アトランタ・モーター・スピードウェイで開催された2025年NASCARカップシリーズ第2戦『アンベター・ヘルス400』は、超高速バトルから2年連続のスリーワイド“フォトフィニッシュ”決着に 伝統の開幕戦を経て、アトランタ・モーター・スピードウェイで開催された2025年NASCARカップシリーズ第2戦『アンベター・ヘルス400』は、超高速での2年連続スリーワイド“フォトフィニッシュ”決着に。延長戦ホワイトフラッグでもレース終了のイエローコーションが発生するなか、クリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング(JGR)/トヨタ・カムリXSE)が僅差の勝利を勝ち獲ることに。
背後では2021年カップ王者、カイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)との接触バトルを制したカップ2年目のカーソン・ホセヴァー(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)がキャリアハイの2位に入るも、チェッカー後には2023年王者ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)やロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)から、レース運びに“叱責”を受けるシーンも演じられた。
伝統の開幕戦『デイトナ500』にて、トヨタ陣営JGRへの移籍初戦でポールウイナーを射止めつつ、決勝でも4位に入っていたチェイス・ブリスコ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)だったが、この第2戦アトランタの週末を前にその好調な船出に水を差す事態が発生する。
彼の19号車は開幕レース後の再車検でNASCARのR&Dセンターに運び込まれると、ワンメイク供給部品(スポイラー)を改造したとしてペナルティ裁定を課され、チームは100ポイント、プレーオフポイント10点の剥奪と10万ドルの罰金に処され、クルーチーフのジェームズ・スモールは4戦の出場停止処分を受けることに。これでブリスコはマイナス67ポイントからの巻き返しを強いられる厳しい展開となった。
「理想的ではないが、まだ控訴のチャンスはある。それが今、僕たちが取り組んでいることだ。そのチャンスがあるだけでもありがたい。うまくいけば、勝てるだろう」とチームが控訴手続きに集中している状況を明かしたブリスコ。
「タイミング的に理想的でないのは明らかだ。とくにシーズンの初めはお互いを理解し、もっと知り合おうとしている時期だからだ。だから、この早い時期にはジェームズ(・スモール)が絶対にいてほしい。相性を良くすることがとても重要だ。だから今週も彼がここにいるんだ」と続けたブリスコ。
「確かに痛いだろうが、JGRは層が厚い。彼らが誰を選ぶかは分からないが、クリス・ゲイブハート(元デニー・ハムリンのクルーチーフ)や彼らが配置したすべての人材がいれば、少なくとも(処分確定でも)最小限の痛手で済むだろう」
こうして迎えたスーパースピードウェイの週末は、予選からフォード陣営のマスタング“ダークホース”が躍進。トップ10のグリッドポジションのうち9台をブルーオーバルが占め、僚友オースティン・シンドリックやジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)、そしてチーム・ペンスキーと提携を結ぶジョシュ・ベリー(ウッド・ブラザーズ・レーシング/フォード・マスタング)らを従えたブレイニーが、キャリア通算11回目のポールポジションを射止めた。
そのまま日曜決勝もフォード勢は最初の140周のうち1周を除いてすべてをリードし、ロガーノはレースベストの83周でラップリーダーを記録していく。しかしステージ2も残り11周の時点から様相が一変。リッキー・ステンハウスJr.(ハイアク・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を起因とし、チェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)やブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)らが巻き添えを喰うと、ファイナルステージでは次第にシボレーやトヨタが主導権を奪い返す展開へと変わっていく。
ここで前述の背景により奮闘を見せ、先頭集団で5周をリードしたブリスコがウォール“ブラッシュ”で失速すると、クリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)やアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が割りを喰うかたちで残り49周のリスタートに。
チェッカー目前となる残り2周では、このレースでもっとも強力なクルマの1台と目されていたシンドリックの2号車も“ブラッシュ”を喫し、ここで前戦デイトナ連覇のウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が脱落、そのまま決着は延長オーバータイムに突入する。
最終リスタートでは、チャスティン、ラーソン、ホセヴァーのシボレー艦隊と、ベルのトヨタが2列目までを占拠する展開へ局面が変わると、ホワイトフラッグでは大暴れで他車をプッシングしたホセヴァーの動きも利用し、ベルが抜け出すことに成功。
同時にバックストレッチではステージ1覇者のベリーとジャスティン・ハーレイ(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)、ライアン・プリース(RFKレーシング/フォード・マスタング)らが散るなか、JGRの20号車が3台横並びのチェッカーを制しキャリア通算10勝目を手にした。
「はっきり言って、まさに夢に描いていたことだよ! 1列目か2列目からリスタートできるということは、どんな展開になるか分からない。でも、改めて言っておきたいのは(記録上は苦手の)スーパースピードウェイが大好きだということさ」と、満面の笑みを浮かべた30歳のベル。
一方、3位ラーソンにボディサイドを擦り付けるように割って入り、キャリア最高記録の2位となったホセヴァーには、クルマから降りて間もなくチャスティンとブレイニーが詰め寄り、前者は何について話したか明かさなかったものの、後者は「彼に決断力を高めるよう提案した」ことを認めた。
「僕はただ『落ち着け』と言った。レース序盤の彼のいくつかの動きは本当に、本当に怪しいと伝えたんだ」と、残り27周でホセヴァーとの接触によりスピンアウトし、最終的に4位でフィニッシュしたブレイニー。
「明らかに僕の方がスピンした。彼はあの場所で僕にぶつかるべきではないと分かっているはずだ。コーナーを曲がっているときに彼が僕のバンパーにぶつけるのは御法度だ。それは僕がクラッシュするしかないからね。だから彼に『落ち着け』と言った。『君は才能に恵まれているが、この特定の瞬間にはもう少し気楽にならなければならない。もっと賢くなれ』とね」
一方、当事者の22歳はふたりとの会話を「秘密にしておきたい」と語ったものの、最終ラップでのラーソンとの接触についてすぐに謝罪した。
「ゴールラインまで全速力で行くことしか考えていなかったんだ」と応じたホセヴァー。「もう少し学んで改善しなければならないことはあるけれど、レースに勝つ絶好のチャンスに恵まれたと感じている。とくにスーパースピードウェイでは、これまでそんなチャンスはなかったからね。スパイア・モータースポーツの皆に心から感謝したい」
現地土曜に併催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズの第2戦『Fr8レーシング208』は、フィニッシュライン直前でスチュワート・フリーゼン(ハルマー・フリーセン・レーシング/トヨタ・タンドラTRDプロ)を抜き去ったカイル・ブッシュ(スパイア・モータースポーツ/シボレー・シルバラードRST)が、わずか0.017秒差で勝利を収め、シリーズ記録となる同地8勝目を飾ることに。
同じく併催のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第2戦『ベネット・トランスポーテーション・アンド・ロジスティクス250』は、ジョージア州出身のオースティン・ヒル(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)がホームレースを支配。163周中146周をリードしたうえ残り3周のリスタートでも首位を奪還し、過去6年間で4勝目を挙げるなど地元トラックでの絶対的な強さを誇示している。