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プロフィギュアスケーター安藤美姫(37)が舞台「Mother〜特攻の母 鳥濱トメ物語〜」(3月19〜23日、新国立劇場・小劇場、全8回)に出演する。特攻隊員たちから母のように慕われた女性の半生を描いた作品で、特攻隊員の妻を演じる。今年は戦後80年の節目。戦争の悲劇だけでなく「愛や仲間、命などのメッセージをしっかりと届けたい」と話している。【取材・構成=松本久】
★見て心にグサッ
明石家さんま(69)が「実話やから心に突き刺さった。これは本物や」と激賞する「Mother」。09年に上演が始まり、安藤の弟は16年に、長女(11)は21年に出演し「家族として特別なご縁を感じている」という。その舞台に初めて立つ。
お笑いコンビ、ペナルティのワッキー(52)が演じる特攻隊員の妻役。「21年にワッキーさんがやられているシーンを見て心にグサッと刺さりました。すごく好きというと変ですが、感情移入をして見ていたんです」。今回、初めてプロデュースも手がけるワッキーから直々の指名を受けた。「今まで見てきたことをお手本にはしますが、あまりそれに寄せなくてもいいかなって思っているんです」。心がけるのは「実話を元にした舞台なので(役名の)喜美子さんに寄りそう気持ちでやっていきたい」という思い。そして「喜美子さんの役ってすごく印象に残る一場面だと思うんです。夫婦でお互いを思ってこその、切なさと強さがすごく印象的。私が感じ取ったものを足を運んでくださる方にまずは見てほしい。(主人公の)トメさんの目線だからこそ描かれる温かさもあると思います」。そして「これまでで最高の『Mother』だったねって言われる舞台に仕上げたい」と意欲を見せた。
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今年は戦後80年。戦争、特攻隊というシリアスなテーマがベースだが「それだけじゃないんです。『特攻隊』というと悲劇だと受け止めると思いますけど、家族や命のあり方、愛とは仲間とは何か、人とのつながりなど多くのメッセージが込められています。人って生きていく上で、それがすごく大事。難しいテーマだけど目を背けるのは違うかなと思う」と続けた。
★13年に競技引退
13年に競技生活を引退した後は、テレビや映画、舞台などに出演をしてきた。スケーターとして「表現する」ことと女優として「演じる」ことの違いについて、かつて「スケートは言葉を発さずに体と顔の表現だけで伝える競技。女優は他人になって言葉で伝える。全く別物」と説明した。今回の舞台は「一番違うのは実在した人になりきること」だと指摘する。
舞台特有の難しさもある。スケートは360度すべての人にメッセージを届けるが、舞台は1つの方向の客席だけ。「共演者の方を向かずに客席のお客さまに向かって伝える。最初はすごく大変でした。『届けるのは前だけ』『動きすぎ』と言われたこともあります」。それも克服して今回、役に向き合う。
★2度の世界女王
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スケートと女優の共通点は「1人でも多くの人にメッセージを届けること」だという。「感想や受け取り方は人それぞれ。でも、メッセージを届ける側としては、しっかりと真剣に取り組んで、心に届くような演技をすることは共通しています」。この時には、世界選手権を2回制覇した“女王”の「心に届く演技」への自信が垣間見えた。
プライベートも聞いた。長女のことは「もし娘がいなかったら出会えない方もいるし、知らないこともあったと思う。自分の人生に新しい視野をくれた存在」だという。子育てで気を付けていることは「子ども扱いをしないこと」だ。「娘自身に物事を決めさせています。頭ごなしに『これはダメ。あれもダメ』と言っても納得しないのが子ども。もし失敗をしても自分で納得できますから」。
現在は「友だちみたい」なフレンドリーな親子関係で「娘の方がしっかりしていて助けられているところがすごくある」と明かした。「自慢の娘ですか?」の質問には「はい」と即答だった。
★「ポケモンGO」
マイブームは「ポケモンGO」。16年に大ヒットしたスマートフォン向けのゲームになぜ今ごろ? 「ダウンロードはしたんですけど、あまり進化をしなくなったじゃないですか。だから17年以降は(アプリを)開いていなかったんです。でも友だちに『フレンドになろう』と言われてやり出した。今ではいろいろとはまっています」と笑顔を見せた。
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競技引退から10年あまり。主軸はあくまでスケーターながら、「表現者」としての活躍の場をさらに広げている。
◆安藤美姫(あんどう・みき)1987年(昭62)12月18日、名古屋市生まれ。9歳で本格的にスケートを始め、14歳の時に女子の公式競技で初めて4回転サルコー(ジャンプ)を成功させた。07年と11年の世界選手権で優勝。トリノ五輪15位、バンクーバー五輪5位。13年4月に第1子の長女を出産し、同年で引退してプロに転向。ドラマはテレビ東京系「警視庁ゼロ係」(21年)、舞台は「MARGINAL♯4」(22年)、映画は「SPELL 第二章」(23年)などに出演。162センチ。血液型A。
◆舞台「Mother〜特攻の母 鳥濱トメ物語〜」 鹿児島県知覧町に実在した「富屋食堂」で特攻隊員たちから「母」と慕われ、戦後に「特攻の母」と呼ばれた鳥濱トメの半生を描く。トメの目線で、若者たちの人間模様や思いを映し出している。上演は09年にスタート。22年からコロナ禍で中止となり今年が4年ぶりの上演。浅香唯がトメ役。
■夫役はプロデューサー兼務のワッキー
◆13年から「Mother」に出演し、今回はプロデューサーも兼務するワッキー 元々「Motherのためならなんでもやる」と思って活動してきたので熱量はそのままでやっています。1つの舞台をやるのにこんなにいろんなことをやるんだとすごく勉強になりました。無償で手伝ってくれる方も多くて感謝しかないですし、作品のパワーのすごさを感じます。
安藤美姫さんをキャスティングした経緯は、4年前の舞台に娘さんが出演していて、休憩時間に僕の奥さん役をノリでやってもらったらめちゃくちゃ良くてそれが忘れられなくて、オファーをしました。オッケーをしていただいて本当にうれしいです。本番も奥さん役をやってもらうんですが、そんなに言葉は交わさないけれど心で伝えあうシーンが多いので泣かないように気をつけます。
僕たちのシーンもしかりだけど、この清らかで大義あるMotherを見て感じていただきたいです!
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