高木豊が注目する若手野手 セ・リーグ編
各球団のキャンプが始まり、今年も球春が到来。そこで飛躍が期待される若手がどんなアピールをするのかも、注目のひとつだ。かつて大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動する高木豊氏が、今季のブレイクを期待するセ・リーグの若手野手を4人ピックアップした。
【巨人・DeNAの三拍子揃った野手たち】
――セ・リーグで今季ブレイクしそうな若手の野手は?
高木豊(以下:高木) 巨人の浅野翔吾(3年目・20歳)です。外野には丸佳浩やエリエ・ヘルナンデスらがいるほか、新外国人でトレイ・キャベッジが入りました。岡本和真が外野に挑戦することも示唆されていますし、外野の競争は激しくなりますが、勝ち残っていってほしいなと。
――その点で、昨季の経験は大きい?
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高木 そうですね。勝負強さや対応力もありますし。昨季は凡打を打った後にしっかり反省し、同じ失敗を繰り返さないように適応していました。バッティングがよくて、走らせたら足も速い、だけど、ちょっと守備は......と、クエスチョンをつけてほしくない。走攻守、三拍子揃った選手になってほしいです。
DeNAの梶原昂希(4年目・25歳)にも期待しています。今は、セ・リーグを代表するトップバッターといえば阪神の近本光司の名前が挙がると思いますが、梶原もそうなれる逸材です。足がありますし、今季は長打も多く打てるんじゃないかと。ホームランを20本以上打てる能力があると思っています。3番あたりで使いたくなる選手でもありますが、打線に余裕があるならば、1番に置いてほしいんです。
――数多く打席を回して経験を積ませる、という狙いもあってですか?
高木 それもありますが、それを抜きにしてもです。やっぱり足が速いのと、バッティング、守備もいいからですね。
――梶原選手が、長打が多く打てるようになる、と思われる理由は?
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高木 フリーバッティングを見ると、ホームランを打てないわけがないんです。ただ、昨季は「打率を残したい」「スタメンから外されたくない」という気持ちのほうが強かったように見えました。長打を狙っていいケースもあったと思うのですが、それも全部、打率を上げるためのバッティングに変えていったような気がします。
彼が確固たるレギュラーになって試合から外される心配がなくなり、精神的に余裕が出てきたら、もっと思い切って振れると思うんです。振った先にはスタンドインが待っていますよ。
DeNAでは森敬斗(6年目・23歳)も変わってきましたね。昨季でひと皮むけたと思います。一軍で活躍することがどれだけ楽しいことか、どれだけ充実感が得られることなのか、身をもって感じたからでしょう。
――森選手の魅力は?
高木 やはり走攻守でポテンシャルを秘めている点ですが、課題は守備です。雑ではないのですが、ちょっと軽い部分があるので高い集中力を維持してほしいです。森がシーズンを通してショートを守れるかどうかは、本人にとってはもちろん、チームにとってもすごく大きなことです。
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バッティングは、センター中心に変わってきましたよね。ひと頃は「ホームランを打ちたい」という欲を感じましたが、昨季の日本シリーズで押し出しの四球を選んでいたように、打ち気を我慢してボールを見逃すこともできるようになってきました。やっとレギュラーを争う位置まできてくれたな、と思うので、今季は確固たるレギュラーを目指してほしいです。
【貧打に苦しむ広島で期待の中距離打者】
――ほかに期待している選手は?
高木 広島の田村俊介(4年目・21歳)です。お互いに意識し合っている阪神の前川右京が、昨季に一定の活躍を見せて先に出ましたが、素材は田村も負けていません。昨季は変化球で崩され、パニックになっていたと思うんです。打つのが難しいボールに手を出してしまいがちで、見極めができていませんでした。
あと、広島の場合はチームとして打てていませんでしたよね。打っているバッターが何人かいれば、田村が打てなくても我慢して使っていけたと思うのですが、全体的に不振だと打てないバッターを使い続けるわけにはいきません。なので、田村にチャンスを多く与えられるような打線の状態であるかがポイントになりそうです。使い続ければ結果が出てくると思いますよ。
――改善すべき点は?
高木 精神面です。結果を欲しがっているからか、必要以上に焦りが見えます。スイングはすごくいいですし、技術的な部分は変えないでほしいです。
――どういうバッターを目指すべきなのか、早めに方向性を定めたほうがいい、とよく言われますが、田村選手をどう見ていますか?
高木 彼は中距離打者でしょう。チームには秋山翔吾をはじめ、同じ左バッターで見本となる先輩がいますよね。そういったバッターを研究して、そこを目指してほしい。打率は秋山のほうが上だと思いますが、ホームランは秋山より打てると思いますよ。パンチ力は田村のほうがありますから。
それと、前川と比べると打席での執念が足りません。前川はなんとかしようとするんですよ。田村も同じような気持ちはあるでしょうが、それを見せる前に終わってしまう印象で、ちょっと淡白さが目立ちますよね。
――打席での粘りがほしい?
高木 そうですね。ヤクルトの村上宗隆が一軍の試合に出始めた頃に印象的な打席があったのですが、カウントで追い込まれた時にバットを内側から出して、ファウルで粘っていたんです。結果は三振だったのですが、必死に食らいついて粘る姿を見て、「このバッターは末恐ろしいな」と思っていたら、三冠王を獲るほどのバッターになった。そういう部分を学んでほしいですね。
秋山も追い込まれた後は、ファウルでよく粘っていますよね。「三振は絶対にしない」「必ずヒットを打つんだ」といった気持ちが伝わってくる。きれいに打ち返すことを考えるのもいいですが、まずは打席での執念というか、泥臭くでも出塁する意識を強く持ってほしいです。
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【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。
■元プロ野球選手のYouTuberのパイオニア
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