エンジニアとして長く活躍する上で大切な「2つのこと」

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2025年02月14日 07:11  @IT

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ボク、頑張るよ!

 最近、複数の「中堅・ベテランで活躍しているエンジニア」たちと話す機会がありました。それぞれの個別具体的な話は避けますが、エンジニアだったら誰もが知っているであろう日本のIT政策に関わるような機関で働いている責任者や、聞けば誰もが知っているであろう企業の情報システム部門のマネジャーのような方々です。


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 「責任者」「マネジャー」という言葉に、「現場を離れた人」といった印象を抱く方もいるかもしれません。しかし、彼らはいまもエンジニアリングの最前線で働く人々です。かつ、日々多くのエンジニアと接しています。


 それぞれが働いている業界は全く異なり、話す機会も別でした。しかし、「長く活躍できるエンジニア」の話になった時、その内容が驚くほど一致していました――。


 今回は「長く活躍できるエンジニア」にとって大切なことをお話しします。その話は、大きく分けると2つに大別できます。1つ目は、エンジニアとして仕事をする上での「視点」。もう2つ目は、関係者と接する時の「言葉遣い」です。


●エンジニアに大切な「視点」


 1つ目の「視点」について。


 ある情報システム部のマネジャーは次のように言っていました。「多くのエンジニアは、技術的なことだけがエンジニアの仕事だと思っています。もちろん、技術的なことも大切です。しかし、エンジニアとして大成するためには、技術的なこと以上に、業務や経営(ここでいう経営とは、会社の方向性のこと)に対する深い理解が必要です」


 この話を聞いた時、僕は、若かりし時の自分を思い出しました。プログラマーだった僕は、技術的なことに強いこだわりがありました。コードの書き方はもちろん、効率面やメンテナンス面などについても、「いかに美しく書くか」“だけ”にこだわっていました。もちろん、プログラムを書く上では、業務のことも多少は知る必要はあります。顧客から課題をヒアリングし、それを解決するためにはどうすればいいのか? も考えます。ですが、視点が業務よりも技術に向いていました。


 なぜ、技術的なことだけでは大成できないのか? それは、業務の深い理解がないと、「そもそも、なぜこの業務はこうなっているのか?」「業務における、構造的な問題があるのではないか?」といった、業務そのものの目的や意味まで視点が広がらず、全体を最適化できないからです。


 マネジャー氏は、こう続けます。


 「エンジニアは、『このプログラムをどのように実装するか』といった、個別具体的な内容と、『この業務の目的や意味は何か』『他の業務との相互関係性は何か』といった抽象度が高い内容との間を行ったり来たりしながら仕事をします。技術的な視点に加えて、業務の深い理解が必要なのは、そのためです」


●関係者と接する時の「言葉遣い」


 2つ目の「言葉遣い」について。


 あるIT部門の責任者は次のように言っていました。「エンジニアの中には、IT業界にいないと分からない横文字を多用する人がいます。エンジニア同士の会話なら、むしろ専門用語を使った方が速く理解できる場合が多くあります。ですが、全ての人が専門的な知識を有しているわけではありません。『この人は優れているな』と思う人は、相手に合わせて、相手が分かる言葉で説明します。仕事をスムーズに進めるためには、相手に理解してもらったり、巻き込んだりする必要があるケースも多いからです」


 自分の若かりし時を振り返ると、これも痛い指摘でした。「虚勢を張る」ではありませんが、若い頃はむしろ好んで、専門的な横文字を使っていたような気がします。


 もっとも、だから僕はエンジニアとして大成しなかったのかもしれませんが(笑)。


●どうしたら「視点」と「言葉遣い」は身に付くのか?


 そこで、ある問いが浮かびました。「どうしたら、このような『視点』と『言葉遣い』が身に付くのだろうか?」


 「顧客の業務に関心を持つ」「丁寧にヒアリングする」「小学生でも分かるぐらいの言葉遣いを意識する」など、幾つかの方法が思い浮かびます。ですが、どれもありきたりといえば、ありきたりです。また、「意識する」というのは簡単だけど、「意識」だけではなかなか行動に結び付かないことを、僕は経験的に知っています。


 普段から実践できることはないだろうか?


 いい方法だなぁと思う1つ目のアイデアは、「いろいろな人と関わる」です。


 先日会った社会人1年目のエンジニアは、「社外のいろいろな勉強会に参加しています!」と話していました。その勉強会ではLT(ライトニングトーク:5〜10分程度の短いプレゼンテーション)があったそうで、彼がLTで話したプレゼン資料を見せてもらいました。


 そこに並んでいたのは、IT業界で働いている人たちが好んで使う言葉たちでした。言い方を変えると「IT業界の人以外には難しそうな言葉」です。参加した勉強会は、恐らくエンジニアたちが集う場だったのでしょう。


 視野を広げる上で、社外の勉強会に参加するのはとても良いことです。一方で、同じ業界の人同士だと、同じような特性、同じような言葉遣い、同じような興味関心を持つ人たちとの会話になります。


 視野を広げたり、多くの人に伝わる言葉遣いを実践したりするためには、エンジニアの枠から飛び出してみることが有用です。時には、全く異なる環境の人たちが集まっていそうな勉強会に参加してみるのもいいかもしれません。最近は、越境学習という、所属する組織や職場を離れて異なる環境で学ぶことで新たな視点や知識を得る学習が注目を集めています。


 2つ目のアイデアとして、僕が実践している方法を紹介します。それは「毎日、自分の考えを言語化して発信する」ことです。


 僕はいま新潟に住んでいて、地方の人口減少や人材不足に課題感を持っています。この問題を解決するためには、テレワークで地域外の人たちと働く環境を作ったり、デジタル化を進めて業務を効率的にしたりする必要があると考えています。しかし新たな取り組みは、周囲から「言っていることは分かるけどねぇ」と、なかなか理解されないことも多いものです。


 そこで僕は、「こういったことが課題だと思っている」「そのためには、こうすればいいんじゃないかと考えた」など、自分の考えを毎日言語化し、音声や文字に起こして発信しています。


 だからといって、すぐにどうこうなるものではありませんが、少なからず、できるだけ多くの人に届くことを願い、繰り返し言語化することで、自分の意見の解像度が高まりましたし、第三者に伝えるトレーニングにもなっています。実際、全く縁がなかった方から「その意見、分かります」と声を掛けられることがあります。


 毎日となると労力がかかるため、継続はなかなか大変ですが、人に説明する力を付けるアイデアとしてご紹介しました。


●自分の「持ち味を生かして働く」ためにも


 ここで触れた内容は「そんなこと、分かっているよ」という内容ばかりだったことでしょう。


 しかし、いろいろな経験をしてきて思います。大切なのは、その“当たり前”を愚直に継続することなんじゃないか、と。抽象度の高い視点と言葉遣いを身に付けるために、いまできそうなことから始めれば、自分の持ち味を生かしつつ、長い間活躍できるようになれるのだと思います。


●筆者プロフィール


しごとのみらい理事長 竹内義晴


「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


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