初の試みながら、まるでオリンピックの開幕セレモニーを見ているよう、と言っては言い過ぎかもしれないが、F1の規模感、エンターテイメント性の高さが存分に表現されたイベントだった。 今年で75年を迎えるF1史上初めて、全10チームが一堂に介しての2025年開幕イベント『F1 75』がイギリス・ロンドンで開催された。
会場はテムズ川のほとり、2012年ロンドンオリンピックの会場にもなったO2アリーナ。ドームに覆われたアリーナで2万人の観衆の熱気が中継映像からも感じられる。ステージの下には全チームのドライバー、チーム代表はもちろん、上級エンジニアらも勢揃い。
ラスベガスGPのセレモニーを手がけたチームが今回のイベントを担当しただけあって、演出は終始ド派手。マシン・ガン・ケリー/mgkやケイン・ブラウン、テイク・ザット、ブライアン・タイラーなどのトップアーチストも多く登場し、ライブ会場のような雰囲気だった。
まずは今年で創設75周年となるF1の歴史を映像で紹介。続いて昨年のコンストラクターズ選手権の成績順に、キック・ザウバーからマシン、ドライバーが次々に登場していく。司会のイギリス人俳優でコメディアンのジャック・ホワイトホールは、日本で言えば劇団ひとりのような存在か。ドライバーやチーム代表をきわどくイジりながら、巧みにMCを進めていく。
今季のレーシングブルズは白基調ですっかり生まれ変わった。角田裕毅も「今まで見た中で最高のカラーリングだね」と、満足そう。これでコース上でも速ければ、かなり目立つ存在になりそうだ。新車は明日のイタリア・イモラでシェイクダウンされる。
ただし、各チームのキャラクターを象徴するようなかなり凝った演出のプレゼンをする中で、レーシングブルズのそれはロンドン市内の街頭インタビューで「VCARBって知ってる?」とか、チーム名の長さを自虐的に扱ったもの。この試みが見事にスベりまくっていたのは残念だった。
驚いたのが、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表が登壇した時。拍手よりもブーイングの方がはるかに多いのだ。女性従業員の性被害問題がうやむやに済まされたことへの抗議か、昨年終盤のチームパフォーマンス不足への不満か、はたまたセルジオ・ペレスの後任ドライバー選定への不満か。ブーイングが止まない中、表情ひとつ変えずにスピーチを終えたホーナー代表のメンタルの強さはある意味さすがだった。
チームのプレゼンは、他にもアストンマーチンがふたりのドライバーにジェームズ・ボンドのような登場の仕方をさせたり、マクラーレンが歴代のチャンピオンマシンの実車をステージに上げたりと、見応え十分。その中でも、個人的にはフェラーリの演出が圧倒的だった。
「私にとって最も重要な勝利は、次に来るそれだ」など、フェラーリ創設者エンツォ・フェラーリの数々の名言と貴重な映像で栄光の歴史を振り返る。そしていよいよ真紅のウェアのルイス・ハミルトンが登場すると、母国でもある会場内には大歓声と熱狂が渦巻いた。隣のシャルル・ルクレールが、「ルイスと共に歴史をつくりたい」と、ハミルトンファンを十二分に意識したコメントをせざるをえなかったほどに。
昨年までのメルセデスで7度のワールドチャンピオンに輝き、今季、伝統のフェラーリに移籍したイギリス出身のハミルトン。もちろんルクレールが、大先輩のハミルトンに畏敬の念を抱いていることはたしかだ。しかし、もう長い間『次代の世界チャンピオン』と期待され続けてきたルクレールにとっては、チームの主導権をハミルトンに奪われないことが何より重要。ルクレールにとって今シーズンが、今まで以上に正念場となるであろうことを印象付けるステージだった。
イベントの最後は10台のマシン、全20人のドライバーが、まるでグリッドに並ぶようにステージ上に勢揃いする憎い演出で幕を閉じた。今シーズンの新車の詳細についてはいっさい触れず、20人のドライバーの新しいレーシングスーツ姿と新しいマシンカラーリングを紹介しただけ。正直、それのどこが面白いのかと思っていたが、イベントが始まってからはどんどん引き込まれ、2時間があっという間だった。F1はエンターテインメントとしてもやはり、かなり凄い!
All 20 drivers. One epic show. The class of Formula 1 in 2025 🤩#F175LIVE pic.twitter.com/slZnmLR3z1— Formula 1 (@F1) February 18, 2025
What a squad 🤝#F175LIVE pic.twitter.com/tx0yi8xxr4— Formula 1 (@F1) February 18, 2025