耳をぴくぴく動かす「退化した筋肉」、ある状況で活躍しており意味があった ドイツなどの研究者らが発見

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2025年02月10日 08:31  ITmedia NEWS

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 ドイツのザールラント大学などに所属する研究者らが発表した論文「Electromyographic correlates of effortful listening in the vestigial auriculomotor system」は、人間の耳介筋(耳の周りの筋肉)の活動と音を聞き分けようとする際の脳の働きとの関係について調査した研究報告である。


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 人間は耳を動かす能力が退化したが、この特徴を支える筋肉や脳神経の一部は現代の人にも残っている。最新の研究では、これらの耳介筋が音を聞き分ける際の生理学的な指標として機能している可能性を示唆している。


 この研究では、20人の健常な参加者(平均28歳)を対象に実験を行った。参加者は防音空間内で、前方または後方のスピーカーから流れる目的の音声(50dBの女性話者)を聞き取りながら、同時に再生される妨害音声を無視するように指示を受けた。その際、参加者には耳に電極を取り付け、上耳介筋と後耳介筋の筋電図を記録した。


 実験は3つの難易度で実施。全条件において目的の音声は50 dB LAeq(騒音レベルを示す単位)の女性話者で一定とされた。最も簡単な条件では目的の音声より10dB小さい1つの妨害音声(40 dB LAeq、男性話者)、中程度の条件では2dB小さい2つの妨害音声(45 dB LAeq、女性話者と男性話者)、最も困難な条件ではSNR(信号対雑音比)が-2dBとなる2つの妨害音声(49 dB LAeq、女性話者と男性話者)を使用した。


 研究の結果、上耳介筋の活動は、最も困難な条件で有意に大きくなることが判明した。これは、人間が音を聞き分けようと努力する際に、耳の形を変えようとする原始的な反射が働いている可能性を示唆している。一方、後耳介筋は音源の位置に反応し、音が後方から来る場合に活動が大きくなった。


 Source and Image Credits: Schroeer A, Corona-Strauss FI, Hannemann R, Hackley SA and Strauss DJ(2025)Electromyographic correlates of effortful listening in the vestigial auriculomotor system. Front. Neurosci. 18:1462507. doi: 10.3389/fnins.2024.1462507


 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2



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