2025スーパーフォーミュラ鈴鹿公式テスト 野尻智紀(TEAM MUGEN) 2月18日に鈴鹿サーキットで始まった2025年全日本スーパーフォーミュラ選手権のシーズン前公式テスト。小雪がちらつくなかでのテストは午前・午後の2セッションで合計6回赤旗が出される波乱含みの1日となった。
スーパーフォーミュラでは今季からタイヤの仕様が変更となり、再生可能原料・リサイクル原料比率が46%となった新しいスペックをこのテストから全チームが履いているのに加えて、鈴鹿サーキットの東コース部分の路面が再舗装された。各ドライバーとも、このふたつの変更点を理解して合わせ込むのに時間を要している様子だった。
その中で、2度のチャンピオン経験を持つ野尻智紀(TEAM MUGEN)に、新しくなったタイヤと鈴鹿サーキットの新路面について印象を聞いた。
■今年のタイヤは「ちょっとたわむようになった気がする」
午前のセッション1では、前半がウエットコンディションで、各車がタイムアタックを予定していた最終盤に赤旗が出た影響もあり21番手タイムとなった野尻。午後のセッション2ではチームメイトの岩佐歩夢とともに順調にタイムを伸ばしていき、タイムシートの上位につける場面もあったが、最終的にトップから0.490秒差の8番手につけてテスト1日目を終えた。
「ちょっと動きとしては良くないところも多かったです。 ただ現状の動きに対して、今何かを改善するようなメニューではなく、あらかじめ準備してたメニューをこなしていくっていう形でやっていたので、タイム的にはそんなに出てませんけれども、そこまで(問題を)直すのも難しくないのかなと。そこまで悪いポジションにはいないと思いますし、バランス自体はいいのかなと思っているので、そんなに心配はしてないからという感じです」と野尻。タイムだけを見ると上位陣と差があるように見えるが、そこまで悲観している様子もなかった。
ただ、タイヤと路面が変わった影響の大きさは感じており「タイヤが変わったことによって、結構影響が大きいのかなっていうところもありますし、路面も変わったことで、単純に過去のタイヤだけの比較というのがちょっと難しいかなと思います」とのこと。
さまざまな要素が複雑に絡み合っているため、野尻の言うとおり単純比較が難しい状況であるが、その中でも昨年までのタイヤとの違いは感じており、「(今年のタイヤは)ちょっとたわむようになったのかなという気はします」という。
「ブレーキを踏んだ時に瞬間的に(タイヤが)潰れる感じがあったりとか、ハンドルが重く感じるコーナーもあります。仮説でしかないですが、『(タイヤの)接地面が増えていて、その分たわんでいるのかな』という感じで、今までとはちょっと違います」と、野尻はタイヤのたわみが気になる様子だった。
その他にもタイヤのウォームアップも昨年までと比べて時間がかかる印象を持っていたようで「最後のアウティングはタイヤも温まりきらなかったですけど、これだけ寒いですし、路面も冷え切っているので、(ウォームアップが悪い要因は)タイヤだけの問題なのかというのは把握しにくいです」と冷静に分析する。
■再舗装で「トラップみたいに仕掛けられているようなギャップ」が出現
また、新舗装の東コースについては「路面を張り替えたことで綺麗なことは綺麗なんですけど、『ここにこんなギャップがあるんだ!』とか『ここでこういうふうに(タイヤの)接地が抜けるんだ!』というのがありますし、トラップみたいに仕掛けられているようなギャップもあって、今までよりもテクニカルな感じはしますね。形こそ一緒ですけど……『全然違う鈴鹿サーキットが出てきたな』という感じです」と苦笑い。
他のドライバーたちからもざまざまな声が聞こえてきており、新舗装の影響が思いのほか大きいようだが、速度域の高くて非常に繊細なスーパーフォーミュラの車両だからこそ感じ取る違いもあるようだ。
「目視ではなかなか確認できないような“ほんのちょっとの違い”でも僕たちはすごく感じてしまうくらい低い車高で走っていますから、そういったところでドライバーのフィーリングは(路面が)少し変わっただけでも、かなり変わってきます」と野尻。
こういった違いは、前日のトラックウォークで8割方は見つけられていたというが「本当に同じところがないので、ちょっとしたギャップやカントが僕たちの感覚ではかなり変わってきています」と野尻は繰り返し語っていたのが印象的だった。
各チームともに目下の課題は3月に控えている開幕ラウンドの2連戦で好結果を残せるかと言うところ。そこに向けて、新しいタイヤだけでなく、新舗装された鈴鹿サーキットの東コースをいかに攻略できるかというところも、大きな注目ポイントになることは間違いない。