン 撮影/はぎひさこ

 ZOC(現・ZOCX)のオリジナルメンバーとして6年にわたり活動してきた藍染カレンが、2024年11月についにグループを卒業し、初めてのフォトエッセイ『藍染カレン フォトエッセイ 藍臓』(玄光社)を、2025年1月31日に刊行した。


 波瀾万丈なZOCの話題でSNSが燃え上がっても沈黙を貫き活動を続けてきた藍染が、卒業を機に語ったグループへの本音と、自分自身の半生を詰めこんだ一冊。苦しい現実に直面しながらもZOCに夢中だった彼女の、衝動の日々がたっぷりと記されている。


 そこで、今回のインタビューでは、フォトエッセイ制作の裏側をたどりながら“今後”について聞いてみた。アイドルを経て役者の道を選んだ藍染は、どんな未来を描いているのだろうか。


◾️「あのとき、何も思わなかったわけないじゃん」


――フォトエッセイのオファーが来たとき、どう思いましたか?


藍染カレン(以下、藍染):嬉しかったです。ZOC全員では2度ほど本を出させてもらっていたんですが、私個人の本もいつか出してみたいなと思っていたんですよ。それも、写真がたくさん載っている自分だけの本を出したいなとぼんやり考えていたので、卒業を発表したタイミングで声をかけていただけたときは、ぜひぜひ!という気持ちでした。


【画像】藍染カレン撮り下ろしカット


――では、もとから構想はあった。


藍染:ありました。アイドルをずっとやっていたので、私のビジュアルを好きでいてくださるファンの方もいて、「本を出してほしい」という声をいただいていたんです。だから「自分で作るなら、写真を載せたいな」「こんな写真が撮れたら……」と、なんとなく考えていたんですよね。あと卒業後に出すので、ZOCで活動するなかで思っていたこととかも言えるかなって。


――これまで、ほぼ表で語っていませんものね。


藍染:はい。私が在籍していたときのZOCは、結構いろんな問題が起こっていたんですけど(笑)、そんな渦中にいながら私は何が起きても喋らない選択をしてきたんです。ただ、本という媒体なら喋ってもいいのかもなと思ったんですよ。私のことを好きで興味を持ってくれている人やZOCにちょっとでも触れたことがある人なら、知ってほしい話ができたと思っています。


――また、インタビュー中に涙を流してしまったこともあったと聞きました。


藍染:それこそ、ZOC活動中に思っていたことを話したときだと思います。つらくて泣いちゃったというよりは、当時のことを話すだけで勝手に涙が出てくる感じですね。表にはださなかったけど、あのときの私が何も思わなかったわけないんですよ。でも世間では「藍染カレンは心がないんじゃないか」「いろいろありすぎて、サイボーグみたいに何も思わなくなっちゃったのかも」と言われていたりしたんですけど、「んなわけねーじゃん!」っていうのが本音なんですよね。


――このタイミングでちゃんと言えてよかったですね。


藍染:メンバーの名前なども出して、かなり赤裸々に話しましたからね。ただ、あくまでも“私から見たZOC”の話なので、主観ではあります。これが正解ではないと理解したうえで読んでもらいたいですね。


  たくさん喋ってたくさん撮って、文字も写真もいっぱい詰めてもらった一冊になりました。実は今日、はじめて製本されたものを見たんですけど、私のすべて過ぎてちょっと恥ずかしいなと思ったくらいです(笑)。


「いろんなことがあった割には、目が死んでないね」と言われる


――全七幕で構成される『藍臓』。第二幕では、白ロリータ姿の藍染さんが見られますが、この服は絶対に着たかったそうですね。


藍染:そうなんです。自分の得意な色は赤や黒みたいな強い色なので、白を選ぶことがまずなくて、憧れがあったんですよ。ロリータ自体はZOCの活動中に何度か着させてもらったんですけど、「白ロリータを着てみたいな」と思って、本を出すと決まったときに「絶対着るぞ!」と、一式買いました!


――しかも、ロケーションがいいですよね。ロリータならかわいいに全振りしてもいいけれど、あえて路地や古めかしい建物をバックに撮っていて。


藍染:ありがとうございます。これ、高円寺なんです。高円寺は、熊本から東京に出てきたばかりの頃よく遊びに行っていた街。サブカルチャーが盛んだし、当時から好きだった(大森)靖子ちゃんが活動をはじめたのも高円寺のライブハウスなので、自分にとって文化の中心みたいな場所なんですよ。そこで、高校生の頃に見ていたインターネットの世界を体現したくて。ロリータを組み合わせて、退廃的な雰囲気にしました。


――格好いいです。そのまま喫茶店などでも撮影していますよね。


藍染:はい。喫茶店は「エセルの中庭」さんというお店で、ミスiD(※藍染がZOCとしてデビューするきっかけになったオーディション)で知り合ったお友達と一緒に行った思い出の場所です。あと、「はやとちり」さんというお洋服屋さんでも撮らせてもらいました。『断捨離彼氏』(※ZOCの2ndシングル)の衣装を作ってもらったりしたお店で、その場にあるお洋服を着させてもらいました。昔の自分と今の自分を融合させたいというテーマのもとコーディネートしていったので、このページは特にこだわり強めですね。


――また、第六幕では「三人の藍染カレン」と題し、「COOL」「CUTE」「POP」という3パターンのスタイリングに挑戦。イメージがガラッと変わる面白いページでした。


藍染:白ロリータも含めて私服を着たページが結構多いんですけど、「三人の〜」のところはプロの力を借りてスタイリングしていただきました。私はZOCの頃からずっと藍染カレンという人間を“やっている”し、これからは舞台などで役者もしていくので、“変身”をテーマに活動しているなと思っているんです。なので、自分が普段選ばない配色やアイテムで染めてもらうようなページもほしいなと思って設けました。


――どれも新鮮ですが、3パターンの中で特に楽しかった撮影はありましたか?


藍染:強いて言うなら「COOL」ですかね。グループのなかでもクールなアイドルでいたいと思っていましたし、衣装は露出度の高いものが多かったのでこの衣装もある種得意分野だったんです。だから、より一層気合いを入れて撮影に臨みました。


――確かに、お腹、脚、腕とガッツリ出していますよね。こういった衣装はお手の物だと思いますが、とはいえ撮影に向けて体作りはしましたか?


藍染:実は、筋トレをする時間があまりとれなかったんですよ。ただ、めちゃめちゃライブしまくっていた時期だったので、勝手に体が出来上がっていった気がします(笑)。


――気づいたら引き締まっていたと(笑)。


藍染:はい(笑)。あと、食事はちょっと気をつけていました。炭水化物を摂りすぎないようにしようとか。それくらいかな。


――今回、一冊の本にまとまった自分の写真を見てみて、藍染カレンの魅力はどこにあると感じますか?


藍染:私自身の魅力かぁ。自分ではよくわからないんですけど……目を褒めてもらうことは多いんです。「いろんなことがあった割には、目が死んでないね」と言われるくらい(笑)。それがうれしいし、魅力なのかなと思っています。このフォトエッセイでも、自分がZOCの藍染カレンとして生きてきた目でちゃんと写れていると思いますね。


――ちなみに、本書の中で一番のお気に入りはありますか?


藍染:それでいうとやっぱり表紙になります。表紙の撮影は私もMasayoさん(本書の撮影を担当したフォトグラファー)もすごく緊張していたんですけど、最終的に「この写真が表紙だね」となった1枚がこれなんです。手の入り方や唇の感じなど、どれをとっても良かった。


あと、表紙側のカバーをめくったところにモノクロのライブ写真があるんですけど、これも過去にMasayoさんに撮ってもらったもので、お気に入りなんです。当時は見たことがなかったんですけど、フォトエッセイに載せるにあたって、たくさんのライブ写真データをいただいて、いちから見ていたら見つけて。「なにこの写真! 格好いい! 使いたい!」と、即決したんです。すごく気に入っています。


◾️活動休止のタイミングで自分の人生とちゃんと向き合った


――2024年11月にZOCを卒業し12月の舞台出演を終え、一旦落ち着いたかと思います。最近はどのように過ごしていますか?


藍染:1月は働かないと決めていたんです。なので、働いていないですね(笑)。


――ゆっくりできていると。


藍染:はい、アホみたいにゆっくりしています。強いて言うなら、3月に出させていただく予定の舞台『9 R.I.P.』はゲームが原作なので、それを少しずつプレイしはじめているところですね。私、原作厨なので原作のある舞台はちゃんと原作から知りたいタイプなんですよ。普段あまりゲームをやらないので、勝手がわからないところもあるんですけど……最後までちゃんとやりたいなと思っています。余裕を持ってゆっくり役作りできるのが幸せですね。並行して遊んでいる『太鼓の達人』も楽しいです(笑)。ほかにも、上演中の舞台を見に行かせてもらったりしていて、いろいろとインプット中です。


――アイドル活動をされる方って、卒業後のこともなんとなく考えていたりしますが、藍染さんは「舞台役者になる」という未来を想像していましたか?


藍染:グループにいるあいだは、ZOCのこと以外考えないようにしていたんですよ。「一生ZOCをやるぞ」という覚悟でいないと振り落とされると思っていたし、そもそも私はZOCをやりたかったから、ほかのことは本当に考えていなかったですね。


ただ、メンバーが4人辞めてしまいZOCが活動休止したタイミングで、自分の人生とちゃんと向き合ったんです。そこで自然と浮かんできたのが「舞台をやりたいな」という思いだったんですよね。


――当時はすでに2つの舞台(ミュージカル『悪ノ娘』、『玉蜻 〜新説・八犬伝』)に出演していましたものね。そもそも、舞台を始めたのは『悪ノ娘』のオファーがあったからだとか。


藍染:そうです。最初は悩んだんですけど、靖子ちゃんが「カレンはいつもZOCで藍染カレンを“やっている”。それってミュージカルをやっているようなもんだから大丈夫だよ」と言ってくれて、確かに!と思って挑戦することにしました。ZOCじゃない場所に踏み込んでいったのがはじめてだったので、すごく新鮮な気持ちでしたね。


――当時は忙しかったと思いますが、他の舞台を見て勉強するような時間はとれましたか?


藍染:それが、全然とれなかったんですよ。でも、やるのは楽しかったです。「楽しいな」としか思ってなかったですね。


――水が合ったんですね。


藍染:それに、いざ舞台に出るとなるとZOCって優しくて。ZOCの活動を休ませてくれたんですよ。靖子ちゃんはソロ活動など個別の活動をメインにして、舞台に集中できる環境を作ってくれた。それもありがたかったです。


◾️舞台も映像もどんどんやっていきたい


――実際に舞台に立ってみて、舞台へのイメージに変化はありましたか?


藍染:割とイメージ通りでした。もちろん、アプローチは違います。ライブは目の前のお客さんとの対話で、舞台は舞台上で生まれるものをお客さんに見てもらうことだと思っているので。でも、自分のスタンスはあまり変わらないです。ZOCの頃から、藍染カレンという“自分が作った自分”を見てもらう感覚でステージに立っていたからかもしれないですね。


――何かを演じてステージに立つという意味では、舞台も変わらないと。


藍染:そうですね。自分じゃないものでいられると安心するんですよ、私。自分の人生はそこにないけど、演じている私の核はそこにある。しかも私という核の上に違う誰かの人生が乗っている。その状態を見てもらうって……生きていて経験できることではないので、ずっと楽しいです。私生活で何があっても、きっと楽しいと思います。だって、舞台の上の私は私ではないから。


――ただ、舞台のお芝居は発声や立ち回りなどが特殊なイメージです。どのようにノウハウを身につけましたか?


藍染:そこは、私もよくわからないんです。指導を受けたわけではないので、出来ているのかどうかわからないままここまできました(笑)。演出家さんが都度教えてくださるから、今はなんとかなっている状態ですね。だからこそ、今後はもっと細かい舞台表現を身につけたいですし、お芝居への造詣を深めていきたいです。


――今は、映像作品よりも舞台で活動していきたいですか?


藍染:今後は映像もどんどんやっていきたいなと思っています。


――以前も、出演したことはありますよね。


藍染:そうなんですよ。ただ、そのときは難しいなと思ったんですよね。ライブと舞台はスタンスが近いんですけど、映像はまた別みたいな感覚があって怖くて……。でも興味はあるし、やりたいですね。いろんな作品に出て、自分のお芝居を見てもらえる環境を自分で作っていけるようになりたいなと思っています。


――ここからさらに世界が広がりそうですね。それに、同じメンバーと長くともに過ごすアイドルと違い、舞台の世界は1〜2ヶ月で座組が変わるので、仲良くなった頃にまたリセットされますよね。


藍染:そうなんです。そこはアイドルとぜんぜん違うところですね。特に私は舞台の世界に入って間もないのではじめましての方がまだまだ多くて。毎回緊張しながら「はじめまして」と挨拶しています。


――人付き合いは楽しくなりましたか?


藍染:人付き合い、全然得意じゃないんですけど、舞台の場合はちゃんとコミュニケーションをとらないと成立しなくなるんですよ。だから怠けている場合じゃないので積極的にいけるようになりました。この環境は助かっていますね。ちゃんと仲良くなれますし、みんなで一つのものを作っていく楽しさも感じられます。


――役者のみなさんから、刺激を受けることはありますか?


藍染:ありますよ。みなさん、朝が強いんです。すごく! 今まで気づかなかったけど、アイドルって夜行性なんだなと思いました。


――稽古が始まるのが早いんでしょうか?


藍染:そうなんです。みなさん、朝からシャキッとしているから、正しい社会人を見ているようですね(笑)。今はまだ、ついていくのに必死です。


(取材・文=松本まゆげ)



    ニュース設定