日本での鈴鹿1000kmを含む年間5戦で争われるIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジの開幕戦『バサースト12時間』が2月2日、オーストラリアのマウント・パノラマ・サーキットで行われ、アウトグスト・ファーフス/シェルドン・ファン・デル・リンデ/ケルビン・ファン・デル・リンデ組32号車BMW M4 GT3エボが優勝。バレンティーノ・ロッシらがドライブした46号車BMW M4 GT3エボがこれに続き、チームWRTがワン・ツー・フィニッシュを飾っている。
夜明け前5時45分のスタートから12時間後の17時46分にチェッカーフラッグが振り下ろされたレースは、32号車BMWが姉妹車である46号車を10秒245の差で下した。ロッシ、シャルル・ウィーツとともに46号車をシェアしたラファエル・マルチェッロは、チェッカーまで残り20分でジュール・グーノン駆る75号車メルセデスAMG GT3エボ(75エクスプレス)を抜き去り、チームWRTのワン・ツーに大きな貢献を果たしている。
GT3時代のバサーストでBMWが総合優勝を飾ったのは今回が初めてだ。これは安定したスピードと効率を実現し、レースの4分の3以上をリードした32号車の圧倒的な走りによって達成された。昨シーズン、BMWにスイッチしたベルギーチームにとっては、アウディ時代に続く2度目のバサースト制覇となっている。
75号車メルセデスを含む上位3台は、他の競技車よりも1回少ないピットストップでレースを終えた。これはIGTC開幕戦の勝敗を左右することとなった、チェッカーフラッグまでの最後の4時間34分のグリーンフラッグ・レースのなかで達成された。
このオフにBMW陣営に加入したケルビン・ファン・デル・リンデは、弟のシェルドンと“ベテラン”ファーフスとともに喜びを分かちあった。マウント・パノラマで兄弟ドライバーが総合優勝したのは、1997年の『バサースト1000スーパーツーリング』でのデビッドとジェフのブラバム兄弟以来となる。
ルカ・ストルツとチームオーナー兼ドライバーのケニー・ハブルと75号車メルセデスをシェアしたグーノンは、レース序盤のいくつかのアクシデントから立ち直り総合3位でフィニッシュした。
彼とストルツはレース終盤、ともに燃料を節約したドライブを心がけたが、これが75エクスプレスを表彰台に押し上げるのに役立った。
レース終了まで残り50分の段階ではまだ75号車メルセデスの後方に位置していたマルチェッロは、グーノンにプレッシャーをかけていたが、2台は先行するルーカス・アウアー駆る77号車メルセデスAMG GT3エボ(クラフト・バンブー・レーシング)が最後のピットストップを行っていたなかったため、わずかに足を引っ張られた。その後3番手に浮上したBMWのドライバーは、前述のバトルにおいてタイヤをダートに落としながらグーノンをパス。BMWのワン・ツー体制を築いた。
残り37分の時点で32号車BMWを抜いてトップに立ったチャズ・モスタートは、彼がステアリングを握る26号車フェラーリ296 GT3(アライズ・レーシングGT)が最後の燃料補給を終えた後、4番手でコースに復帰。そのまま4位でチェッカーを受けている。
レースの最終盤、残り6分でスプラッシュ・アンド・ゴーを行ったアウアーの77号車メルセデスは、6位となった911号車ポルシェ911 GT3 R(アブソリュート・レーシング)を上回りトップ5入りを果たした。
総合7位は27号車メルセデスAMG GT3エボ(ハート・オブ・レーシング・バイ・SPS)で、このブロンズカップ・エントリーのマシンは総合8位でプロアマカップを制した36号車フェラーリ296 GT3(アライズ・レーシングGT)や、同9位でシルバーカップのウイナーとなった93号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2(ウォール・レーシング)を上回ってみせた。
■クラッシュでメルセデスAMGが宙に浮く
オーストラリアを代表する国際耐久レースでは、いくつかのリタイアが見られた。そのうちのひとつなった888号車メルセデスAMG GT3エボ(グループM・レーシング)は、マキシム・マルタンが“ザ・チェイス”の出口でウォールに激突し残り5時間弱で脱落した。このクルマはレース前半のペナルティから立ち直り優勝を争っていた。
この事故は機械的な故障の疑いにより183号車アウディR8 LMS GT3エボII(ジャメック・レーシング/チームMPCがグラベルトラップにはまってリタイアとなった後に起こった。
レース最大の事故は3時間目に発生した。“スカイライン”でハブルと75号車メルセデスとスティーブン・グローブがドライブする4号車メルセデスAMG GT3エボ(グローブ・レーシング)が横並びとなった際、2台がわずかに接触。姿勢を乱した後者は壁に激突した衝撃で宙を舞い、危うくバリアを越えそうになった。
事故後、レースコントロールはセーフティカーを入れる以上の措置をとらず競技を続行した。背中を負傷したグローブはシドニーの病院に搬送されている。
25号車マクラーレン・アルトゥーラGT4(メソッド・モータースポーツ)のライアン・ソレンセンも、44号車アウディR8 LMS GT3エボII(ガイヤー・バルモント・レーシング)を巻き込んだ大クラッシュの後、病院で診察を受けた。なお44号車は長い修理の後にレースに復帰している。
最初のリタイアは222号車メルセデスAMG GT3エボ(スコット・テイラー・モータースポーツ)だった。クレイグ・ロウンズが山頂のコーナーでウォールにヒットし、これによってマシン左リヤのドライブシャフトとホイールが損傷した。
開幕戦が終了したIGTCの次戦は6月19〜22日、ドイツの“聖地”ノルドシュライフェで行われる第2戦ニュルブルクンク24時間だ。このレースは昨季2024年からIGTCのカレンダーに加わり、今季がシリーズ戦として2度目の開催となる。