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NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。2月2日に放送された第五回「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」では、前回、版元の仲間入りをすることができなかった主人公“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)がいったん立ち止まり、再スタートを切る姿が描かれた。
この回で特徴的だったのは、突っ走る蔦重が全面的に物語をけん引していた前回までと異なり、周囲の人物にもスポットを当てていたことだ。その一番手が、サブタイトルにもなっている唐丸(渡邉斗翔)だ。
元々唐丸は、第一回冒頭で火事の際に蔦重に助けられ、記憶喪失ということで一緒に蔦屋で働き始めた少年で、その素性は不明。そんな唐丸の前にあやしい浪人が現れ、「(自分の過去を)何も覚えていない」という唐丸に「じゃあ教えてやろうか。お前がどこの誰で、あの日、何をしたか」と脅してくる。やむなく言われるまま、店の金を盗んで男に渡した唐丸だが、その後も繰り返し現れることに悩んだ挙句、思い余って男と一緒に川に飛び込んでしまう。
男の水死体が上がり、唐丸が消息を絶ったと知った蔦重は、「うすうす気付いていたんだよ。なんも覚えてねえのはうそで、なんか隠してんじゃねえかって。(中略)無理やりでも言わせていたら、こうならなかった」と後悔する。だが、幼なじみの花魁・花の井(小芝風花)から「わっちは、唐丸は、親元に帰ったんだと思ってるけどね」と励まされ、「いつか、ふらっとここに戻ってくんだよ。蔦重、おいらに描かせてくれ、って。で、俺はあいつを謎の絵師として売り出す」と気を取り直す。
この回では結局、唐丸は行方不明のままで、どのような形で再登場するのかわからないが、絵の才能を発揮した唐丸の正体について、SNSでは「将来の写楽か?それとも、歌麿か?」などと話題になっている。その真相については今後の展開を見守るとして、唐丸の存在が蔦重にとって出版業を続ける大きなモチベーションになったことは間違いない。
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そしてもう一人、この回で蔦重に新たな一歩のきっかけを与えたのが、平賀源内(安田顕)だ。秩父の鉱山で進めていた鉄の精錬がうまくいかず、出資者たちから資金の返還を迫られた源内は、鉄を諦め、炭の販売に切り替えようとする。そこで、炭屋の開業に必要な“株”を買えないかと蔦重に相談。その話を参考に、自分も株を手に入れて版元の仲間入りを…と考えた蔦重だったが、書物問屋の須原屋市兵衛(里見浩太朗)から、「地本問屋の株は存在しない」と指摘され、断念。代わりに「どこかの問屋で奉公してから、のれん分けしてもらえばいいのでは」とアドバイスを受け、鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)お抱えの「改(あらため)」になる話を承諾する。
このように、蔦重の成長に絡めて唐丸や源内にスポットを当ててくれたおかげで、彼らも蔦重と同じように自分の意志で行動する人物であることが実感でき、世界観が広がっていく手応えがあった。ほかにも、この回冒頭に登場した女郎のうつせみ(小野花梨)と小田新之助(井之脇海)のかわいらしいカップルの行く末はどうなるのか。あるいは、後の“鬼平”のはずが、花の井に入れあげて親の遺産を食いつぶし、視聴者から“カモ平”のあだ名を頂戴した長谷川平蔵宣以(中村隼人)は今後、どのように登場するのか。視聴者それぞれに、気になるキャラクターが出てきたに違いない。放送開始から1カ月が経ち、物語を彩る多様なキャラクターも徐々に際立ってきた。蔦重だけでなく、そんなキャラクター一人一人の行く末も楽しみだ。
(井上健一)
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