グラミー賞で可視化された“異常過熱するファン同士の争い” 音楽にも分断の波が…?

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2025年02月17日 20:10  TOKYO FM +

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グラミー賞で可視化された“異常過熱するファン同士の争い” 音楽にも分断の波が…?
ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40〜18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。

2月12日(水)のテーマは「グラミー賞がアメリカに分断をもたらしている? 異常過熱するファン同士の戦いにNYのZ世代が懸念」。先日おこなわれたグラミー賞の結果について、ラボのメンバーたちが意見を交わし合いました。


※写真はイメージです



◆今年のグラミー賞はSNSで過去最高の盛り上がり

2025年2月2日(現地時間)におこなわれた第67回グラミー賞は、近年にない盛り上がりを見せました。テレビ視聴率は去年より下がりましたが、反対にSNSでの盛り上がりは史上最高を記録。その理由の1つは、ノミネートされたアーティストの熱烈なファンと一般リスナーを巻き込んだ、分断と言っていいほどのクレイジーな戦いにあります。

最優秀新人賞にはチャペル・ローン、年間最優秀楽曲賞と年間最優秀レコード賞はケンドリック・ラマー、年間最優秀アルバム賞にはビヨンセが輝きました。ラボのZ世代もほぼ全員テレビ中継ではなく、YouTube shortsなどSNSでチェックしたそうですが、彼らのハイライトはなんだったのでしょうか?

メアリー:SNSでチャペル・ローン、サブリナ・カーペンター、チャーリーXCXのパフォーマンスを見た。マイリー・サイラスがビヨンセの受賞を発表したり、ケンドリック・ラマーが勝ったところも。それからレディー・ガガがブルーノ・マーズと一緒に受賞して、ドーチも受賞してよかったよ。パフォーマンスはサブリナ・カーペンターズが最高だったな。彼女はいつもコメディタッチで本当に面白くて、派手で大げさなところに逆に味がある。

ミクア:受賞した場面はSNSでほとんどチェックしたよ。ケンドリック・ラマー、ビヨンセ、サブリナ・カーペンター、ドーチのパフォーマンスは全編見たけどすごく良かった。それからもう1人、名前はわからないけど、曲はそこら中で流れていて青い服を着た彼……そうベンソン・ブーン。彼はピアノの上からバク転したり、突然服を着替えたりと意外で良かった。

2人が話したように、テレビ中継でチェックした人は少ないものの、SNSのトレンドに上がっている受賞の瞬間の映像などでチェックした人が多かったようです。


(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab



◆ファン同士のけなし合いが過熱するのは危険

賞の行方について、音楽ファン以外でも強い関心を持ったのが、ビヨンセとケンドリック・ラマーです。まずは、ついに年間最優秀アルバム賞を受賞したビヨンセについて、ラボのメンバーの反応を見てみましょう。

メアリー:え? もしかしてビヨンセにとって初めてのアルバム賞だったの?

ミクア:その通り。彼女がアルバム賞を受賞したのはこれが初めてだよ。

メアリー:なぜだかわからないけど、私はいつも、彼女がとるべきアルバム賞を、他の人に持って行かれたような、変な気持ちがずっとしていたんだよね。

ミクア:正直、今年彼女が受賞するとは思っていなかった。ビリー・アイリッシュが勝つと思っていたから。だからちょっと驚いたけど、彼女は間違いなくアルバム賞を受賞するに値すると思う。

でも、このアルバムで受賞するとは思っていなかった。『カウボーイ・カーター』はいいアルバムだけど、彼女の他の作品と比べると、力強さがないというか、全然違うような気がする。でも彼女がついに受賞したのは嬉しいことだよ。

「ビヨンセはなぜアルバム賞を取れないのか」という話題は長年論争になっており、これまでアルバム賞を受賞したアーティストとビヨンセのファン同士がSNS上でけなし合うことも。そのため、ついにビヨンセが受賞したことで「ほっとした」と感じている人もいます。

では、ケンドリック・ラマーの受賞についてはどうでしょうか。

ミクア:大ファンとまでは言わないけど、彼の音楽が本当に好きなんだ。だから受賞は本当に嬉しいし、この曲は本当に好き。それに同じラップ界でスーパースターのドレイクをディスっている曲なのが面白いよね。ドレイクがこれまでに取ったグラミーは5つなんだけど、ケンドリックは彼をディスる曲で、主要部門で5つのグラミーを一夜にして受賞してしまった。ドレイクはたまらないだろうね。

シャンシャン:ケンドリック・ラマーとドレイクって、彼らの間にどんなドラマがあるの?

メアリー:ドレイクは最初、ラッパーのトップ3は俺と誰々だ……みたいなことを言っていた。そうしたらケンドリックが「ビッグなのは俺1人だけ」って言ったから、ドレイクが「よくそんなこと言えるな、俺だってクールなんだぜ」と言い返したのが始まり。その後、ドレイクがケンドリックについてたくさんの曲を発表して、詳しいことは忘れちゃったけど、去年の夏はそれでめちゃめちゃ盛り上がったんだよ。

シェリー:2人の音楽でのディスり合いがすごかったよね。

ミクア:そう。何度もあった。

メアリー:面白いんだけど、ちょっと危険な感じもするんだ。それがエスカレートしたおかげで、確かボディガードか誰かが撃たれたよね。

ミクア:それは問題だと思う。自分の好きなアーティストにすごく熱くなって、もちろん気持ちはわかるんだけど、入れ込みすぎだと思うよ。多くの人がビヨンセを嫌っていて、そしてビヨンセのファンはビリーを嫌っているし、そういうネットでの攻撃がすごい。

応援しているアーティストを愛しているのはわかるけど、なぜそんな言い争いになるんだろう。どっちもいいアーティストだよ。でも勝つのは1人で、決めるのはファンではなく審査員。だから私はグラミーがあまり好きじゃないのかも。

ケンドリック・ラマーはもともとピューリッツァー賞を受賞するほどの実力派ですが、ドレイクとのビーフがむしろケンドリックの人気を高め、日曜日に行われたスーパーボウルのハーフタイムショーに出演するまでビッグになりました。 

同時にこうした論争が若い世代のグラミーへの関心を高め、SNSが過熱したのは間違いないでしょう。しかし、それが「ファン同士のけなしあいや暴力にまで発展しているのは危険」というのが、ラボのZ世代の意見でした。

SNS時代だからこそかもしれませんが、楽しいはずの音楽がファンの間に分断をもたらしています。「今アメリカで起きている政治的な分断とも、似ている部分がある気がします」と、シェリーは話題を締めくくりました。

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2月12日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2025年2月20日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40〜18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/
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