勝田貴元が「次元の違う走り」で掴んだ2位。チームが求める仕事と勝ちたい本音/WRCスウェーデン

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2025年02月17日 16:50  AUTOSPORT web

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勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2025年WRC第2戦ラリー・スウェーデン
 2月13日から16日にかけて、北欧スウェーデン行われた2025WRC世界ラリー選手権の第2戦『ラリー・スウェーデン』にて、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)から参戦した勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合2位表彰台を獲得した。

 勝田にとっては、これまでにサファリ・ラリー・ケニアで2度の2位表彰台を獲得しており、今回が3度目となる自己ベストタイの結果となった。

 ラリー後に日本のメディア向けに開かれたリモート取材会にて勝田は、第2戦での優勝争いを振り返るとともに、2位フィニッシュに繋がった昨年からの成長ポイントやチーム内での自身の現在地について語った。

■優勝を逃した“本当の”ターニングポイント

 2025年シーズンとなってマシンはノンハイブリッド仕様となり、供給タイヤもハンコック製のものに変わったことで、第2戦は「いつも以上に不安要素の多い開幕前」となっていたという勝田。そんなかでも、本格的な戦いの始まるデイ2にはセッティングがうまく機能し始めたようで調子が上向き、いきなりトップ争いを展開した。

「不安要素を抱えたままでしたが、金曜日が始まってからは予想以上にクルマが良い感じに動いてくれて、SS2から2番手タイムを刻む事ができました」

「アイスのステージでは遅れてしまう場面もありましたが、それでも今までの経験も踏まえて午後に取り返そうと狙って。予想通りに2ループ目は走りやすくなって、そこで一気に総合4番手からトップにも上がることができました」

 ライバルのスパートにペースを乱されないように努め、先の展開を予想しながら落ち着いて上位争いを繰り広げたというデイ2。続くデイ3は、30秒以内に上位6台が収まる激しい戦いのなかで迎えたが、デイ2よりも新雪の増えたコンディションとなったこの日は、各クルーにとって試される一日となった。

「土曜日のデイ3は、マシンの動きに苦戦してしまいました。アンダーステアが強い傾向ですごく乗りづらく、ライバルとの差が広がってしまいました」

「そのため、昼のサービスでは新しいセッティングも試していったのですが、それでも満足なフィーリングにはならず、とあるコーナーではエンジンストールしてリバースギヤでコースに戻るというミスもありました」

「データ上では、ここで5〜6秒くらいのロスがあったみたいなのですが、『遅れを取り返さないといけない』とスイッチが入ってその後に攻めたこともあって、なんとか3〜4秒差に抑えられたと思います。痛手だったとは思っていますが、他のライバルにもタイムロスはあったのであまりタラレバは言いたくないですね」

 勝田は、優勝に届かなかった要因はこういったミスではないと語った後に、今大会で自身に課されたターゲットと、最終日にエバンスと繰り広げたアタック合戦における積極性の関係について続ける。

「前戦ラリー・モンテカルロでのリタイアを踏まえた今回のターゲットは、“クリーンなラリーをして、クルマを持ち帰ること”でした。なので、なるべくライバルを意識せずに自分のペースを守った走りを意識した1週間でした」

「最終日は1本目で調子が良かったためにトップに上がることができたのですが、2度目の走行では荒れたコンディションを予想して、自分に課されたターゲットのためにも消極的な走りをしてしまいました」

「世界トップの選手と戦うには、そこでエクストラなプッシュが必要だったのだと思います。エルフィン(・エバンス)選手はこのタイミングで良い走りをしたので、(最後から2本目の)このステージがターニングポイントになったなと思っています」

■結果に繋がった、リスクマネジメントの進化

 勝田がチームとともに掲げている『完走最優先』とも言える姿勢は、昨シーズンに速さを見せながらも結果に繋げることができなかった経験から来ている。

 悔しいラリーが続いた昨年は、チャンピオン経験のある僚友カッレ・ロバンペラやセバスチャン・オジエらの走りから多くを学び、プッシュしながらもリスクを管理していく能力を磨いてきた。その結実として今大会のラリーを見れば、デイ3でタイムロスを負いながらもリズムを乱すことなく、高いプレッシャーの中で手にした2位は成長の証と言える。

 勝田は、リスクマネジメントにおける進化の実感を次のように言葉にした。

「一昨年や昨年と比べると、次元の違う走りになったと思います。2年前とはもう、比べ物にならないくらいのところで走っています」

「今回のようなハイスピードラリーは、コーナーでのボトムスピードが2〜3キロ遅いだけで、次のストレートで1秒失うような世界です。少しクルマに違和感があるだけでも、簡単に5〜6秒失います」

「そんななかで数秒差を争いながら、リスクに対応する技術も増えてマネジメントできるようになった部分を感じていますし、今回もいい経験になったと思います」

 着実な成長を実感しながら手にすることができた2位表彰台について勝田は、「嬉しい気持ちもありますし、ラリー・モンテカルロでのリタイアも考えると良いラリーになったと思います」とポジティブに表現した。その喜びは、渇望する初優勝へ向けた大事な一歩としても捉えている様子だ。

「本音の本音を言えば、今回は勝てるポテンシャルがあったとも思っています。ただ今年は、自身を抑制する戦いが求められています」

「こういったラリーを続けていければ、チームからも『プッシュしてきていいよ』という言葉ももらえると思うので、こうした戦いを続けていきたいと思います」

 TGR-WRTのボスであるヤリ-マティ・ラトバラ代表は、ラリー後のインタビューで「タカはラリーに勝つ準備ができた」とコメントして今大会での走りを賞賛した。チームに認められる実力を結果で示し始めた勝田の、初優勝を見据える眼光はかつてないほどに鋭い。

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