
アメリカ大統領サディアス・ロス(ハリソン・フォード)が開く国際会議でテロ事件が発生。それをきっかけに生まれた各国の対立が、世界大戦の危機にまで発展してしまう。この混乱を食い止めようとするキャプテン・アメリカことサム・ウィルソンに、“赤いハルク”と化したロス大統領が襲いかかる。『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』が、2月14日から全国公開された。本作の主人公サム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)の声を吹き替えた溝端淳平に話を聞いた。
−『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)以来の吹き替えとなりましたが、今のお気持ちは?
ファルコンの声をやらせていただいて約11年になります。『〜エンドゲーム』でキャプテン・アメリカから盾を受け取って、今回、新キャプテン・アメリカとして帰ってこられたことがものすごくうれしい気持ちと、今まで背負ってきたものとは全然重さが違うので、それに対するプレッシャーと半々という感じです。だから、今までよりも、もっと自分を研ぎ澄ませて集中して挑んでいかないと超えられない壁だと思いますし、僕もMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)のいちファンなので、自分の吹き替えによって作品のよさを損なうことだけは避けたいと思っています。
−11年間、サム・ウィルソンを演じてきて彼の魅力についてどう感じていますか。
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14)は、サムがスティーブ・ロジャースと一緒にランニングをしているシーンから始まるのですが、スティーブは血清を打っているから、サムは何周も抜かれてしまいます。スティーブと比べて特殊な能力は何も持っていないサムというのがこのシーンで象徴されます。でもサムは、退役軍人のカウンセラーをやっているぐらいだから、とにかく人の心を察するのが得意な優しい人なんです。なぜスティーブがキャプテン・アメリカの盾をサムに渡したのかというのも今回のテーマの一つなんですけど、サム自身の葛藤が丁寧に描かれているので、今回はそれが十分に伝わると思います。サムの魅力は、本当に優しい人間としてのリーダー像。あとは基本的にとても頭のいい人だと思います。周りが見えるが故に悩んでしまうところもサムの魅力だと思います。
−今回、吹き替えをするに当たって心掛けたことや気を付けたことはありましたか。
吹き替えの経験が11年あるとはいえど、声優さんたちに比べればやっている本数は少ないです。そういう意味で言うと、やっぱり声だけで表現するのはとても難しいです。しかも役者さんに合わせてやることについては日々勉強です。今回もそうですが、なるべくお芝居に近い感覚で、自分もその場にいることを想像しながらするようにはしています。音だけを当てるというふうにやると、プロの方のような技はできないので、音だけに頼らないようにしています。
−サム役のアンソニー・マッキーのイメージは?
とてもお芝居が繊細なのでちょっとした息遣いやニュアンスも意識しています。だから変に音をきれいにはめ込み過ぎないように、なるべくリアル感のある、生々しい自分の声でやらなければという印象があります。
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−サムの新たな役割についてどう考えていますか。
サムの今後については、やっぱりキャプテン・アメリカはアベンジャーズのリーダーですから、それを継承したことで今後の役割の変化もあると思います。今までのサムはサポーターであり、バランサーでもありましたが、今後に関しては、恐らくリーダー的な立ち位置で引っ張っていくのではないかと思っています。
−収録で印象に残ったことはありましたか。
サムもキャプテンになりアンソニーさんの体もたくましくなっていたので、「今の僕の声で大丈夫ですか」という話を監督としました。そうしたら「溝端くんも『ウィンター・ソルジャー』の時よりも年齢も重ねて声も低くなっているから、ちょうどいいと思う」とおっしゃっていただきました。ちょっとしたニュアンスを監督と相談しながらやっています。ディスカッションをしながらやるのは大変ですがすごく楽しいのでとても充実感のある収録になっています。
−本作の印象をお願いします。
今回は、サムとハリソン・フォードさんが演じるロスという2人の男がテーマです。この2人の男の葛藤が見どころだと思います。脚本を一読してまず思ったのは、スティーブを継承しているところもあるけれど、新しいキャプテン像というところにいい意味で裏切られたと思いました。
−ロス役のハリソン・フォードについてはいかがですか。
もちろんロス大統領は今までも出てきましたけど、今回ハリソン・フォードさんがやるということで、やっぱり画面に登場するだけでプレミア感が満載でした。彼はスーパースターだから、すごく存在感と迫力があって、重厚なお芝居をされるので、そこも魅力だと思います。何といってもハリソン・フォードがレッドハルクになるわけですから。
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−本作の注目点や楽しみにしてもらいたい点があれば。
キャプテン・アメリカ対レッドハルクは、ファンが喜ぶところだと思いますし、僕も興奮しました。あとはスピード感のあるアクションシーンや空中戦もあるので、そこもたっぷり見ていただければと思います。見どころは、もちろんサムの人間的な魅力もそうですが、サムとロスとの関係性や葛藤ですね。それから30年間幽閉されていたイザイアという黒人のキャプテン・アメリカが出てきます。そのイザイアとサムとの関係性も、時には親子のようでもあり、尊敬し合っている仲間でもあり、おじいちゃんと孫のようでもありというところがすてきだと思いました。
−溝端さんにとってのマーベル映画のイメージはどういうものですか。
子どもの頃に、スパイダーマンやアイアンマンといったヒーローたちが一同に会することを誰もが一度は夢見たことがあると思います。そんな子ども心を継承したまま成立させているのがプロデューサーのケビン・ファイギだと思います。ここでスパイダーマンやアイアンマンが出てきたら面白いよねということを念頭に置いて作り上げているプロジェクトだと思うので、そこが一番の魅力ではないでしょうか。それに加えて、その裏に隠されているヒーローたちの葛藤や人間ドラマ、あとは大河ドラマのように継承していく人と人とのつながり、ヒーロー同士のつながり、受け継いだ思いみたいなものが、長きにわたって描かれているので、ファンはさらにハマっていくポイントだと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)
