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埼玉県八潮市の県道交差点で道路が陥没してトラックが転落した事故で、県は12日正午、県東部12市町の約120万人に求めていた下水道利用の自粛要請を解除した。事故発生から約2週間。節水に協力してきた住民や飲食店の間に安堵(あんど)が広がる一方、転落した70代男性運転手の救助や復旧は長期化する見通しで、今後を心配する声も聞かれた。
「ゆでたそばを洗う水をなるべく減らして、排水を少なくしていましたね」
12日昼過ぎ、現場近くの老舗そば屋「更科」の伊藤秀樹さん(50)は、そばつゆを仕込みながら、この2週間を振り返った。店では水をためて食器を洗い、毎日の厨房(ちゅうぼう)掃除では水をまかず、掃き掃除と消毒で節水に努めてきた。
「不眠不休で活動しているから」と消防署に栄養ドリンクも差し入れたという。県は救助のため、陥没現場に流れ込む汚水を迂回(うかい)させるバイパス(仮排水管)を設置する工事に取り組むが、完了には約3カ月かかる見通しだ。伊藤さんは「まだ要救助者が取り残されているので、今後も極力排水を控えようと思います」と語った。
現場付近のステーキ店「ミスター・バーク八潮店」の藤方敦史さん(44)は「どうしても(食事を提供する)鉄板を洗わざるを得ない。(解除で)洗い物をする抵抗感は多少、和らいだ」と胸をなで下ろした。この日は自粛解除を聞きつけて常連夫婦が来店。飯尾伸吾さん(61)は「解除と聞いて久しぶりに食べに来ました」と食事を楽しんでいた。
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市内で約30年間営業する美容室「カットスタジオ・モアナ・ラニ」では通常2回のシャンプーを1回に減らし、タオルの洗濯も2日に1回にした。店のオーナーは「地元のお客さんが多く、快く受け入れてくれて助かった。来週くらいから徐々に通常に戻していきたい」と話した。
周辺市町では、事故後に休止していた公共施設の浴場を再開する動きも。埼玉県白岡市の老人福祉センターには自粛解除の報道後、「浴場再開はいつか」との問い合わせが数件あり、13日から再開することにした。
一方、現場付近の住民ら14人は現在もホテルで避難生活を送る。水道管内の水量を減らすため汚水を直接川に流す緊急放流についても、県は「可能な限り早期に終了できるよう検討する」(大野元裕知事)としているものの、当面は継続する見通しだ。
緊急放流が続く埼玉県春日部市のポンプ場近くに住む70代女性は「先週は臭いがきつくて、窓を閉め切っても気になり外に洗濯物も干せなかった。早く何とかなればいいのだが……」と困惑。別の女性は「臭いは気になるが、まだ救助されていない人がいるので仕方ない」と話した。【田原拓郎、安達恒太郎、萩原佳孝】
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