Spotify O-EASTでは、 DJ STYLISH a.k.a. 鎮座DOPENESSがオープンにふさわしく、その名の通りイカした選曲で会場を温めていた。宮崎美子「今は平気よ」、郷ひろみ「君の名はサイコ」など、和物を中心とした選曲が会場に鳴り響く。そこから、U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESSのライヴへと突入。ステージに3人が揃ったところで、一曲目にライヴ初披露となった、坂本氏の「enegy flow」のピアノソロに2人のリリックを載せたバージョンというスペシャルな内容でスタート。インドから帰ってきたばかりのU-zhaanのタブラ演奏と、トランペットや他の楽器などをその場で演奏・録音、ループさせた音の上で、環ROYと鎮座DOPENESSによるスキルの高いラップのキャッチボールが始まり、「七曜日(Nana-Youbi)」「にゃー feat.矢野顕子」などをリズムに合わせマイクフロウ。途中、「ギンビス」のワードのフロウにU-zhaanから環ROYへやり直しが出たりして、そのやりとりに会場が和み、ステージと来場者の間の距離が一気に縮まりいい雰囲気に。そしてラストは「エナジー風呂」でライヴをしめてくれた。
U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS
そこから、80年代後半から坂本氏と交流の深いTOWA TEIのDJへ。「TECHNOVA」「MILKY WAY(feat.RYUICHI SAKAMOTO & YUKALICIOUS」をはじめとした自らの楽曲から、「WAR HEAD」「千のナイフ」などの坂本氏が手がけた楽曲を中心にプレイ。終盤にはMCも入りつつ、ラスト2曲は、今年の春にリリースが予定されているY.M.Oのライヴ盤(1979年グリークシアター)より「BEHIND THE MUSK」、そして「い・け・な・いルージュマジック」でプレイを終えた。
TOWA TEI
そして韓国からこの日のためにやってきたSE SO NEONが、会場の空気を変えオルタナティヴロックの世界へ。生前の坂本氏は、ニューヨークの自宅で当時まだ無名だったSE SO NEONのライヴをテレビで目撃し、「彼女はすばらしい才能がある」とすぐに検索。同年夏にセントラルパークで行われたライブイベントに足を運び、楽屋を訪ねて自己紹介をするところから始まった。坂本氏とSE SO NEONの縁は、以降ソウルや東京、NYでお茶をしたり食事をするなど交流を深めていたという。そんな彼らのライヴは、ボーカル兼ギタリストのファン・ソユンと、ベーシストのパク・ヒョンジン、そしてサポートドラマーのキム・ヒョンギョンの3ピースで決行。爆音で鳴り響くギターのリフとドラムにヴォーカルが浮遊するようにのり、軽快なグルーヴのベースがすべてを包み、「Stranger」「A Long Dream」といったオリジナルの楽曲を中心にプレイ。ファン・ソユンがMCで「今日は坂本さんに観てもらう、2回目のライヴだと思っている」と語ったのだが、坂本氏へ向けた果てしない愛とエネルギーを感じたライヴであった。
SE SO NEON
そしてステージは再びDJへ。電子音楽界の若手ホープ原口沙輔がライヴともいえるDJセットで、自らカバーをした坂本氏の楽曲を丁寧につぎつぎとプレイ。「El Mar Mediterrani」「TIBETAN DANCE」「Rain」を始め、後半はシンガーの長瀬有花がゲストで登場し、「愛してる, 愛してない」「Ballet Mecanique」など3曲を歌い上げた。ラストは自身によるオリジナル曲「戻りさせて」をプレイ。“今”を感じる新感覚の曲に、電子音楽の進化を感じた。
原口沙輔
Spotify O-EASTのトリは、小山田圭吾率いるCorneliusの登場だ。最初はメンバーの姿は見えず、ステージの白い幕に映し出された映像から始まり、何が始まるのかと思わず息を呑む。幕が降りると同時に現れたメンバーたちの装いは黒を基調とした服を着ていた。小山田圭吾はいつものサングラスをかけず、黒いジャケットに黒いタイ、黒いパンツといった追悼とも言えるスタイルで登場。キーボード、ギターに堀江博久、ドラムにあらきゆうこ、モーグ・シンセサイザーとベースに大野由美子がサポートメンバーで参加し、坂本龍一の楽曲をカバーを連発していく。Cornelius特有の大きな画面に流れる映像やライトを取り入れたステージワークも素晴らしい。曲は「Mic Check」「Point of View Point」「Audio Architecture」と続き、「Another View Point」では映像に坂本龍一の姿が映し出され、グッときたところで、「Turn Turn」、小山田圭吾が丁寧に歌い上げた「Thatness And Thereness」では、感極まった人たちの姿が印象的だった。YMO「Cue」を経て、ラストはCornelius「あなたがいるなら」でライヴを終えた。
Cornelius
Cornelius
もうひとつの会場、duo MUSIC EXCHANGEでも素晴らしいライヴの数々が行われていた。トップバッターは注目のアーティスト北村蕗が登場。「Undercooled」のカバーをはじめ、オリジナル曲も披露し幻想的且つアグレッシヴなアプローチで独自の世界観を音で紡いでくれた。
そしてduo MUSIC EXCHANGEのラストは、大沢伸一とどんぐりずによるユニットDONGROSSOが登場。ニューシングル「MY HARDCORE VALENTINE」をはじめ、新曲を多めにやった彼らのライヴは、メッセージ性のあるラップと低音重視のビートが始終なり続け、エナジーにあふれたパフォーマンスで、この日のフェストを締め括ってくれた。