Netflixで配信中のオーディション番組『timelesz project -AUDITION-』が佳境を迎えている。2024年9月の配信開始から約4か月半。1月31日に配信された「episode 14」で5次審査が決着し、残すところ最終審査のみとなった。
2024年4月に「Sexy Zone」から改名したアイドルグループ「timelesz」のメンバー、菊池風磨、佐藤勝利、松島聡が、発案から審査員まで主体となり、みずからの「仲間探し」をするために始めたオーディション「timelesz project」。
いよいよ最終審査のスタートを間近に控えたいま、あらためてここまでの歩みとともに、感動と波乱の5次審査を振り返りたい。
※本稿は、『timelesz project -AUDITION-』に関するネタバレを含みます。
応募総数18,922名のなかから、1次審査の書類審査を通過したのは約350名。2次審査の面接とパフォーマンス審査の模様から、『timelesz project -AUDITION-』は始まった。
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「面接官」としての時に厳しいメンバーの言葉は、「就活生や企業の採用担当者にとっても参考になる」と大いに話題になり、もともとのtimeleszファン、事務所ファン、アイドルファンの外側にいる人々まで一気に巻き込んだ。
3次審査以降は一貫して、候補生同士でグループを組み、課題曲のパフォーマンスを披露する形式が取られている。3次審査ではSMAPの“SHAKE”と嵐の“Monster”、4次審査ではSexy Zoneの既発表曲“Purple Rain”“人生遊戯”“RIGHT NEXT TO YOU”が、それぞれ課題曲となった。
3次審査からは、候補生たちのパフォーマンスやそこに至るまでのレッスンの過程を見るなかで、「アイドルに必要なものは何なのか」をさまざまな側面から考えさせられた。加えて、もっと普遍的な、timeleszと候補生、そしてトレーナーとの人間関係のなかで交わされる愛情や友情、そして人間の成長と人生の物語、つまりドキュメンタリーとしての見所も増えた。
2次審査がtimelesz projectの存在を「広く」届けたとしたら、3次以降はその人々を「深く」まで惹きつけ、番組自体やtimelesz、そして候補生たちのファンに変えていく役割を担ったと思う。
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佐藤チームの課題曲は、事務所の伝統を感じさせる、大人の雰囲気をまとったミュージカル楽曲のような“革命のDancin’ night”。松島チームは、「かわいい」を詰め込んだ王道ど真ん中のアイドル曲“SWEET”。菊池チームは、強い意志を感じさせるクールなダンスナンバー“New phase”。それぞれまったく方向性の異なる、三者三様の楽曲だ。
3チームすべての発表が終了した時点で、頭を抱えたくなった。全員合格としか思えなかったからだ。それくらい、どのチームも、素晴らしいという言葉では言い尽くせないほどの魅力あふれるステージを見せてくれた。
そしてこのように感じているのが筆者ばかりではないことは、パフォーマンス終了後の審査員の反応を見ても明らかだった。
2次〜4次審査のなかでは、パフォーマンスにぴんと来なければその気持ちを隠さずに表情や言葉に出していた菊池、佐藤、松島。それが5次審査では、絶賛の嵐。純粋に一人の観客として声をあげて盛り上がる姿や、候補生たちの成長ぶりに涙を抑えきれない場面も多々見受けられた。
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そんな「鬼教官」が満面の笑みで拍手喝采し、「あっという間に終わっちゃって、ずっと楽しかった。心がわくわくするパフォーマンス」「(候補生たちを)好きになっちゃってるんだな、って自分ですごく思いました」などとコメントしている姿には、強く胸を打たれた。
最終パフォーマンスのクオリティーの高さもさることながら、そこに至るまでの過程も見応えたっぷりだった。いずれのチームも、20日間の練習期間、そしてその後に設けられた5日間の共同生活・レッスンのなかで、目に見えてパフォーマンスの質を高めていった。
佐藤チームは目立ったトラブルなく、共同生活1日目に行なわれた中間発表の時点で最も高い評価を得たグループだった。それゆえに、中間発表後、パフォーマンスのクオリティーをさらに高めるための2つの変更——ヘッドセットからハンドマイクへの変更と、見せ場でのターンの回転数を1回増やし、ダブルターンへと変更するというもの——が課せられた。
本番を4日後に控えた時点での変更だったが、地道に練習を重ね、本番では見事やりきった。特に、2次審査の時点から華のあるビジュアルと高いスキルで評価を得ていたものの、「もっと殻を破れるはず」と期待され続けてきた候補生・浜川路己がついに見せた「覚醒」には、目を見張るものがあった。
松島チームは、「かわいさ」の表現や、パフォーマンス中に設けられた表情や仕草でのアクティングに苦戦した。男っぽさやかっこよさを封印しつつ、かといってあざとさに振り切ることもない男性アイドルならではのナチュラルな「かわいさ」の表現は、複雑な振りを覚えるのとはまた違った難しさがある。
中間発表ではチーム内のコミュニケーション不足も災いし、全体的にぎこちなさがあったものの、共同生活を通じて仲を深めながら、本番では見る人を自然と笑顔にする「これぞまさしくアイドル」なキラキラのパフォーマンスを見せてくれた。
菊池チームは、高難度の激しいダンスに苦戦。ダンス未経験者の候補生・篠塚大輝のフォローもしながら少しずつ形にしていくものの、楽曲をなかなか自分たちのものにできずにいた。本番前日には佐藤チームの練習風景を見て自信を喪失し、不穏な空気が立ちこめたものの、菊池の言葉が彼らを鼓舞。表情づくりなど、ただ歌うだけ・踊るだけではなく楽曲の世界観をどう表現すべきか、力を合わせて再検討し、本番は爆発した個性がぶつかり合う熱量たっぷりのステージになった。
ここではすべての候補生に言及できないことが残念でならないが、それぞれ違った魅力を持つ、一人ひとりの物語がそこにはあった。5次審査で心震えるパフォーマンスを見せてくれた12名の候補生全員に、心からの拍手と感謝を贈りたい。
だからこそ、12人が8人に絞られる結果発表は、涙なしには見られないものだった。発表前に菊池は、本来なら全員合格だが、自分たちとの相性や親和性に重きを置いて審査を行なった、と前置きした。
アイドルはチームワークだ。個人のスキルがいくら高くても、チームワークが悪ければ魅力的には見えないし、反対にチームワークがよければ、個人のスキルは一足飛びに引き上げられ、ステージでは掛け算で何倍、何十倍にも輝くことができる。3次審査から5次審査まで、私たちは正味10チームによるパフォーマンスを見てきたが、そのなかでチームワークの大切さは痛いほどに強く感じてきた。
timelesz projectが始まった当初、「episode 01」の時点から、菊池はこう語っていた。「新しい仲間を見てみたい。僕らの、その彼らと一緒に掛け算した姿が見てみたい。そんなtimeleszを見てみたい」。
新しいメンバーとの掛け算によって、timeleszはこれからどんなチームになれるのか? 5次審査を通過した、そして最終審査で合格するのは「相対的にすぐれた候補生」ではなく、timeleszにとって胸踊るような今後の自分たちのビジョンを見せてくれる候補生なのだろう。
新メンバーを迎えることによって加わるのは、彼ら自身の持つ個性だけではない。彼らによって引き出される、現メンバーの3人の魅力的な表情が、すでに『timelesz project -AUDITION-』の映像にもたくさん刻まれている。
ストイックに突き詰める厳しさと、面倒見のよさを併せ持つ佐藤。言いにくいことも、候補生のため、ファンのために逃げずに言葉にする強さとやさしさが印象的な松島。的確な声かけでチームを導き、成長する候補生たちの姿を温かな笑顔で見守る菊池。
この「仲間探し」のプロセスをオーディション番組というかたちで世間に公開することで、そうでなくては出会えなかった人々が、確実に心を動かされている。timeleszがこのオーディションを通じて実現したかったことは、少しずつ現実の形になって見えてきつつある。
最終審査では残る8名が2チームに別れ、2つの課題曲をtimeleszとともにパフォーマンスする。課題曲は新曲と、timeleszがSexy Zone時代から大切にしてきた楽曲“RUN”だ。
ついにパフォーマンス面でも、timeleszと候補生たちとの「掛け算」を見せてくれるときがきた。私たちは一体、どんな光景を目の当たりにすることになるのか。残り2エピソード、心して目に焼き付けたい。