ボサノバ女王、小野リサ 現地の歌を現地の言葉で歌う 言葉って素晴らしい

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2025年02月10日 07:49  日刊スポーツ

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デビュー35周年を締めくくるスペシャルコンサートを前に本紙インタビューで心境を語ったボサノバ歌手の小野リサ(撮影・たえ見朱実)

<情報最前線:エンタメ 音楽>



“ボサノバの女王”小野リサが、3月20日に東京・日本青年館ホールでデビュー35周年を締めくくるコンサート「小野リサ〜Bossa World Standards〜35th Anniversary Final」を開催する。1989年(平元)にアルバム「カトピリ」でデビュー。日本のボサノバの第一人者が、自らの足跡を振り返り、ギターを弾きながら歌う。その思いを聞いてみた。【小谷野俊哉】


★父に託された夢


小野の音楽のルーツは2012年に88歳で亡くなった父敏郎さんだ。ミュージシャンを志した敏郎さんは、かなわずに1958年にブラジル・サンパウロに移住。クラブ「ICHIBAN」を経営していたが、72年に帰国した。74年12月には東京・四谷に日本初の本格的なブラジル料理と音楽の店「サッシペレレ」を開いた。渡辺貞夫、中村八大さん、坂本九さんなどとも交流があった敏郎さんは、ブラジルからミュージシャンを呼び、サッカーの王様ペレさんの招聘(しょうへい)にも尽力した。


その敏郎さんが自分の夢を託したのが、長女のリサだった。


「父はブラジルの文化や音楽を日本に広めて、その楽しさを知ってもらいたいと思っていました。私はブラジルにいる時は学校ではポルトガル語、家では日本語。両方の文化の中でブラジルにいても日本の文化の中で育って、10歳で日本に帰ってからも、父がブラジルのお店をしている中でブラジル音楽をやり始めて、両方の文化にずっと携わってきました」


★89年にデビュー


子供の頃から音楽が好きだった。


「私は幼稚園で習ってきた歌を一日中歌っているような子でした。日本に帰ってきてからも、ブラジルから持って帰ってきた10枚くらいのアルバムをずっと聞いていました。テレビはピンク・レディーがはやってましたが、それは妹が大好きで聞いてました(笑い)。私は15歳からギターを始めて、サンバも歌いましたけどボサノバの方が合っていたんです。すぐに『サッシペレレ』で人前で歌うようになりました。それから、徐々にいろいろなジャズのライブハウスに出かけて歌っていました」


89年にアルバム「カトピリ」でデビューした。24年からの35周年を締めくくるのが、東京・日本青年館ホールでのコンサートだ。


「ずっと、ポルトガル語で歌うことにこだわっていました。ポルトガル語を忘れたくなかったんです。その後、音楽の旅と題して、いろんな国の歌を歌うようになり、今では日本の歌も歌うようになりました」


★「ギターが一番」


ブラジル文化が身近にある環境で育ったが、まだ日本でボサノバは知られていなかった。道を切り開きながら歌ってきた。


「ボサノバをやるにはギターが一番。ブラジルではサンバはやっぱり踊りから入ってきた音楽。でも、サンバがあったからこそボサノバが誕生した。ボサノバの父といわれる、ジョアン・ジルベルト(1931〜2019年)が現れて、サンバのリズムにクラシックやジャズをミックスして演奏したことがボサノバの始まり。大きな特徴は歌い方。声を張り上げずに、語るような歌い方。歌い上げるというよりは、演じるようなイメージです」


35周年の締めのコンサートでは、ボサノバにこだわらずに歌う。


「ボサノバから始まって、いろいろな国の曲を歌おうと思っています。毎年、レパートリーもリニューアルしています。アメリカンソングを交えて、日本の歌も、母の時代の『一杯のコーヒーから』(1939年)とかを入れて、私のテイストにします」


20年前に行った台湾で大きな転機があった。


「テレサ・テンさんの『いつの日君帰る(何日君再来)』という曲を、アンコールの時に中国語で歌ったんです。みなさん大変喜んでくれて、その時に言葉の大切さを知りました。言葉というものは、こんなに人を動かすものなのかって。それで、いろいろな所に行くたびに、現地の曲を現地の言葉で歌うことを始めたんです。その結果、日本でも『いのちの歌』とかを日本語で歌って、自分でも感動しました。本当に言葉って素晴らしいなと思います」


★いろいろな国に


昨年暮れから今年にかけて中国ツアー。広州、珠海、上海、北京などでコンサートを行った。


「アジアの国では『プリティ・ワールド』っていうアルバムから、いろいろな国の曲を歌っています。まだまだ、いろいろな国に行って歌ってみたいという気持ちがありますよね。できる限り、死ぬまで歌いたい。なかなかね、大変ですけどね」


デビュー当時の自分に言葉をかけるとしたら、何と言うのか。


「不安というのはなかったんですけど、デビューした当時は、どうしてもポルトガル語で歌いたかった。もう少し周りの声を素直に受け入れれば、よかったのかなとも思う。でも、こだわりというのが、その時の私には必要だったのかもしれないです」


こだわりを持って、これからも歌い続ける。


◆小野(おの)リサ ブラジル・サンパウロで生まれ、10歳の時に日本へ。15歳からギターを弾きながら歌い始める。1989年(平元)アルバム「カトピリ」でデビュー、シングル「YOU’RE SO UNIQUE」リリース。99年アルバム「ドリーム」が20万枚を超えるヒット。91、93、07、09年に日本ゴールドディスク大賞「ジャズ部門」を4度受賞。13年にブラジル政府からリオ・ブランコ国家勲章を授与。23年に80曲収録のオールタイムベストアルバム「Amor pela Bossa Nova The Best of Lisa Ono」をリリース。


◆小野リサ〜Bossa World Standards〜35th Anniversary Final


▼日時 3月20日午後3時30分開演


▼場所 東京・日本青年館ホール


▼出演 小野リサ(ギター&ボーカル) 林正樹(ピアノ) クリス・シルバースタイン(ベース) 岩瀬立飛(ドラム) グスターボ・アナクレート(サックス) ルイス・バジェ(トランペット) 和田充弘(トロンボーン) 小沼ようすけ(ギター) カレブ・ジェイムズ(ゲストボーカル)

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