昭和の名曲を後世に…「川の流れのように」の大合唱で感動のフィナーレ 日本作詩家協会シンポジウム『昭和歌謡を歌い継ぐ〜美空ひばり』開催

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2025年02月21日 18:50  ORICON NEWS

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日本作詞家協会シンポジウム『昭和歌謡を歌い継ぐ〜美空ひばり』の様子
 『昭和歌謡を歌い継ぐ〜美空ひばり』と題されたイベントが2月20日、東京・代々木上原にある古賀政男音楽博物館けやきホールで開催された。主催したのは日本作詩家協会。時代の中で燦然と輝いた昭和歌謡は、令和の今、YouTubeやサブスクリプション配信等で再び脚光を浴びつつある。年代を超えて親しまれ始めている昭和歌謡を、作詩家協会の視点で再度クローズアップしようと考えたのが今回のシンポジウムだった。この日の模様をレポートする。

【写真】日本作詞家協会シンポジウム『昭和歌謡を歌い継ぐ〜美空ひばり』の様子

 今回のシンポジウムのテーマは美空ひばり。日本歌謡史に輝く巨星である美空ひばりさんを、その歌から、その生き様から多角的に分析しようと作詩家協会が総力を結集した。

 進行役は協会長の石原信一氏が務め、ゲストにはご子息である、ひばりプロの加藤和也氏と美空ひばり博士でもある演歌歌手の梅谷心愛が出演。協会理事の大御所作詩家の先生達も総出演のイベントとなった。

 石原会長によると、このシンポジウムの構想がスタートしたのは10年ほど前。当時音楽評論家として活躍していた小西良太郎氏と、「昭和歌謡をこのまま埋もれさせてはならない、後世に継承していこう!」と意気投合し、進行役を小西氏とし、その第1弾として美空ひばりさんをとりあげようと考え、ご子息である加藤和也氏の全面協力もとりつけていた。

 しかし、構想を進める中で、大規模な自然災害やコロナ禍などの影響もあり、なかなか前に進めることができずに時間だけが経ってしまい、そうこうしている間に2023年に小西さんが亡くなってしまう。進行役を失ってしまったことで、いったんは白紙になりかけたこのシンポジウムだったが、「小西さんのためにも絶対やろう」と石原会長以下、一念発起してこの日のイベントとなった。

 当日のけやきホールは、協会員だけでなく、美空ひばりファンや昭和歌謡ファンも参加、ほぼ満席で、遠くは岡山、広島からもかけつけた人がいたという。

 ステージ上には美空ひばりさんが東京ドーム「不死鳥」コンサートのラストで100メートルを歩いた時に実際に着用した深紅のドレスが飾られ、ひばりさんのオーラが会場に感じられる中でのスタートとなった。

 シンポジウムは途中休憩をはさみながら約2時間。美空ひばりさんの生い立ちから亡くなるまでを、ご子息の加藤和也さんが語る母・加藤和枝さん(美空ひばりさん本名)のエピソードも含めた証言を交えながら紹介するとともに、協会の大御所作詩家の先生方の感想も交えながら歌手としての凄さ、詩を伝える歌の深さを検証していく内容。実際のSP盤やEP盤からの歌声や、貴重な当時の写真や映像も豊富に使用しながらのトークが展開され、美空ひばりというスーパースターの、そして彼女の歌の魅力をわかりやすく伝えてくれたと言えよう。

 休憩後には演歌歌手の梅谷心愛が登場し、緊張しつつもデビュー曲「磐越西線ひとり」に続き、美空ひばりの代表曲から「車屋さん」「真っ赤な太陽」「人生一路」を熱唱。まさに今回のテーマの「昭和歌謡を歌い継ぐ」にふさわしいフレッシュな歌声で昭和歌謡を聞かせてくれた。

 ラストは会場全体で「川の流れのように」を大合唱。涙を流しながら歌う人も多く、歌の力をあらためて感じさせてくれるシンポジウムだった。

 日本作詩家協会では、折を見ながらシンポジウムを企画したい考えとのことで、今後にも期待したいと思う。

 シンポジウム終了後の出演3人のコメントは以下のとおり。

■石原信一氏(日本作詩家協会長)のコメント
まずはシンポジウムを無事終えることができてホッとしています。実現まで時間がかかりましたが、昭和100年という節目にこのイベントをやれて本当に良かったなと思います。加藤(和也)さんがステージ上で生前にひばりさんがつぶやいた言葉として「私の歌は、時代に受け入れられているのかな」とおっしゃっていましたが、その問いかけこそが、今回のシンポジウムの一番のテーマだったような気がします。最後に「川の流れのように」を会場のみなさんと一緒に歌いましたが、ひばりさんの歌を後世に残していかなければと強く感じました。

■加藤和也氏(ひばりプロ代表取締役社長)のコメント
まずは会場に集まっていただいた皆様に感謝申し上げます。このイベントは小西良太郎さんや作詩家協会の石原会長らとコロナ前からぜひ実現したいと構想してきたものですから、こうして終えることができ大変嬉しく思っています。私は美空ひばりの仕事や家庭での加藤和枝を間近に見てきた人間としてその存在を後世に伝えようとこれまでやってきましたが、その役割も数年前に終えたと感じています。これからは梅谷さんのような美空ひばりを尊敬してくれている若い歌い手の方が継承してくれれば本当にありがたいことです。

■梅谷心愛(徳間ジャパン)のコメント
今回は、美空ひばりさんのラストコンサートの衣装の前で4曲歌わせていただきました。最初はすごく緊張しましたが、ひばりさんのオーラが感じられて、見守っていただいているような背中を押していただいているような不思議な気持ちになりました。今回はファンとしてではなくプロの歌手として出演させていただいたので、最後まで泣かないぞと思っていたのですが、さまざまなエピソードをお聞きしたり「川の流れのように」の映像を拝見したりしているうちに涙腺が崩壊してしまいました。でも、美空ひばりさんと一緒のステージに立っているような、本当に幸せな時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。

文・垂石克哉

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