幅広いカテゴリーで活躍を演じてきた女性ドライバーの先駆者的存在であるキャサリン・レッグ 今週2月13日木曜から本戦出場を賭けた“ザ・デュエル”が始まり、同16日日曜には伝統の開幕戦『デイトナ500』を迎える2025年のNASCARカップシリーズだが、これまでシングルシーターやスポーツカーレースなど、幅広いカテゴリーで活躍を演じてきた女性ドライバーの先駆者的存在であるキャサリン・レッグが、その週末に併催されるARCAメナーズ・シリーズにデビューすることが決定。
デイトナのオーバルでレースに出場するのは初めてとなる彼女は、レースでより多くのチャンスを見つけるために「あらゆること」をしたいと意気込み、将来的なストックカー最高峰への挑戦も明言した。
自身初のデイトナ・デビューに向け準備を進めてきたイギリス・サリー州出身のレッグは、2005年のトヨタ・アトランティック・シリーズでロングビーチを制したのを皮切りに、2023年にはNTTインディカー・シリーズのハイライトである『インディアナポリス500』で史上最速の女性予選通過者に。
近年はIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権でも活躍を演じ、アキュラNSX GT3 Evo22をドライブするとともに、昨季2024年は北米ホンダが展開するHRC USの一員としてDE5型『アキュラ・インテグラ・タイプS』のステアリングを握り、コロラド州が誇る伝統のイベント、PPIHCパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムにも出場した。
フォーミュラやスポーツカー、GTで腕を磨いてきた彼女にとって、ストックカーに乗るのは初めてではないものの、その経験は2018年のエクスフィニティ・シリーズで4戦、2023年の1戦と合計5戦に限られ、そのうち4戦はロードコース、残りはリッチモンド・レースウェイのショートトラックという偏ったシートタイムしかない。
それでも「一歩ずつ進んで、どうやってそこにたどり着くかを見極める必要があると思う」と、あらゆる種類のレーストラックでレースに出場できるよう、 NASCARのプロセスで勝ち進むことに集中。北米における“メモリアル・デイ(戦没将兵追悼記念日)”の週末に、インディカーとNASCARカップシリーズの“ダブル”にチャレンジする野望も明かした。
「私はすべてのことをやりたい。『デイトナ500』に出場したいし『コカ・コーラ600』にも出場したい。NASCARにもっと出場したい。インディカーにももっと出場したい。スポーツカーにもさらに出場したい!」と続けたレッグ。
「私は差別主義者ではないし、どんなカテゴリーにも興味を抱けることは本当にクールだと思っている。ただ、自分ではそうありたいと願っているけれど、私はカイル・ラーソンじゃない」
「今季のチリ・ボウル(例年1月にオクラホマ州で開催される年間最大規模の屋内ミジェットカーの祭典。2025年はラーソンが通算3勝目を獲得)で彼を観たけれど、その瞬間、自分がとても取るに足りない存在だと感じ、彼の才能の深さにただただ畏敬の念を抱いた」
「でも、それって本当にクールなことじゃない? 私はそんな彼が本当にクールだと思う。だから自分も決して諦めないし、そう言い続けたいと思う」
ここまでトップフォーミュラやスポーツプロトタイプ、さらにGTやツーリングカーなど、あらゆる車種を乗りこなしてきた彼女にとって、これらの経験はストックカーに挑戦する際も利点になりうることを認識している。
「ええ、そうね。そして、それは私をより良いドライバーにしてくれるし、実際にストックカーは私が今までに経験したなかでも最高にクールな体験のひとつよ」
今回のデイトナではシグマ・パフォーマンス・サービス(SPS)から参戦するレッグは、シートフィッティングのためにシャーロットへ向かう際、デイトナ24時間で5勝を挙げ北米のスポーツカー・シーンで数々の栄誉を誇るアンディ・ラリーを帯同。現在トランザム・シリーズを率いる彼が持つNASCAR出場経験をもとに、万全の準備を整えた。
「彼は私と一緒に行って、どこに座ればいいかなど、いろいろ教えてくれた」と続けたレッグ。「シートフィッティングに臨んだけれど、彼らはきちんとしていて、すべてがスムーズに進んだ。私は『これは奇妙だ。こんなことはまずない。何が起こっている? まるで別の宇宙に住んでいるよう』と思ったわ(笑)。それぐらい、彼らは素晴らしかった」
そのレッグとチームは、デイトナでの2日間のテストに参加した70チームのうち、最速の上位15チームに入り、彼女はチームのすべてがいかに組織化されていたか、そしてクルマがいかに優れていたかを繰り返し強調し「これまでで最高の日のひとつ」と評した。
「最高にクールよ。ストックカーをドライブするのが大好き。数年前にエクスフィニティで数回ドライブしたけど、もっと運転したいと思った。NASCARではライセンスを取得する必要があるし、彼らから見れば、私はロードコースやストリート、ショートオーバルへの参戦資格がある程度。いきなり『デイトナ500』に出たい、なんて言っても無理な話ね」
「エリオ・カストロネベスなら別で、その場合は彼らは『ええ、もちろん、あなたのために新しいルールを作りましょう』と言うでしょうけれど(笑)」
だからこそ、これまでオープンホイール出身者がNASCARで競争力を示してきたのと同じく、デイトナでのARCAでのレースは彼女にとってチャンスであり、同時に結果を残すことに緊張もしていると明かす。
「うまくいけばいいな。そして、NASCARが『これで次のレース、次のレースも出場する資格ができた』と言ってくれるくらいうまく戦えればいい。そんなチャンスがあれば、その上、さらに上を目指せるから」とレッグ。
「でも何が起ころうと、この経験がまた私をもっと良いドライバーにしてくれる。経歴が充実するし、こういうクールなことをやりたくない人なんていないでしょう? 私はただ運が良かっただけ。本当にワクワクしているわ」