看取り方は正しかったのか?と職場で涙、有休をもらい…当事者が語る“ペットロスの痛み”

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2025年02月03日 16:20  女子SPA!

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【今日のにゃんこタイム〜○○さん家の猫がかわいすぎる Vol.159】

 あの子は、生きがいだった――。13歳8カ月で亡くなった愛猫「なっちゃん」をそう表現するのは、猫まっしぐらさん(@lancer8294)。

 病気になった愛猫に、もっとできたことがあったのではないか。そんな後悔が消えず、飼い主さんは今でも月に何度か遺骨を膝に乗せ、涙を流しています。

◆バーベキュー場にいた人懐っこい野良猫を保護

 2009年9月17日、同級生夫婦と保護猫カフェに訪れた飼い主さん。その帰り道で、ある野良猫の話を聞きました。

「同級生は、とあるバーベキュー場で人馴れした猫と会ったと話しました。近くに民家はないので、捨てられたのかもしれないと……」

 飼い主さんはその猫が気になり、帰宅すると同級生に電話。詳しい場所を聞き、現地へ向かいました。

 現地で、「おーい。猫、いるか?」と呼びかけると、草むらから1匹の猫が登場! ガリガリな体を抱き上げたとき、猫は目の前を飛ぶ蛾を食べようとしました。

 飼い主さんは、慌ててハグ。「もう、そんなの食べなくていいよ」と伝えました。

 人懐っこいことと、名前を考えているときに市販飲料の「なっちゃん オレンジ」を飲んでいたことから、飼い主さんは「なっちゃん」と命名。

 保護翌日に動物病院へ連れて行くと、生後半年ほどであることが判明しました。健康診断や避妊手術、ノミ駆除などのため、なっちゃんは入院。退院し、一緒に暮らし始めた9月20日を、飼い主さんは“誕生日”としたそうです。

◆人たらし、でも他猫はニガテで…

 なっちゃんはお迎え当初から落ち着いており、飼い主さんの家族にもすぐに馴れたそう。なぜか車に乗ることが好きで、キャリーバッグがなくても毎回必ず車内でじっと過ごしてくれているのだとか。

 しかし、他猫は苦手。飼い主さん宅で暮らす2匹の先住猫には、心が許せない様子でした。

 先住猫たちと顔を合わせなくてもいいように、なっちゃんは飼い主さんの部屋で生活することに。飼い主さんは自室に猫用トイレやご飯置き場、キャットタワーなどを設置し、環境を整えました。

「実は、なっちゃんを連れ帰ったとき、親父から『猫のために家を建てたんじゃねぇ!』と怒られて。これも自室で育てるようになった理由のひとつです。親父とは数日間、口をききませんでした」

◆保護を激怒した父親もすっかり虜に

 しかし、なっちゃんは持ち前の人懐っこさでお父さんも虜にしてしまいます。同居から数日後、お父さんから突然「あの子、しっぽ短いな。すげー人懐こくてかわいい」と言われたそう。

「俺は思わず、『なに、こっそり見に行ってんだよ』と突っ込んでしまいました(笑)」

 なっちゃんは、気遣い上手。用事があるとき以外は、寝ている飼い主さんを起こしませんでした。

 さらには人語が分かるのか、普段は自分の寝床で眠っていても、「寝るよ」と言うと一緒に寝てくれたそう。

「香箱座りで“おててないない”をしているとき、その両手のあいだへ指を突っ込むと、ペロペロしてくれました。眠るなっちゃんのお腹に顔を突っ込んだときも、のどを鳴らしながら必ず顔を舐めてくれました」

 なお、なっちゃんはズボンの素材に好き嫌いがあったそう。デニムパンツならば喜んで乗るのに、スウェットでは乗りたがらないという独特のポリシーも、飼い主さんにとっての愛しいポイントでした。

◆愛猫が突然、食欲不振になって…

 高齢になっても、なっちゃんの人懐っこさは変わりません。飼い主さんが新型コロナウイルス感染・10日間のホテル隔離となったときも、帰宅するなりキャットタワーから急いで飛び降り、スリスリ。

 2021年には乳腺付近に悪性腫瘍が見つかりましたが、早期発見でき、大事には至りませんでした。

 しかし、それから2年後、なっちゃんの食欲が低下。半月ほど経つ頃には何も口にしなくなったため、飼い主さんは急いで動物病院へ。

 獣医師はお腹の動きを見て、肺炎と診断。注射をしてもらいましたが、食欲は戻りませんでした。

「痩せてきたものの、キャットタワーに登り、毛づくろいもしていました。のどを鳴らしながら俺の顔を舐めてもくれ、食欲不振以外は普段と同じでした」

 それでも不安はやはり拭えず、飼い主さんは1カ月後にふたたび動物病院を受診。すると、先生から肺腫瘍である可能性を告げられ、さらに高齢のため手術は難しいと言われました。

◆一か八かにかけるか、安定した余生を過ごすか?

 お金なら払うから、助けてほしい――。飼い主さんがそう訴えると、先生から考えさせられる助言を受けたそう。

「手術が成功すれば長生きできるかもしれないけれど、もしかしたら短いかもしれないし、手術中に死ぬ可能性もある。

 自分がおじいさんだったら、残された時間を大切にするのか、手術を受けるのか。どっちがいい?」

 そう言われ、飼い主さんはなっちゃんを泣く泣く緩和ケアしながら看取ることに。なっちゃんは亡くなる直前までキャットタワーに自力で登るなど、ニャン生を謳歌してくれました。

「最期はお気に入りだったキャットタワーの2段目で、痙攣しながら胃液を吐きました。正直、もっと早くセカンドオピニオンを受けていれば助かった可能性はあったかもしれません」

◆選んだ看取り方が正しかったのかと自問自答する日々

 一緒にいることが当たり前だった愛猫を失った後、飼い主さんは深刻なペットロスに。泣きながら仕事をこなすも、業務中にミス。店長は、3日間の有給休暇を取らせてくれました。

 何が正しい判断だったのか。他にできることはなかったのか……。そんな疑問や後悔は、今も心から消えることはありません。

「なっちゃんの仏壇には今でも毎日必ず、『おはよう』や『ただいま』、『仕事行ってくるね』、『おやすみ』と言っています。お気に入りだったペンギンのぬいぐるみには、まだ匂いが残っています」

 大切な家族を失った痛みは、「ペットロス」という言葉では片付けられないほど深刻なもの。

 動物を亡くした悲しみはまだまだ軽視されやすいものですが、当事者の声を聞くと、小さな家族であっても弔う時間を持てる社会であってほしいと願いたくなります。

「SNSのフォロワーさんからはお悔やみの品や花代をいただき、なっちゃんがたくさんの方に愛されていたことをあらためて知りました」

 最期まで猫らしく生き、家族を愛したなっちゃん。その体は隣にいなくとも、飼い主さんにとっては、いつまでもかけがえのない愛猫です。

<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>

【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291

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