追い越し禁止の道路であおり運転した挙句に“当て逃げ”。運転手が警察に捕まり謝罪に来るまで

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2025年02月12日 16:21  日刊SPA!

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※写真はイメージです
 ニュースなどで頻繁に取り上げられる「あおり運転」。被害者の精神的苦痛は深刻であり、トラウマにもなりかねない。
 自動車損害保険を扱うチューリッヒ保険の『2024年あおり運転実態調査』によれば、あおり運転をされたことがあるドライバーは72.5%であった。2023年の53.5%よりも大幅に上昇し、半年間でも24.1%と多くのドライバーがあおり運転に遭遇していることがわかった。

 今回は、実際にあおり運転に遭遇した2人のエピソードを紹介する。

◆交通違反の「左車線から追い越し」

 柿田直道さん(仮名・40代)は、3車線の高速道路を走行していたときに、あおり運転に遭遇した。

「私は真ん中の第2走行車線を走っていました。そこに猛スピードで迫ってくる車がいたんです。どの車も法定速度で走っていたので、3車線すべてが混雑していました。そのことにイライラしていたんだと思います」

 蛇行運転をしながら柿田さんの車に近づいたり離れたりを繰り返したという。

「正直、かなり危険な状態だと思いました。でも、車を止めて先に行かせることができないので、とにかく相手を挑発しないように心がけて運転をしていました」

 あおり運転は5分ほど続いた。柿田さんは“とにかく事故が起きないように”と祈ることしかできなかったそうだ。

 そして、左側の第1走行車線が少しだけ開いた。あおり運転の車は、その瞬間を見逃さなかった。

◆渋滞を引き起こしていたのは…

 その車は、減速しながら様子を確認した後、急加速したという。法律で禁止されている左側車線からの追い越しを行い、車線変更を繰り返した。

「ほかの車をどんどん追い抜いていきました。一歩間違えれば大事故につながりそうで恐ろしかったですね」

 やっとあおり運転から解放された柿田さんは、ため息をついた。そのとき、信じられないことが起こった。

「第1走行車線で追い抜かれた車が、“赤色灯”をつけたんです」

 覆面パトカーの登場に、柿田さんはずっと疑問に思っていた“渋滞の原因”がわかったという。

「覆面パトカーに気づいていたドライバーたちが次々と減速したことで、3車線すべてが混雑するという、不思議な渋滞を引き起こしていたんです。そして、それに気づけなかった人がイライラを抑えきれずに、あおり運転をしていたんだと思いました」

 覆面パトカーに見事に捕獲されたあおり運転の運転手。その後、警察に誘導され、強制的に高速道路からおろされたようだ。

 はじめて見た覆面パトカーに、柿田さんはテンションが上がっていた。

「思わず、『ざまぁ見ろ!』という言葉が出てしまうくらい、ものすごくスカッとしました」

◆SUVが無謀な運転を繰り返した挙句…

 奥野恵子さん(仮名・30代)があおり運転に遭遇したのは大学生の頃。当時、大手飲料メーカーで短期アルバイトをしていたという。

「アルバイトは、飲料メーカーの社員さんとペアで、自動販売機の清掃と缶ジュースの補充をする仕事でした。私たちは営業車に乗って移動し、業務をしていました」

 業務が終わり真っすぐな長い道を10分ほど走ったとき、大きなSUVが近づいてきた。徐々に距離を詰められ、追い抜こうとしてきたそうだ。

「でも、走っていた道は追い越し禁止だったんです。私たちは法定速度を守っていましたが、極端に遅いというわけではなかったと思います」

 SUVは、その後も距離を詰めて運転を続けていたが、いったん距離が離れたことで、奥野さんは安心した。

 しかし、安心したのも束の間……。前方の信号が赤になり停車すると、SUVはそのまま後ろから突っ込んできたのだ。

「ぶつかった衝撃で、私はダッシュボードに頭を打ちました」

◆まさかの“当て逃げ”

 事故直後、SUVは奥野さんたちの前へと進んでいったという。つまり当て逃げ。停車することなく、そのままスピードを上げて走り去ってしまったのだ。

「私は、とっさに車番と車種を会社支給の制服に書き込みました」

 警察に通報し、事情聴取が行われた。奥野さんが、相手の車番と車種を伝えたところ、すぐにあおり運転の運転手が警察に捕まることに……。

「警察署に行くと運転手の男性がいたんですが、たばこを吸っていて反省の色がまったく見えませんでした。でも、警察の取り調べで“飲酒運転”だったことが発覚したんです」

 参加した町内の会合で「一杯くらいなら」という気持ちで、ついつい飲み過ぎてしまったようだ。免許は一発で取り消され、罰金を支払うことになったそう。

 そして、奥野さんが療養中に男性が謝罪に来たという。

「警察署で見た姿とは打って変わって、憔悴しきっているようでした。一方の私は、アルバイトの期日まで療養でお休みをもらい、治療費として当初予定されていた給料の倍の金額が支給されることになりました」

 幸い、病院の検査では異常はなく、奥野さんも社員もすぐに退院することができた。

——自己中心的な運転が思わぬ事故につながってしまうのだ。私たち一人ひとりが交通ルールを守り、周囲に配慮して運転する必要がある。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

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