食パン×サバイバル!? 異色のグルメ漫画『絶滅世界で食パンを』あおいましろう先生インタビュー

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2025年02月07日 11:11  マイナビニュース

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漫画雑誌『モーニング』で現在連載中の『絶滅世界で食パンを』(著・あおいましろう、講談社)は、絶滅世界で逃亡生活を送る姉妹・イカルとアトリが大量備蓄の食パンに出くわし、アレンジ方法を模索しながら生きていく、新感覚のファンタジー漫画です。

1月22日にコミックス第1巻が刊行したことを記念して、『絶滅世界で食パンを』の作者・あおいましろう先生に、作品構想のきっかけや制作過程でのこだわりを伺いました。

○『絶滅世界で食パンを』著者:あおいましろう先生

コミックDAYSで『ちっちゃい島のでっかいガール』 『仏恥義理ステッチ』 を連載しました。いずれも全3巻発売中。趣味は手芸。 作者X→@aoimashirou

食パンの魅力を伝えたくて、絶滅世界を舞台に選んだ

――『絶滅世界で食パンを』は、タイトルの通り「絶滅世界で食パンを食べる」という独創的な世界観が印象的です。「食パン」を題材に選んだ理由を教えてください。

新しい漫画を描くにあたって、「自分の好きなものを描きたい」という思いがあったものの、趣味の手芸は、前作『仏恥義理ステッチ』ですでに描いていたので、どうしようかなと。いろいろ考えているときに、毎朝食べている食パンが頭に浮かびました。

私は、高級料理よりも身近な食べ物に幸せに感じるタイプなのですが、なかでも食パンには特別な思い入れがあります。というのも、漫画家になる前は長く子育てをしていて、一人になれる時間が本当になかったんです。

慌ただしい毎日のなか、誰もいない早朝に一人、食パンを焼いてコーヒーと一緒に味わう時間は私にとっての癒しの時間でした。その経験から、食パンを今作の題材にしてみようと思い立ったんです。

――なぜ、食パンに絶滅世界を掛け合わせようと思ったのでしょうか?

食パンを題材にするからには、読者の皆さんに「おいしそう」「食べたい」と感じていただける作品を目指したいと思いました。食べ物の魅力を描いた作品がたくさんあるなか、埋もれることなく、食パンのおいしさを伝えたいなと。ただ、シンプルな食パンをモノクロの世界で魅力的に表現するのは、想像以上に難しくてですね……。

そんなとき、「人が心からおいしいと感じるのは、極限までお腹が空いているときではないか」とひらめいたんです。その発想から、飢餓状態という設定を考え、最終的に絶滅世界という舞台にたどり着きました。

――あおいま先生の作品は、絶滅世界で食パンを食べたり、スケバンが手芸をしたり(『仏恥義理ステッチ』)、ギャップが特徴的だなと感じます。ふだんから漫画を描く際はギャップづくりを意識されているのでしょうか。

そうですね。異なる性質のものを組み合わせることは、意識的に取り入れています。

私は漫画家としてまだまだ未熟なので、「どうすれば作品がおもしろくなるのだろう」と常に悩んでいて……。試行錯誤を重ねるなかで思いついたのが、ギャップをつくることでおもしろさを生む方法でした。それが必ずしも正解だとは思っていないので、今も表現方法を模索しながら一歩一歩前に進んでいます。

――漫画家になってまだ日が浅いとのことですが、あおいま先生が漫画家になった経緯を教えてください。

10代の頃から漫画家になりたくて、出版社への持ち込みも行っていました。担当編集がついたものの、厳しいスケジュールや修正の指示に心が折れてしまい……。当時は考え方が甘かったんですよね。一度夢を諦め、アニメ会社やゲーム会社で背景やグラフィックを手がける仕事に携わっていました。

漫画に再び向き合ったのは、子育てがひと段落ついた40代の頃。漫画『弱虫ペダル』に出会ったことが大きなきっかけになりました。「部活動といえば厳しい」というイメージを持っていたのですが、この作品は先輩たちがとても優しくて。それを新鮮に感じたんです。

そこからふたたび漫画を描いてSNSに投稿するようになり、気づけばお仕事の依頼をいただけるようになりました。作品をつくるうえでギャップを大切にしているのは、もしかすると『弱虫ペダル』から受けた衝撃が根底にあるかもしれないですね。
レシピ開発にひと苦労する理由は……

――『絶滅世界で食パンを』1巻で、あおいま先生の気合いが入ったシーンはありますか?

第1話「無敵パン」で、イカルとアトリが備蓄倉庫で見つけた食パンを食べるシーンです。作中で初めて食パンが登場する場面なので、いかにおいしそうに見えるか、細部までこだわって描きました。行儀よりも、一心不乱に食べている方がおいしそうに見えると思ったので、没頭感を表現するために、あえてセリフは抑えめにしています。

――まさに「一心不乱」ですね。しっかり者の姉・イカルと、無邪気な妹・アトリが支え合って生き抜くストーリー、メインキャラクターを姉妹の設定にした理由は?

ふと、姉妹が食パンをおいしそうに食べている画が浮かんだんです。主人公は姉のイカルですが、幼い子が食べているシーンが加わることで、よりおいしさが伝わるかなと。

そのため、妹のアトリは子どもらしさを意識して、天真爛漫に描くことを心がけました。「子どもってこんな感じだよな」という知見は、過去の子育て経験が活きていると思います。

――制作において苦労したポイントを教えてください。

イカルとアトリが逃亡生活を送るストーリーなので、食パンをどう食べさせるかいつも悩んでいます。食糧難の絶滅世界が舞台だと、トッピングに使える食材が限られているんです。定番のとろけるチーズもこの世界には存在しないので。

かといって、同じトッピングが連続するとおもしろみがないので、毎回新しいレシピを考えるのは本当に大変で……。食パンをおいしく見せるために絶滅世界を舞台に選んだものの、最近ではその設定に苦しめられることも多いですね(笑)。

ちなみに思いついたレシピは漫画に描く前に一度つくってみることにしています。ラスクのような「飴パン」レシピは、氷砂糖を実際に潰してみて、問題ないことを確認してからストーリーに落とし込みました。

――ちなみに、あおいま先生おすすめの食パンアレンジは?

食パンにゆずジャムとクリームチーズをのせたアレンジです。実家でゆずがたくさん採れるので、それを使ってジャムをつくっています。甘さ、酸味と苦味のバランスがちょうどよくて、お気に入りの組み合わせです。食パンは、ふわふわ柔らかいときはそのまま、賞味期限が近づいたらトーストにして食べるようにしています。

――あおいま先生や作品公式のXアカウントでもたびたび食パンアレンジを投稿されていますね。とろけるチーズをたっぷり乗せたアレンジはイカルとアトリが見たら大喜びしそうです。

【2話まで無料公開中】モーニング 新連載『#絶滅世界で食パンを 』。コミックDAYSで第2話まで無料公開中!中の人のけさの朝食写真(チーズパン)とともにどうぞ!第1話「無敵パン」https://t.co/vFGV3Wwc5R第2話「目玉焼きトースト」https://t.co/6stUaiMeFX#コミックDAYS #絶パン pic.twitter.com/JTlghH1m2I— 【1巻発売!】『絶滅世界で食パンを』あおいましろう作品公式 (@bigmikuru) October 20, 2024

――最後に、マイナビニュース読者にメッセージをお願いします。

シリアスな設定ではありますが、「食パンがおいしそうだな」「明日の朝は食パンにしよう」といった気軽な気持ちで読んでいただければうれしいです。物語が進むにつれて、さまざまなアレンジが登場しますので、どのような食べ方が出てくるのか、そちらも楽しみにしていてください!

『絶滅世界で食パンを』、最新話は「モーニング」および「コミックDAYS」で連載中。1月22日には、待望のコミックス第1巻が発売されました。

「食パンをいかにおいしく見せるか」という点にとことんこだわったという本作。主人公たちの逃亡劇の合間に繰り広げられる、食パンのアレンジシーンや実食シーンは必見です!

『絶滅世界で食パンを』1巻は、Amazonをはじめ各種書店・電子書店で好評発売中。

○『絶滅世界で食パンを』(あおいましろう/講談社)

食パン食べて終末世界サバイバル!
世界は滅びてしまったが、運よく(?)生き残ったイカルとアトリの姉妹。二人が生活していた「ソゴシエの里」には訳あって戻れない。
退路を断った二人はサバイバル生活に転じるが、生きることは食べること。食べ物がないと未来はない。
そんな時に出くわした、食パンの大量備蓄。
喜びも束の間、二人にとって食パンは未知のもの。食べ方すらわからない姉妹の、食パンと格闘する旅が始まる!

最新話は「モーニング」および「コミックDAYS」で連載中。1月発売のコミックス第1巻はAmazonをはじめ各種書店・電子書店で好評発売中です。気になった方はぜひチェックしてみてください。

(c)あおいましろう/講談社(しばた れいな)

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