アストンマーティンは2月5日、イギリスの老舗スポーツカーブランドとアメリカのレーシングチーム、ハート・オブ・レーシング・チームによる“アストンマーティンTHORチーム”のキャンペーンに参加する残りのドライバーを発表。ロス・ガン、マルコ・ソーレンセン、トム・ギャンブル、ロマン・デ・アンジェリスがプログラムに加わることを明らかにした。
■WECハイパーカークラスとIMSA GTPクラスに参戦
アストンマーティンTHORチームは、今季2025年のWEC世界耐久選手権ならびにIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の各トップカテゴリーに『アストンマーティン・ヴァルキリーAMR-LMH』を投入する。このレース用ハイパーカーは、2月28日にカタールで行われる前者の開幕ラウンドにおいて国際レースデビューを果たす予定だ。
その後3月15日にはアメリカ・フロリダ州で開催されるIMSAの今季第2戦セブリング12時間レースにおいて、北米耐久レースに初参戦する。
今回発表された4名のドライバーのうちギャンブルとソーレンセンは、すでにフル参戦ドライバーとして確認されていたハリー・ティンクネル、アレックス・リベラスと合流しWECハイパーカークラスに出場することに。ティンクネルとギャンブルは007号車、ソーレンセンとリベラスが009号車をそれぞれシェアする予定だ。
一方、北米のウェザーテック選手権ではガンとアンジェリスが、GTPクラス唯一のル・マン・ハイパーカー(LMH)規定車となる23号車のステアリングをシェアすることが決まった。
また両名は6月のル・マン24時間レースに向けてWECチームのラインアップを補完し、ガンは007号車のペアに、アンジェリスは姉妹車の009号車に合流する。
さらに、アストンマーティン耐久モータースポーツ部門の責任者を務めるアダム・カーターは、今月末に開催されるWEC第1戦『カタール1812km』でも同様のラインアップを組むのが「現時点での意図」であると記者団に認めた。
なおカーターによると、北米でのデビュー戦となるセブリング12時間をはじめ、ワトキンス・グレン6時間、インディアナポリス6時間、プチ・ル・マン(ロード・アトランタ10時間)が含まれるIMSAミシュラン・エンデュランス・カップでの第3ドライバーを誰が担うかは、まだ決まっていないという。
「いまは目の前にあるカタールのレースが先行している」と同氏は語った。「プログラムが最善を尽くせるよう、検討する時間がある」
「レースプログラムを運営する最善の方法は計画を立てることだが、それだけでなく正しく適応し続けることでもある」
WECとウェザーテック選手権へのエントリーは、アストンマーティンTHORチームのバナーの下で運営され、イアン・ジェームス率いるハート・オブ・レーシングが両シリーズでのオペレーション業務を担当することとなっている。
「スポーツカーレースに携わったことのある人にとって、アストンマーティンで最高レベルのクルマを走らせること、そして世界でもっとも美しいクルマのひとつとして広く認められているクルマ、そしてロードカーの純粋な血統を持つ唯一のクルマを走らせることは、本当に名誉なことだ」とジェームスは語った。
「このプログラムを任されたことは、間違いなくキャリアのハイライトだ」
■世界中のサーキットでテストを実施
トヨタやフェラーリ、プジョーなど、ライバルメーカーが純粋なプロトタイプカーでレースを戦うなか、アストンマーティンは公道走行が可能なハイパーカーであるヴァルキリーの派生モデルをベースにレースカーを作り上げた。この『ヴァルキリーAMR-LMH』は英国シルバーストンに隣接するブランドのテクノロジーキャンパスを拠点に、アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)からの意見も取り入れて開発された。
ほかのLMH規定車や共通ハイブリッドシステムを用いるLMDhカーと異なり、ハイブリッドシステムを搭載せずに6.5リッターV型12気筒自然吸気エンジンのみで走行するヴァルキリー・ハイパーカー初のトラックテストは昨年7月、シルバーストンとドニントンパークで実施された。その後のテストプログラムは、バレルンガ、ヘレス、バーレーン、ルサイル、ロード・アトランタ、セブリング、デイトナで実施され、延べ走行距離は15,000kmに達した。
「つねに先に進むことはできるが、プログラムの進捗状況と私たちが示した信頼性に満足している」とジェームスは語った。
「デザインチームをはじめAMPT、製造チーム、レースチームまで、すべてが統合されているという点でこれ以上ない喜びを感じている」
ドライバーラインアップが発表された5日にはマシンカラーリングも公開され、WECカーはアストンマーティンのトレードマークであるグリーンを基調としたリバリーとなることが分かった。また、ウェザーテック選手権の1台のみの取り組みでは、近年のハート・オブ・レーシング・チームのGTキャンペーンで見られた、特徴的なブルーのカラーリングが維持されている。