藤崎一郎 元駐米大使 【ニューヨーク時事】藤崎一郎元駐米大使(日米協会会長)は24日までに米ニューヨークでインタビューに応じ、トランプ米大統領の対外援助見直しがグローバルサウス(新興・途上国)に対する支援減少につながれば、中国が途上国への影響力を拡大する恐れがあるとの認識を示した。その上で「(こうした場合には)日欧はそれぞれ米国に支援再開を働き掛けるか、ある程度肩代わりするのか対応する必要が出てくる」と分析した。
トランプ氏は1月の就任後、自らの外交政策に沿わない対外援助に支出しないと定めた大統領令に署名。国務省は同省や国際開発局(USAID)を通じた対外援助の一時停止を発表した。
対外援助額で世界首位の米国は途上国の温暖化対策などに多額の資金を拠出しており、藤崎氏は「先進国と途上国の格差を広げないよう行われてきた支援が停滞すれば問題になり得る」と指摘。中国は景気減速に見舞われ、対外支援の余力が乏しいとの見方もあるが、グローバルサウスへの融資や投資で国際的な影響力を高めたため、今後の動きに警戒感を示した。
藤崎氏はまた、トランプ氏が輸入品の関税の引き上げを主張し、他国に圧力をかけて譲歩を迫る外交手法についても言及。世界貿易機関(WTO)などを通じて自由貿易が推進され、日本もその恩恵を受けたと振り返り、「戦後80年かけて構築したシステムを覆すことになってはならない」と強調した。