「明るく元気な楽しいフジテレビを目指してほしい」
フジテレビの社長を辞任した港浩一氏は、今後に期待することを聞かれると、こう答えた─。
1月27日、中居正広の女性トラブルに起因する一連の問題について、フジテレビは記者会見を行った。1月17日に港氏が行った会見が、大きな批判を浴びたことによる“やり直し会見”だ。参加媒体を絞った1度目の会見とは違って“フルオープン”で行われ、191媒体、437人が参加した。
会見冒頭に、フジテレビ会長の嘉納修治氏と社長の港氏の引責辞任の発表と経緯の説明をして、質疑応答に移ると一部の記者がヒートアップ。一方で、出席したフジ側の取締役は、「人権意識が古かった」などとしつつも、女性や社員のプライバシーを盾に「第三者委員会の調査に……」といった回答を繰り返した。
こうして、夕方4時から始まった会見は深夜2時24分まで続いたが、騒動が収束する気配は見えない。
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『文春』の記事訂正による影響は
「2024年12月19日、中居さんが2023年6月に女性とトラブルを起こし、多額の示談金を支払っていたことが『女性セブン』で報じられました。『週刊文春』も同年12月26日発売号でこれに追随。女性X子さんがフジテレビの幹部社員A氏に誘われた会食の場で被害を受けたと掲載していました」(全国紙記者、以下同)
『文春』は、この記事内容について一部を訂正した。
「1月8日発売号以降では、事件当日に誘ったのは中居さんだとしています。ただ、トラブルが発生した日の直前に、中居さんの自宅で行われたバーベキューには、A氏がX子さんを誘っていたとのこと。そのため、X子さんは事件当日の中居さんからの誘いを“A氏の会の延長”だと認識していたとしています」
この訂正について、『週刊文春』は1月29日にコメントを発表したが、
「フジテレビは、中居さんが女性とトラブルを起こしたことを認識しながら、起用し続けていたということに変わりはありません。また、現役女性アナウンサーもA氏に誘われた会食での被害を告発しており“上納文化”が指摘されています。スポンサー離れも加速し続けており、フジテレビは“崩壊の危機”に瀕しています」
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会見の2日後、フジテレビでアナウンス部長を務めたこともある元アナウンサーの露木茂氏に“上納文化”の実態や会見の印象を聞いた。
「会見はテレビで見ました。なんだか、よその会社の出来事を見ているようで……。会社を離れて25年になりますが、別の会社で起きている出来事のように思いました」
会見に姿を見せなかった日枝氏
──女性アナウンサーが接待に参加させられるという話は聞いたことはあるか?
「まったくないです。実態がわからないし、いま何が起きているのかもわからない。そういう意味で“別の会社”と申し上げました。もう、あまりにも意外で、びっくりというか、がっかりというか……」(露木氏)
また、会見で記者から何度も名前があがったのが、フジ・メディアHDとフジテレビの取締役相談役を務める日枝久氏だった。
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「日枝氏は、フジテレビの労働組合から27日の会見に出席するよう求められていましたが、姿を見せませんでした。日枝氏は、長年フジテレビ内に強い影響力を持っており、今回の問題につながる企業風土を築いた張本人ともいわれています。そのため、記者たちから、なぜ出席しないのかといった質問が相次いだのです」(前出・全国紙記者)
会見に出席したフジ・メディアHDの金光修社長は、日枝氏について聞かれると、
「企業風土の礎をつくっているということは間違いない」
と話した。清水賢治フジ新社長は、
「正月とかに会う親戚のおじさんみたいな存在」
とのこと。前出の露木氏にも、日枝氏の印象を聞くと、
「やり手の敏腕経営者というひと言に尽きます。これだけ長いことトップの座にいるわけですから。もちろん、その評価は人によって、さまざまあるでしょうけれど……」
女性アナを正社員として雇用した
日枝氏は、1980年に編成局長に就任。当時は露木氏の直属の上司だったという。
「アナウンサーの待遇改善や、女性アナウンサーを正社員雇用にする計画を日枝氏に提出するといった関わりがありました」(露木氏、以下同)
──上司としての日枝氏は?
「物わかりのいい人でしたよ。だって、女性アナウンサーは1985年に全員が正社員になって、私の提案どおりに実現したのですから」
今もその去就が注目され続ける日枝氏。編成局長時代に“楽しくなければテレビじゃない”というキャッチコピーを掲げると、『オレたちひょうきん族』など人気バラエティー番組が次々と誕生。視聴率トップに長年君臨する“黄金時代”を築いた。
しかし、現在のフジテレビは、広告収入が233億円減を見込んでおり、黄金時代とはかけ離れた状況だ。
テレビプロデューサーの鎮目博道氏に、広告収入減が番組制作に与える影響を聞いた。
「セールス時期の関係で少なくとも7月ごろまで、フジテレビの広告収入は、ほとんどありません。それでもレギュラー番組を続けなければなりませんが、赤字覚悟ということになるでしょう。その場合、例えば10回やるべき収録を7〜8回で済ませて、2〜3回分の予算を浮かせるといった対応が考えられます。そのため、過去の素材を使った総集編が増えるかもしれません」
ドラマやバラエティー番組にも“皺寄せ”
新たな企画をつくるにもお金がかかるため、
「特番や単発番組は制作できなくなり、そうした枠の多くが再放送になってしまう可能性があります。バラエティー番組は、その場しのぎのような厳しい状況になるでしょう」(鎮目氏、以下同)
また、予算の問題だけでなく、情報番組は取材先から断られ、ドラマはロケ場所の協力が得られないという事態が起きており、
「情報番組は企画の幅が狭まります。ドラマは、ロケをしたいシーンでもスタジオの中で撮影をしたり、見せ場のシーンもできる範囲でごまかさなければならない。すると、どうしてもスケールダウンして、内容がつまらなくなってしまいます」
つまり、フジテレビの番組は、今後“楽しくなくなる”と予想され、日枝氏のキャッチコピーに倣うと、それは“テレビじゃない”ということになる。この状況に、日枝氏は何を思うのか─。
鎮目博道 テレビプロデューサー。1992年、テレビ朝日に入社。報道番組プロデューサーなどを経て、『ABEMA』立ち上げに参画し2019年に独立。著書に『腐ったテレビに誰がした?「中の人」による検証と考察』(光文社)など