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【インタビュー動画】穏やかな声が落ち着く 小林親弘が語る『BEASTARS』レゴシの魅力
■コロナ禍真っただ中 収録環境に変化
――2019年に第1期、2021年に第2期が放送され、最終章にあたる『FINAL SEASON』のPart1がNetflixにて配信中です。
小林:実は『FINAL SEASON』の収録が始まったのが2021年のコロナ禍真っただ中だったんですよ。本作はプレスコという、先にお芝居をして、その芝居を元に後から絵を付けるというスタイルで収録する作品で、第1期や第2期では、共演者の方と向き合ったり、取っ組み合ったり、ときには床に寝ながら録っていました。ただ、コロナ禍ではパーテーションを置きながら分散収録していたこともあり、そのやり方は無理だろうとなりまして。
――そうだったんですね…。
小林:それでも、スタッフさんたちと相談して、いろいろと工夫をしながら収録をしました。それが、どのような形となるのか心配ではありましたが、できる限り第1期、第2期のような臨場感を出せたらいいなと思って収録に挑んでいましたね。
――実際にできあがった映像を見ていかがでしたか?
小林:「いいじゃないか!」と思いました。それは、ミキシングを担当してくださる方がマイクの位置を変えたり、臨場感が出るようにいろいろと工夫をしてくださったりしたからこそ。スタッフさんが努力をしてくださったから、変わらぬクオリティーでお届けできたと思っています。配信された映像を見て、改めて感謝の気持ちでいっぱいになりました。
――第1期、第2期で思い出に残っているエピソードを教えてください。
小林:たくさんありますが、個人的には第1期5話で、初めてハルちゃんと目が合うシーンが思い出深いですね。あのシーンでは、千本木彩花さんと実際にしゃがんで目を合わせて収録をしたんですよ。あの収録形式だったからこそポロっと台詞を出せたこともあり、印象に残っていますね。
――ハルとのシーンでは、17歳の思春期らしさを感じます。
小林:レゴシは恋に関しては全てが初めての体験だから、自分の気持ちに何が起きているのか、分かっていないんですよね。もどかしかったり、変に大人びてみたり。第1期7話で絵の具をぐちゃぐちゃにして顔に塗るシーンがありますが、きっとあそこで、「誰かに取られたくない」という、嫉妬の感情を自覚したんでしょうね。
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小林:リズとの戦いです。あの戦いは物理的なだけでなく、草食獣と肉食獣という立場の違う者同士が、どう向き合うのが正解なのか、己の考えをぶつけ合うシーンでもありました。余談ですが、ヒグマのリズを演じるのが白熊(寛嗣)さんで、ベンガルトラのビルを虎島(貴明)くんが演じているのも、本作ならではで面白かったです(笑)。
――リズとの決闘を経ての『FINAL SEASON』では、レゴシの肉食獣としての葛藤が描かれています。
小林:『FINAL SEASON』はルイ先輩の足を食べたところからスタートしていることもあり、自分を責めて苦しんでいるというか、罰を自分で受けているというか…。そこから、大人の社会に出て、うどん屋で働いて自分でお金を稼いでみて、さらには自分とは違う価値観を持った人の話を聞いて、いろいろなことが解消されていくんです。『FINAL SEASON』を見ていて、レゴシは社会に出てよかったと個人的には思いました。
■レゴシと出会って6年 自身の中での変化は?
――レゴシって精神力が強い気がしていて。肉食獣としての葛藤をはじめ、私が彼と同じ立場だったら、耐えられないことが多いだろうなと思います。
小林:レゴシは、自分が「こうだろう」と決めたことは主張し続ける頑固さがあるんですよね。ハルちゃんが好きとなったらずっと好きだし、ルイ先輩に何かを言われても「僕はこう思います」と返すし。流されているようで流されていない、不思議な芯の強さを持っていると感じています。
――現在配信されている『FINAL SEASON』で印象に残っているシーンを教えてください。
小林:魚さんがうどんを注文して食べるのが面白かったです(笑)。「食べて、食べられての世界」という考え方のサグワンさん、偉い立場にいるのに昔のことに執着するヤフヤさん、コモドオオトカゲだから店の奥にいなきゃいけないというゴーシャなど、価値観の違う大人たちが登場するのも印象的でした。あとは、レゴシの根底にはやっぱりハルちゃんがいるので、『FINAL SEASON』の中盤から登場する草食獣と肉食獣のハーフであるメロンの存在も大きいです。
――本作の重要キャラクターですよね。
小林:将来ハルちゃんと結婚して子どもが生まれたとしたらどうなるのかという実体が、ある意味メロンでもあって。だからこそ、レゴシのエゴでもあるかもしれませんが、メロンに関わって救いたいと彼は思っている気がします。
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小林:たくさんありますが、特に(変化したのは)自分とは違う価値観にも耳を傾けるようになったことですかね。例えば、映画を見ているときに、僕は「これは自分の好きじゃない感じだな」と思ったら途中で見るのをやめちゃうタイプだったんです。お芝居でも同じく、自分の好きじゃないものは「好きじゃないな」とあまり受け入れないタイプでした。でも、本作に関わってから、最後まで見てみようと思えるようになって。自分とは正反対な考え方や主張をしている人の意見でも、「何で正反対なんだろう」と考えるようになりました。
――最後に、改めて小林さんが感じている『BEASTARS』の魅力を教えてください。
小林:ここまでのインタビューを読んでいたら、小難しい作品だな、とっつきにくそうだなと思う方もいるかもしれません。実際に、ちょっと残酷なシーンもありますが、僕はある意味で絵本を読んでいるような感覚で見られる作品だと感じています。本作は、何百年も前から続いている人の普遍的な問題を扱っている作品なんじゃないかな。世界中の人、何なら100年後、1000年後にこの作品を見る人がいても確実に何かを受け取ってもらえる作品だと思いますので、ぜひ肩ひじを張らずに、試しに見て何かを感じていただけたらうれしいですね。
『BEASTARS FINAL SEASON』Part1は、Netflixにて独占配信中。Part2は、後日配信予定。