サム・ウィルソン(演:アンソニー・マッキー)の吹替を担当する溝端淳平=『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(公開中)(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc. 2025年、スーパーヒーロー映画は“新時代”に突入する。その幕開けを飾るのが、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(14日より公開中)だ。
【動画】「アベンジャーズ再建を手伝え」本編映像
何が新しいって?『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年)からキャプテン・アメリカとして活躍してきたスティーブ・ロジャース(演:クリス・エヴァンス)が、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)のラストでヒーロー引退を決め、“正義の象徴”である盾を託したサム・ウィルソン(演:アンソニー・マッキー)が、キャプテン・アメリカとして本格デビューするのだ。日本版では、これまでサム・ウィルソンの日本版声優を務めてきた溝端淳平の続投が決定。いったいどんな物語で楽しませてくれるのか、収録を終えた溝端を直撃した。
――昨年、シンガポールで開催された「ディズニー・コンテンツ・ショーケース2024」で、アンソニー・マッキーさんと初めてお会いしたそうですが、その感想や今回のアフレコに与えた影響について教えてください。
【溝端】お会いした感想ですが、とてもフランクな方でした。イベントが終わった後にアフターパーティーがあって、ごあいさつに行ったら、「10年以上も吹替をやってくれてありがとう。写真撮ろうよ」とアンソニーさんから言ってくださって、写真を撮ることになりました。さらに「今度日本に行ったらおごってもらわないと」と冗談まで言ってくれて(笑)。そんな気さくな一面に触れられて、とてもうれしかったです。
次の日、プロモーション用の対談の収録でお会いしたのですが、そのときは完全に仕事モードでした。キャプテン・アメリカを継ぐという彼の並々ならぬ覚悟が伝わってきて、昨夜とはまるで別人のような緊張感がありました。とても誠実にインタビューに答えてくださいました。気さくで周囲に気配りができる一方で、すごく意志が強い、「やっぱりサム・ウィルソンに通じる人だな」と感じました。
彼と直接お話しできたことで、僕もこの役を11年演じてきたという思いが改めて強くなりました。サム・ウィルソンというキャラクターについて彼自身の思いを聞けたことは、今回の吹替をする上で大きなプラスになっていると思います。
――溝端さんの吹替も“バージョンアップ”を期待していいのですね。
【溝端】本当に不安だらけでした。今回、キャプテン・アメリカという主役を演じることは、いちファンとしてすごくうれしかったのですが、普段は俳優業がメインなので、声の仕事はまだ経験が浅いんです。特に今回は「キャプテン・アメリカ」という役柄ですから、責任が大きくて…。
吹替は『エンドゲーム』以来だったので、10年以上ご一緒している監督に「今の僕の声で大丈夫ですか?」と相談したら、「10年前より経験を積んで声も変わっている。年齢を重ねた今だからこそ、逆にちょうどいいんじゃない?」と言ってくださったんです。その言葉で少し気持ちが楽になりました。ただ、マイクの前では日々試行錯誤の連続でした。自分の未熟さに苛立ちながらも、なんとか頑張ってやり遂げました。
――新キャプテン・アメリカの映画が作られることについて、当初から予想はされていたのですか?
【溝端】原作があるので、「多分そうなるんだろうな」と予想はしていました。ただ、実際にどうなるかはわからなかったです。でも、『エンドゲーム』でサムが盾を受け取るシーンは素敵でしたし、「いずれ継ぐだろう」とは思っていました。ただ、予想していることと実際にその瞬間を迎えることは全然違いますね。
――本作では、ほぼ出ずっぱりですよね。それに対するプレッシャーは?
【溝端】僕の声が作品の良さを損ねてしまったらどうしよう、という不安が常にあります。吹替版をご覧になる方は、ずっと僕の声を聞くことになるので、「絶対に失敗できない」というプレッシャーがアフレコ中にもありましたし、今もあります。
――主演の経験も多いと思いますが、吹替は違いますか?
【溝端】全然違います。吹替は本当に別のスポーツをやっている感覚です。映像を見ながらせりふを言い、秒数を意識し、人の芝居に合わせる…頭がショートしそうになります。それに、昨日の声と今日の声が違うと感じることもあって、それをどうコントロールするかも含めて、日々発見の連続でした。
――『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014年)でサム・ウィルソン役に抜てきされた当時を振り返っていかがですか?
【溝端】当時からMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)はすごく人気がありましたし、その中でも人気のキャプテンの相棒で、場を和ませる役を演じられることがうれしかったです。それから11年経って、同じ役で、しかもその役が成長してキャプテン・アメリカになるなんて!このご縁をありがたく感じます。
■2025年はスーパーヒーロー映画が続々と公開
――今年は『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』を皮切りに、スーパーヒーロー映画の新作が続々と公開されます。楽しみにしていることは何ですか?
【溝端】まず『ブレイブ・ニュー・ワールド』で「新しいキャプテン・アメリカ」を成立させることが大事だと思います。スティーブ・ロジャースは誰もが思い描く古典的なヒーロー像でしたが、サム・ウィルソンは今の時代にあった新しいヒーローだと感じます。サムは優しく、退役軍人のカウンセラーをやっていたりして、人の気持ちを察することに長けています。ただ、頭がいい分、人よりも悩むことが多い。何かを決断するにも迷いがちです。その「悩み続ける姿」がサムの魅力でもあると思います。周りに寄り添いながら、逆に周りも彼に寄り添いたくなるようなリーダー像は、新しい時代のリーダー像だと感じます。
また、今後のマーベル作品の展開も本当に楽しみです。本格的に新しいフェーズに入るんだな、とワクワクしています。昨年ロバート・ダウニーJr.がMCUに再登場するということが発表されましたが、すごく夢がありますよね。全く予想はつきませんが、それもマーベルの魅力だと思います。子どもの頃に夢見たような「こんな展開があったら面白いね」という話を現実にしてくれるのがMCUのすごいところ。今後もずっとワクワクできる展開が続くのが楽しみです。
――2022年に亡くなったウィリアム・ハートさんが演じていたサディアス・ロス役をハリソン・フォードが引き継ぐこととなり、米国大統領として登場する本作ですが、見どころを教えてください。
【溝端】ハリソン・フォードさんが出るだけで、映像にプレミア感が出ますよね。彼が演じるロス大統領の存在感は本当にすごいと思いました。今回の物語では、サムがキャプテン・アメリカとして重責を抱えながら、自分に自信を持てずに葛藤する姿が描かれます。「自分がキャプテンでいいのか?」とずっと悩みながら、それでも前に進もうとする姿が人間的で、とても共感できるんです。
また、ロス大統領のキャラクターもこれまでとは少し違った面が見られるんです。これまではどちらかというと嫌われ役でしたが、今回は自分の過去の行動を後悔する部分が描かれていて、それが娘との関係性やサムとの絡みに影響してきます。2人の男の物語が非常に魅力的で、今回の大きな見どころだと思います。
さらに、サムとホアキン・トレス(2代目ファルコン/演:ダニー・ラミレス)、イザイア・ブラッドリー(演:カール・ランブリー)とのやりとりもとても印象的です。イザイアはかつて30年間投獄され実験された超人兵士だった過去を持つキャラクターで、サムにとっては父親のような存在。サムの彼への尊敬や、ホアキンとの師弟関係など、人間関係の描写がとても素敵です。もちろんアクションも見どころですが、キャラクター同士のやりとりが本当に魅力的で、最後の戦いの終わり方には度肝を抜かれました。「こういう終わり方もあるのか!」と驚きましたね。それがまたサムらしい展開なので、ぜひ楽しみにしていてください。
――ところで、溝端さんご自身は昨年、ドラマで意外な役どころも多かった印象ですが、今はどんなフェーズなのでしょうか?
【溝端】正直、自分でもわからないです(笑)。後から振り返ると「ああ、あの時はこういうフェーズだったな」と気づくことが多いんです。目の前の仕事を一生懸命やるだけですが、ここ1〜2年で感じるのは「面白い役をいただくことが増えた」ということですね。これまで「品行方正で爽やか」というイメージの役が多かったように思うのですが、昨年はドラマ『全領域異常解決室』での京都弁を話す嫌味っぽい火の神様の役だったり、『外道の歌』でのアフロヘアのキャラクターだったり、『民王R』の永田町のプリンス役だったり(笑)。観てくださる方々が驚いたり、楽しんだりしてもらえるような役や作品にどんどん挑戦していきたいと思っています。