菅田将暉『サンセット・サンライズ』は「全員がワガママで、協調性ゼロ。だから共存できている」

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2025年02月02日 12:21  cinemacafe.net

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『サンセット・サンライズ』公開御礼舞台挨拶 Ⓒ楡周平/講談社 Ⓒ2024「サンセット・サンライズ」製作委員会
主演・菅田将暉、脚本・宮藤官九郎、監督・岸善幸で贈る移住エンターテインメント『サンセット・サンライズ』。1月31日(金)、公開御礼舞台挨拶が行われ、菅田と岸監督が映画を見終えたばかりの観客からの質問に応じた。

第37回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門 招待作品として選出された本作。都会から移住した釣り好きサラリーマン西尾晋作と、宮城県・南三陸で生きる住民との交流や、人々の力強さや温かさをユーモアたっぷりに描いた。

※本編の内容に触れている部分があります。
1月17日の公開初日からすでに2週間が経つが、菅田、岸監督と映画をさらに深掘り、語り合える貴重な機会とあって客席は満席。

劇中では、菅田演じる主人公・西尾晋作が、コロナ禍でのリモートワークを機に、南三陸にお試し移住をするが、まず質問に立った女性はコロナ禍での学校生活で、体育祭や文化祭など様々な機会を奪われてしまったという。そんな彼女を含む10代に向けて、この映画を通じてのメッセージを求められた菅田は「僕がこの映画の好きなところは、ラストのまとまり方、向き合い方なんです」と応じる。

■「自分を大事にする、もうちょっとワガママになってもいいんじゃないか」
「見ていただいてわかるように、全員がワガママで、協調性ゼロの人たちの映画です(笑)。だからこそ、共存できているというか。(菅田演じる)西尾は好きなこともあるけど、生きていかなきゃいけないから仕事もやっていて、でもそれだけじゃ満足できない中でコロナ禍になってしまって『いまなら逆に好きなことを両立できるかも』と急に(南三陸の)家に行って、迷惑をかけつつ、『好きだから』という思いで暮らし始めるわけですよね」と話す。

「そこで地元のみなさんとのセッションがあって、最終的に百香さん(井上真央)の家のお話になって、ああいう形での“ゴール”というのは、それぞれが自分の思いを具現化した結果、好き勝手やった結果で『こんな家族の形になりました』という、その生き方が僕はすごく好きです。もちろん協調性、『みんなで共存していきましょう』というのは大事なんですけど、その前に自分を大事にする、もうちょっとワガママになってもいいんじゃないかなと、この映画を見て思いました」と自身が本作から受け取ったメッセージを語る。

そして将来は「カメラマンになりたい」という夢を語った質問者の10代の女性に向けて「いま一番ワガママをやっていい時期だと思うし、(間違ったことをしたら)きっと誰かが怒ってくれるので。我を磨いてほしいです」とエールを贈った。

岸監督は「コロナ禍でいろんなことを制限されて、良い点があったとすれば、自分を見つめ直すというタイミングが持てたことで、あれがなかったら、この作品はできなかったと思います」と述懐。

そして、メッセージとして「菅田さんが言ったことに近いかもしれないですが、他人がワガママに生きていくことを認めないといけないんですよね。そういうことを念頭に置きつつ、人に会いに行ってほしいと思います。自分の世界だけでなく、旅をしてもいいと思いますし、たくさん人に出会ってほしいです」とアドバイスを口にした。

■「緻密な脚本」竹原ピストル“ケン”と菅田将暉“晋作”のバトルの裏側
続いて、市役所に勤務しているという男性は、実際に震災の翌年、復興の応援のために派遣され、岩手県大船渡市で3か月ほど過ごしたと言う。「(地元の人々が)温かくて、こちらが応援のつもりで行ったのに、逆に元気をもらいました」とふり返り、「いまの僕にとって大事な映画でした」と自らの経験と重ねて感想を伝えると、岸監督も「大船渡で撮影したシーンがいくつかあって、お世話になりました」と改めて地元の協力への感謝を語った。

その男性は、竹原ピストルが演じるケンが菅田演じる晋作とのバトルで、壁に穴が開くシーンについて「あれは本当に壁を壊そうと思って激しくやったのか? 偶然、穴が開いたのかどっちですか?」と質問。

岸監督は「宮藤官九郎さんの台本に『大変なことになる』とありました(笑)」と明かし「緻密な脚本で、(ケンカの後で、穴をふさぐために)絵を掛けるというシーンがあって、井上(真央)さんの身長と菅田さんの身長(を見て)、そこに額縁が自然に飾られるとなると、菅田さんの肘くらいのポジションかな…? ということで、アクション部の方と殺陣をつくって、菅田さんをぶつけて穴を開けています」と緻密な計算の上で、穴が開くように撮影されていると明かしていた。

■岸善幸監督「一生懸命作った作品です」
地方出身者という女性からは、映画の中で描かれる移住と絡めて、菅田と岸監督に「人生の終着地として、都会で人生を終えたいか?それとも田舎や地方がいいか?」という質問が。菅田は「今回の映画は、移住というスタートの話ですけど、ゴールはどこが良いかということですね? 良い質問ですね」と笑顔でうなずきつつ、「自然があるところがいい」「やっぱりどっちかというと田舎がいいかな」と回答。

岸監督は「難しいな…。大切な人に言いたい言葉だけ伝えられたら、場所はどこでもいいのかな」と語り、その言葉に菅田も「たしかに。伝えに行ける距離にいるかってすごく大事なことですよね」と深くうなずいていた。

舞台挨拶の最後に岸監督は「(質疑応答を通して)みなさんから感想をいただきましたが、本当にそういうこと伝えたくて、宮藤さんともいろいろ議論しながらこの作品を作りました。菅田さんをはじめ、脚本を読んだ時点でこの作品を好きになってくれて『やりたい!』と言ってくれた人たちと一生懸命作った作品です。もし、他の人に勧めていただければもっと見ていただけるのでよろしくお願いします」と呼びかけた。

菅田は、劇中で竹原ピストルさんが口にする「たまに見にくればいいんでない?ご馳走用意して待ってっから」という言葉に言及し「これは宮藤さんが実際、地元の人たちに震災後にインタビューした時に言われた言葉を反映しています」と明かす。

「岸さんをはじめ、地元をよく知っている人たちによって、この映画の濃度ーー映画というファンタジーの中の本当の部分がちゃんと作られていると思います。今日みたいに、この映画を軸にディスカッションをしたりすることで、映画というものがずっと残っていけると思うので、これからもそういう存在になってくれたら嬉しいです。そんなきっかけを作ってくださって、ありがとうございました。みんな、この映画をもう一回見よう!」と呼びかけ、温かい拍手の中で、舞台挨拶は幕を閉じた。

『サンセット・サンライズ』は全国にて公開中。





(シネマカフェ編集部)

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