日本カーリング選手権大会 横浜2025は、母となって3年ぶりに日本選手権のアイスに戻ってきた吉村紗也香率いるフォルティウスの優勝で幕を閉じた。
吉村が出産を無事に終えたのは、2023年の12月。昨夏の稚内みどりチャレンジカップで実戦に復帰すると、同大会でいきなりファイナル進出を決め、ブランクを感じさせないショットメイクで大会MVPを獲得した。
そんな鮮烈なカムバックを果たしながら、吉村は「自分の投げにはまだ甘さがある。チームとして、後攻でしっかり複数点を取るために、コーナーの使い方を意識していきたい」と、今季の課題を話していた。
それが、まさに日本選手権の決勝で花咲いた。
北海道銀行との決勝で、勝負の分かれ目となったのは6エンドだ。リードの近江谷杏菜がコーナーへ布石を打つと、サードの小野寺佳歩が1投目でフリーズ気味のカムアラウンド(※ガードストーンの後ろに回り込むショット)をハウス内のコーナーに止める。さらに2本目で、ハウス内センターの石を打ってコーナーへ隠すヒットロールという好ショットを揃えた。
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すると、吉村は1投目をハウス内の中途半端な位置に置いた、ように見えた。
吉村は試合後、「相手がセンターに(石を)入れたがっていたので、(2投目で)使える位置に置いた」とその意図を語ったが、北海道銀行のフォース田畑百葉が使ってないラインに2投を費やし、センターガードの裏にほぼ狙いどおりのカムアラウンドを決め、あわやスチール(※先攻チームが得点すること)という展開となった。
だがそれこそ、吉村としては想定どおりだった。自らが投じた1投目の石を叩いて、田畑の投じたナンバー1ストーンをテイクアウト。決して簡単なフィニッシュではなかったが、冷静に決め、デザインどおりのエンド構成で3点を挙げた。
その後、北海道銀行が8エンドにスチール、最終10エンドにも2点を追加して同点。食い下がる若手チームを相手に、フォルティウスの持ち時間は1分を切ってしまったが、「時間は把握していましたし、2点(取られるの)はOKだと思っていた」と吉村は冷静だった。エキストラエンドに突入しても、吉村はシンプルショットを次々と指示し、それをチームメイトたちが淡々と遂行し勝ちきった。
また、優勝後の取材対応で吉村は「やれることはすべてやってきた」と、今季ここまでを振り返った。氷上では、アリーナアイスの情報共有やコーナー戦への意識を高めてきたが、「やれること」はそれだけにとどまらない。
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大会中は良質な睡眠や食事を摂るために、ホテルではなくキッチン付きの宿泊施設を利用。小野寺の母、セカンド小谷優奈の母、フィフス小林未奈の母らも駆けつけて、毎食エネルギー豊富で消化のいいメニューを作った。
コーチボックスには、カーリング界の"KING"ことニクラス・エディンと、船山弓枝コーチが並び、白井一幸メンタルコーチも横浜に集結。総力戦で4年ぶりの日本一を勝ち取った。
チームは、3月15日に開幕する世界選手権(韓国・議政府)に日本代表として出場する。「一つひとつ高みを目指して積み重ねたら、メダルも圏内かなと思う」と小野寺が言えば、近江谷も「自分たちは、世界のトップ(クラス)に入っている自信がある」と力強く語る。
その戦いは、ミラノ・コルティナ五輪へと続くのか。注目したい。
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