MKS RACINGがCARGUY RACINGとGT300参戦へ。芳賀監督がアブダビに向かいコラボ実現

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2025年02月22日 18:30  AUTOSPORT web

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スーパーGT参戦に向けてコラボレーションすることになったCARGUY RACING木村武史代表とMKS RACING芳賀美里監督
 2月17日、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションは、2025年のシリーズエントリーリストを発表したが、まだベールに包まれていたのが、カーナンバー7としてエントリーしたMKS RACINGだ。気になるその体制について、MKS RACINGの芳賀美里代表は「すでに長い歴史を持つチーム」とのジョイントを語っていたが、そのプロジェクトがついに明かされた。ジョイントするチームは、国内外で活躍する木村武史代表率いるCARGUY RACING。2025年は『CARGUY MKS RACING』として、フェラーリ296 GT3を走らせることになった。

 2023年にYogibo Racingを率いスーパーGTに参戦していた芳賀美里監督。ただ、その後Yogiboの事業戦略の変更もあり、2024年は参戦を継続することができなくなってしまった。芳賀監督は2025年の復活を目指し、自らの会社である『MKS』という自身が代表を務める会社を設立。この会社がエントラントの権利をもちながら、他チームとのコラボレーションを目指してきた。

 一時、このコラボレーションはうまくいきそうな流れがあったが、一転してコラボレーションは頓挫。芳賀代表はその後も復帰をあきらめることなく、さまざまな活動を模索してきたが、人と人との縁が結びつき、強力な体制に結びつくことになった。

 芳賀代表は活動を模索するなかで、CARGUY RACINGを率いる木村に声をかけた。もともとさまざまなシリーズを戦うなかで交流ができ、木村が毎年末に開催し、関係者を招いて盛大に開催してきたクリスマスパーティでも、芳賀代表が“DJ MIRI”として得意のDJプレイをステージで披露するなど、結びつきがあった。

 そんな縁を頼りに、芳賀代表は「スーパーGTを一緒にやりませんか」と声をかけたが、ちょうど木村はアジアン・ル・マン・シリーズに参戦するために中東にいた。木村は関心を示したものの、「自分もヨーロピアン・ル・マン(ELMS)に出場する予定があり、スーパーGTとは日程も被っていたので」態度を保留していた。しかし、そこで芳賀代表は持ち前のバイタリティで「では、私アブダビに行きます!」と「ほとんどアポなしの状態(木村)」で中東まで向かった。

 ミーティングがもたれ、芳賀代表からのスーパーGTの提案を受け木村は「じゃあやりましょう」と決断した。その決意を促したのは、木村のレースを支え続ける千春夫人の存在だった。

■夫婦で追い続けるレース活動
 少し話が逸れてしまうが、木村と千春夫人は木村が大学3年生、千春夫人が高校3年生のときに出会った。「ふたりともクルマが好きで、いつか成功してレースに出る」という夢をガムシャラに追いかけてきた。45歳で木村がレースデビュー。今も昔も、木村が本気のレースに出るときは必ず千春夫人がそばで寄りそう。これほどのおしどり夫婦はプロ、ジェントルマン問わず日本のモータースポーツ界でも珍しい。

 千春夫人は、ピットやパドックでは非常に奥ゆかしく、木村いわく「三歩下がって」見守るタイプ。我々メディアでさえも素敵な笑顔で接してくれる人物だが、そんな千春夫人の存在が木村の最大のレースへのモチベーションだ。国内外のレースを戦い、ジェントルマンドライバーとしての最高峰の舞台であるル・マン24時間に挑戦するのも、千春夫人に対しカッコいい男でいたいからだ。

「仕事で忙しい私より、レースにかけては妻はまだ夢を語り続けています」と木村は言う。千春夫人は木村に世界一のジェントルマンドライバーを目指してもらいたい。WEC世界耐久選手権に出たのも、千春夫人からの希望だ。

「私は話題のアマンレジデンス東京というマンション(編注:東京都港区麻布台にある最高級レジデンス)を所有してますが、妻からは『レースで金がかかるならマンションを売ればいい』と言われています。『私はアマンよりル・マン』と妻に言われた言葉は私の座右の銘になってます(笑)」

 木村がよく使用するカーナンバー『777』は、ふたりの結婚記念日から来ている。それほどの情熱でふたりはモータースポーツ活動を続けているのだ。

■意気投合して決まったスーパーGT参戦
 話題をスーパーGTに戻そう。木村にとって芳賀代表は「ビジネスの面で尊敬しているところがある」という存在だった。また千春夫人にとっても、女性監督として夢を追う芳賀代表とは相通ずるものがあるのか、以前から非常に仲が良かったという。

 木村がレースウイークを戦っている最中に、中東まで訪れた芳賀代表と千春夫人はすっかり意気投合。「ねえパパ、スーパーGTやろうよ」とピットに戻ってきた木村に促した。これが決め手となり、木村が「何がなんだか分からないうちに」新たなジョイントが決まった。「いちばんは妻がやると言うか、言わないかなんです(笑)」と木村は笑った。

 こうして「お金とクルマとレーシングチームはありますから(笑)」と木村がアジアン・ル・マンで使用していたフェラーリ296 GT3での参戦が決定した。車両は今後空輸で日本に戻され、スーパーGTに転用されることになる。

 また木村が最終的にジョイントを決めた理由のひとつとしては、自らのレースのために組織したCARGUY RACINGの存在がある。複数シリーズをトップクラスで戦える規模のファクトリーとスタッフがいるが、近年木村の活動が海外中心になっており、CARGUY RACINGは他チームのメンテナンスを担うことが多くなっていた。

 すぐに木村はCARGUY RACINGの肩野裕工場長に連絡をとり「スーパーGTできるか?」と確認をとった。実際の参戦のかたちはCARGUY RACINGが中心となりそうで、国内外で豊富な経験を積んできたチームで、十分以上の体制と言えるだろう。芳賀監督の「ほぼアポなし」で中東まで飛んだ挑戦は、夢を見続ける女性たちの友情から結実することになった。

■最終的な体制は間もなく
 なお木村はスーパーGTでもポイント獲得を果たしたことがある力の持ち主だが、「ELMSと重なっているので、妻は『ぜったいダメ。ELMSに集中しなさい』と言うんです」と木村がドライバーとしてGT300に復帰することはなく、CARGUY MKS RACINGの監督としてチームのサポートに徹するという。木村がELMSで不在の際は、芳賀“監督”が復帰し留守を守る。

 3月の岡山公式テストまで時間は少ないが、CARGAY MKS RACINGの目下の課題はドライバーとタイヤ。実は、ドライバーについては「驚くラインアップ」になりそうだというが、「これについてはすべて確定したときに改めてお知らせしたいと思います」と芳賀代表は語った。とはいえ、それほど遠いタイミングではないはず。

 もしドライバーとタイヤが芳賀代表、CARGUY RACINGの望むかたちで決まった場合、一気にポイント圏内を争う存在になるのは間違いなさそう。レースに情熱を燃やすふたりの女性の思いが、今年のスーパーGTに新しい風を吹かせてくれることになりそうだ。

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