“医療×転生”? 飽和する“転生マンガ”に変化球で挑んだ理由「なり手の少ない救急医を増やしたい」

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2025年02月08日 08:40  ORICON NEWS

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LINEマンガ『ドクタークエスト 転落医師、転生して最強医師になる』(C)nifuni
 昨今のエンタメ作品で外せないジャンルといえば「転生もの」。すでに飽和状態でありながら、これまでにない特徴的な作品も増えている。そんななか、リメイク版『左ききのエレン』(集英社/原作・かっぴー)で話題になった漫画家nifuni先生初のwebtoon『ドクタークエスト 転落医師、転生して最強医師になる』が話題だ。昨年12月からLINEマンガで連載がスタートした本作。医療ものという、ただでさえ強力なコンテンツに、なぜ“転生”を掛け合わせたのか?脚本の森崎洸貴先生(※崎はたつざき)、作画のnifuni先生に話を聞いた。

【漫画】医療×転生”って一体どんな話? これが意外に…衝撃の第1話

■医療作品で“救急医を増やしたい”なぜ「転生」を加えた?

 『ドクタークエスト 転落医師、転生して最強医師になる』は、医師として働く神堂薪人が、同じく医師であり大病院の院長だった父親の急な死を機に、人生が転落。身体的にも精神的にも崩壊し、ついには命を落としてしまった…はずだった。しかし次の瞬間、目を覚ますと…そこは父親もまだ生きている12年前、研修医時代の自分に回帰転生していた…。ECCM(救急×集中治療)を舞台に繰り広げられる医療サクセスストーリーとなっている。

――「医者×転生」の組み合わせは珍しく思います。本作の着想のきっかけを教えてください。

森崎先生 きっかけは“救急医を増やしたい”という思いです。本作には千葉大学病院さんに監修に入ってもらっているのですが、その救急の先生の方から、「医療もので救急医志望の方を増やしたい」というお話が寄せられました。鈴ノ木ユウ先生によるドラマ化もされた産婦人科医もの、『コウノドリ』(講談社)という作品がヒットした時、産婦人科医志望の方が激増したというんですね。そういった経緯で「医者×転生」の組み合わせの物語づくりが始まりました。

――確かに救急医療はとても大変な現場…というイメージがありますね。最近では医学生も、働き方や収入の面で安定した美容医療に進む人が増えているという話を聞いたことがあります。実際、救急医療の方から今作の反響はいかがですか?

森崎先生 ありがたいことに若い救急医の先生方から「一読者として楽しんでます」「応援しています」というコメントはいただきます。実は、ご監修いただいてる実際の病院内の雰囲気はとても穏やかで、先生方もすごく温厚な方ばかり。そのためにストーリー展開上、悪役の医師を登場させたり、院内を苛烈な現場として描かなければいけないことにドキドキしていたんですが、すごく肯定的にとらえてくださっているようでありがたく思っています。

――「医療もの」というだけでも、十分魅力的なテーマだと思いますが、そこに「転生」を組み合わせたのはなぜでしょうか。

森崎先生 「医療もの」が描けるもの…もっというと医師という仕事の根源的な魅力は「命を救えること」だと思っています。一方で転生ものの魅力は…タイムリープものでもそうですけど、「やり直しがきくこと」。これを組み合わせると、本来では取返しのつかない人の生死に関わる仕事、なかには後悔しするような出来事が起こる仕事で、「これ以上ないようなやり直しがきく」ことを描けるのです。医療ものの魅力を最大化してくれるという意味で、医療と転生の相性はすごくいいのでは、と結果的に思えています。

――作画を担当したnifuni先生はこのアイデアを聞いてどう思ったのでしょう。

nifuni先生 自分の中では出てこない発想だったので、正直すごくびっくりしました。私は医療ものは初めてだったのですが、とてもチャレンジングなお仕事になるのではないかと思いました。

■「身近なのに異世界みたい」、医療扱う難しさと面白さ

――転生ものとして作画で工夫された点は?

nifuni先生 例えば第1話だと、その後「やり直し」に至るためのカタルシスが必要です。なので、どれだけ悲壮感が出せるか? ということに注力しました。現実の嫌な感じをどれだけ出せるかで、これからやり直すことができる希望とのギャップが描けたらと思っていて。それを目指して第1話は何度も直しましたね。

――医療ものの難しさと面白さもお聞きしたいのですが。

nifuni先生 医学という学問や学術の分野に関わること。また、命という、とても責任が伴う医師という職業を扱うことです。医療は、私たちの生活にも身近なので、別世界のこととして楽しむのも限度があるといいますか。フィクションと、現実のさじ加減はとてもデリケートな部分ですね。だからといって、リアルであればいいかといえばそうでもなく。根拠や裏付けがある上で、どういう表現をしたら楽しんでもらえるかを考えました。

森崎先生 nifuni先生がお話されたように、調べものが多いのは大前提。実際にある病気や症状などを扱うので、たとえ同じ症状になった人が読んでも楽しめるように…というのが悩むポイントでした。さらに、医療の課題や困難な部分を共有できているか?は意識しています。それを考えながら作るのは、少し難しかったですね。

――面白さは?

森崎先生 医療って身近な存在でもあるのに、その奥にはまったくの別世界が広がっている感じがするところでしょうか。診療でよく目にするけれど、裏側には異世界がある。壁一枚先に生死をかけたドラマティックなところがあるという面では面白いジャンルだと思います。


――なるほど。医療ものはさまざまなエンタメ分野で一大ジャンルとして成立しています。だからこそ多くのユーザーが求めるし、それを描くクリエイターも多い。

森崎先生 そうですね。例えば、描きたい内容を考えた時にお医者さんに話を聞くと、一つの症状に対しても人によって意見や、アプローチの仕方が違うということもあって。お医者さんによって正解が違うこともあるというところも、お話が面白くなる要因なのかなと思います。

■「女性キャラの周辺で何かがあると、物語が動く」、浮かび上がる社会問題も

――お気に入りのシーンなどありますか?

nifuni先生 描いていて面白いなと思うのは、ちょっとコミカルなシーン。ようやくキャラクターが動き始めて、今後キャラと読者の距離感を近しくするシーンが入ってくるのですが、そういったコミカルでほんわかする日常シーンを描いていると楽しいなと感じています。

――森崎先生のキャラ配置のうまさもあるように思います。

森崎先生 例えば小沢という悪役がいるんですけど、“小者”にならないよう気をつけています。悪役ならではの“色気”みたいな部分もあると思うんですけど、そのへんは担保していきたいですね。

 あと女性キャラクターの配置は気にしているかもしれません。女性キャラの周辺で何かがあると、自然に物語が動く面があります。それは誰かの病をキッカケに、この社会で女性が“背負わされている”役割や偏見が浮かび上がってくることがどうしても多いから。女性キャラに魅力を感じてもらうことで、それに紐づく周りのエピソードに興味を持ってもらえたらと思っています。

──nifuni先生の絵についてもお聞きします。前作『左ききのエレン』は、線がやわらかくほんわかした絵柄の印象を受けました。今作はwebtoonならではのパキッとしている印象を受けましたが、作画のこだわりはありますか。

nifuni先生 前作は私のデビュー作だったので、さまざまな試行錯誤、手法を試しながら描いていったところがあります。そこで徐々に掴んできた感じを、本作のテーマやキャラの演出に生かしている感じです。あとは、プラットフォーム上のサムネイルで出てきたときに、「映える画とは?」ということも考えてチューニングしているつもりです。

──最後に、読者へメッセージをお願いします。

nifuni先生 これからもチーム一丸となって頑張りますので、気軽な感じで読んでいただけますとうれしいです。

森崎先生 とにかく、「なんか面白かったな」と思ってもらえたら一番いいなと思って作っています。そこに向けて色々仕込んでおりますので、期待して読んでいただけたら…。あとは、これを読んで医師になりたいという方が増えるとうれしいですし、ぜひそのような方はコメントもいただけるとありがたく思います(笑)。

取材・文/衣輪晋一

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